ずっとトーインくんに会いたいと思っていましたが、
天一宮でお会い出来ました。
どこからともなく現れてうろうろしていました。
わたしの前に来たので、
「トーイン」と呼びました。
すると誰だろうという顔をして動きを止めました。
次に口に出た言葉がなんと
「キョンネ」
すると、トーインくんは伏せました。
「これが君のキョンネなの?」
わたしたちが仲良くし始めたのに、男の人が
「すみませんが、手をどかしてくれませんか?写真を取るので。」
そう言ったかと思うと、仔犬が動くので抱きかかえようとしたのですが、逃げてしまいました。
せっかく友だちになろうと思ったのに残念だなと微笑んでわたしもその場を去りました。
しばらくして家内と食事をしていましたら、離れたところにトーインくんが現れました。
そして、わたしを見たらまっすぐにやってきました。
「君にはもうわたしがわかるのかな?」
不思議に思っているとトーインくんはわたしの顔をじっと見つめました。
毎日ベランダに来る鳩のようにじっと見つめました。
「ああ、これがほしいのね」
「困ったなあ、君のご主人様に叱られちゃうよ、そんなに切ない顔をしないでおくれよ」
「しかたがないなあ、ご主人様には内緒だよ。」
その日のごちそうは犬には不向きのものばかり、でもこの玉子と何かのおかずならなんとかなるかも。
紙の小皿から箸でつかんではワンちゃんにあげました。
10回、いやもっと。
もう食べられそうなものはなくなりました。
「お腹が空いているんだね」
「これかい?これはどうかな?ブロッコリーは犬は食べないだろ?」
そんなにほしけりゃとあげたらパクパク食べました。
ブロッコリーもなくなり、もうトマトしかありません。
いくらなんでもトマトは嫌いだろうと思いますが、じっと待っています。
「そんなに欲しいならあげるけれど、しらないよ。」
美味しそうに食べ始めましたが、途中でぺっと吐き出しました。
「ほら、こんなすっぱいのは嫌いだろ?」
「ごめんよ、お前が食べたいものはもうないんだよ。」
お皿にあるものの三分の二も食べたんだから。
賢いトーインくんは情況を理解したらしく、くるりと背を向けてとろとろ歩き去っていきました。
求めよ、さらば与えられん。
これで私の夢が一つ叶いました。
みんなは王様やオモニのことを真っ先に書くのに
これでいいのかな?
でもこれがわたしなんです。
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