イタリアに反EU党首が健闘しているという記事
「イタリア第一主義」の反EU党首、政治危機で勝者に - WSJ より引用
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【ミラノ】イタリアでは数カ月後に再選挙が実施される可能性が出ている中、政治の混乱から勝者が浮上している。反移民政党「同盟」の党首、マッテオ・サルビーニ氏(45)だ。
扇動的政治家であるサルビーニ氏の人気は急上昇しており、ほぼ機能不全に陥っていた同盟を分離独立主義派から、移民排斥主義の極右政党へと生まれ変わらせた。同盟はその主張から、フランスの極右政党、国民戦線(FN)とよく比較される。
敵対的な反欧州連合(EU)のメッセージを掲げて選挙戦に臨む構えのサルビーニ氏にとって、「首相ポスト」という、より大きな報酬が視野に入ってきた。
同盟と連立相手の「五つ星運動」は、セルジョ・マッタレッラ大統領の反対にもかかわらず、ユーロ懐疑派の人物を経済相に充てる人事案の撤回を拒否したことで、イタリア政局は混乱に陥った。この対立により、同盟と五つ星運動による連立政権が誕生する可能性は薄れている。
マッタレッラ大統領は、元国際通貨基金(IMF)幹部のカルロ・コッタレッリ氏を次期首相候補に指名し、組閣を要請。だが同盟と五つ星運動はコッタレッリ氏の首相就任には反対しており、コッタレッリ氏が率いる新政権が議会の信任を得る公算は小さい。そのため、コッタレッリ氏は早ければ7月にも実施される再選挙まで、日々の業務をこなすだけの暫定首相にとどまるとみられている。
マッシモ・ダレマ元伊首相はイタリアのラジオ24に対し、「サルビーニはまさに望むものを手に入れた。それは再選挙だ」と指摘。「彼は意図的に、政府を爆破する地雷をしかけた」と述べた。サルビーニ氏はこうした見方を否定している。
サルビーニ氏の運勢は急激に上向いている。同氏は2013年、同盟の党首に就任。経済豊かな北部をイタリアから独立させるという党が長年掲げてきた政策を撤回した。3月の議会選挙では17%の得票率を獲得。5年前の4%から大きく支持を伸ばした。
28日公表のSWGの世論調査によると、同盟の支持率は28%と、イタリア第2の政党に浮上する勢いで、首位の五つ星にあと2ポイント差まで迫った。
同盟の台頭は、サルビーニ氏自身の出世の道のりと同じく目を見張るものがある。サルビーニ氏は大学を中退し、出身地ミラノでピザの宅配業で生計を立てた。20歳で同盟の前身である「北部同盟」から市議会選挙に出馬し当選。その後、党内で頭角を現し、欧州議会の議員を経て、5年前に同盟の党首に就任した。
サルビーニ氏は激しい発言と不作法なスタイルで、国民の間で高まる移民流入への不満を上手く利用した。イタリアには11年以降、海を渡って75万人以上の移民が流れ着いた。サルビーニ氏は数十万人を強制送還すると主張している。
サルビーニ氏は昨年、「われわれは彼らの侵入を食い止めるため、あらゆる手段を講じる」とし、「あらゆる手段とは、明確に合法、またはほぼ(合法な手段)ということだ。なぜなら、われわれは今、あからさまな民族浄化、民族代替への試みに直面しており、ここに住むイタリア国民が不利益を被っている」と訴えていた。
サルビーニ氏のこうした新たな戦略により、同盟はフランスの国民戦線やハンガリーのオルバン・ビクトル首相率いるフィデスなど、欧州内の他の国民主義政党と同等の存在になった。サルビーニ氏はドナルド・トランプ氏の大統領当選を祝福。トランプ氏とは2016年4月に会っており、2人で親指を立てて映っている写真を「ゴー・ドナルド」というコメントともにツイートしている。
イタリアの移民危機が後押しする形で、サルビーニ氏は反ユーロのメッセージに磨きをかけ、同盟の看板政策へと変えていく。サルビーニ氏は、難民申請が行われている間、移民は最初に入った国にとどまるというEU規定を激しく批判している。イタリアはこの規定を承認しているが、サルビーニ氏をはじめとする政治家は、イタリアはEUに見捨てられ、リビアから地中海を渡ってくる大量の移民に対処する負担を一手に負わされていると主張している。
サルビーニ氏は、イタリアが経済低迷から永遠に抜け出せず、金融危機から完全に回復できずにいるのは、単一通貨制度による足かせが原因だとの見方を国民に浸透させ、ユーロを攻撃。この新たな「イタリア第一主義」のメッセージを完成させた。同氏はユーロは欠陥に満ちたプロジェクトで、失敗する運命にあると主張している。
過去には、コントロールされた協調的なユーロ離脱を支持する立場を示していたが、足元ではやや態度を軟化させている。ユーロ加盟の根本原則である財政規律規定について変更を求めるなど、一段の柔軟性を追求する立場に軌道修正している。
サルビーニ氏は、各地のイベントで地元民と握手を交わすといった同盟の大衆迎合的な伝統に加え、こうした新たなアプローチで、支持基盤である北部以外にも支持者を増やしている。
同氏は地元の祭りや移民受け入れに反対するデモなどで撮影した自撮り写真をソーシャルメディアに次々と投稿。訪問先の地名が入ったスエットシャツをよく着用するなど、観客を盛り上がらせる技を心得ている。
イタリア中部ピサ近郊の カッシーナ のスザンナ・セカルディ市長(同盟)は「サルビーニは人々の心に訴えるのが上手く、人々も彼を理解する」と話す。同盟は今年、ピサの所在地であるトスカーナ地方で17%を得票し、13年の1%から大躍進した。
サルビーニ氏は、五つ星とともに選挙を戦うかどうか決めなければならない。もしくはシルビオ・ベルルスコーニ元首相率いる中道右派のフォルツァ・イタリアと組むことも可能だ。仮にその組み合わせで議会の過半数を握れば、サルビーニ氏は首相就任の資格は自身にあると主張することができる。同氏もその野望を隠すことなく明言している。
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