原理講論を読む

日常生活の中で 考える糸口を求めて

神様の失楽園の物語

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一切を与え 一切を失う

一切を信じ 腹心に裏切られる

一切を愛し 子女を失う

その名は神!

今もなお荒野にて 人を求め

救い出し 祝福をもたらすため

知られざる痛みの ただ中にある

その名は神!

神なきとあざけられ

神ありとして呪われ

孤高の沈黙に立つ

我が名は神!

 

ある時、神様は完全であられたはずなのに、不思議な孤独を感じられました。
「わたしには何かが欠けている。」
神様は御自身がおっしゃられた意味を測りかねて、いぶかしそうに自らのお顔を覗き込みました。
「わたしにはわたしにふさわしい愛する対象がいない。」
神様は何が問題なのかお気づきになられたかのようでした。
「そうだ。わたしには愛と生命と理想を分かち合うことのできる心情の対象が必要なのだ。わたしは真の子女を持ち真の親になろう。」
この時、神様は御自身のためではなく、子女のために御自身の一切を捧げられる決心をされました。
「わたしのすべてを完全に投入して、天と地を創ろう。」
孤独の意味をはじめて知った神様は、はじめに天使界を創られ、ご自分だけで決めずに、ひとつひとつ彼らと和合しながら御心を実現させることにされました。

「われわれのかたちに、われわれにかたどって人を造り、すべてのものを治めさせよう。」
先に時間にも空間にも縛られない天界を創られた神様は、今度は人間が生活する宇宙と故郷の地球をお造りになられました。
「わたしは時の中に閉じこめられ、広がりの中に閉じこめられた。」
神様は自らの意志で自分が立てられた天宙を支配する原理に服されたのでした。
それは、見えない永遠にして絶対の価値に見える形を表現するためだったのです。
天地創造を終えて完全に御自身を投入された神様はおっしゃられました。
「わたしの心情と力がぬけていく・・・わたしはすっかり消えていくように萎んでいく・・・」
神様は窮屈な時間と空間の世界に身を押し込めて、数十億年の歳月を、全知全能の知恵を尽くし至誠を尽くして、天地創造に集中されたのでした。
真の親である神様は土のちりで肉体を造り、命の息をその鼻に吹き込んで霊体も造りました。そこで人は永遠に生きた者となりました。

神様のかたち、そう、見えないものと見えるもの、陽的なものと陰的なものとをそっくりそのまま人に現されることを願われたのです。

父母である神様は、御自身を投影した、そっくりな子女を御覧になって喜びを得ようとされたのでした。

「ひとがひとりでいるのは良くない。彼のためにふさわしい助け手を造ろう。」
こうしてアダムとエバは、すっかり神様に似たお子様としてお生まれになられたのです。
神様はお二人を祝福しておっしゃられました。
「成熟しなさい。そして殖えるのです。すべてのものを愛によって治めなければなりません」

天地の被造物は挙って神様の栄光を讃えました。

それから真の親である神様は東の方にエデンの園を設けて、造られた人をそこに置かれたのした。

エデンとは至福を意味する名前です。

父母である神様は見て美しく、食べるに良いすべての木を土からはえさせ、さらに園の中央に命の木と、善悪知る木とをはえさせられました。

「木よ、わたしの至福の中心にある木よ。とこしえに平安あれ!」

帆船の白帆が風を受けて、行く先に希望の胸を広げるように、神様のお心には喜びが満ちあふれ、もはやかっての孤独の影すらも消え失せておいででした。

父母である神様は人を連れて行ってエデンの園に置き、これを耕させ、これを守らせられました。

アダムとエバが思春期を迎える頃になると、特別な戒めを二人にお与えになられました。それはいつになくきびしい口調でした。

「あなたは園のどの木からでも心のままに取って食べてよろしい。しかし善悪知る木からは取って食べてはならない。それを取って食べるときっと死ぬであろう。」

さて、神様は野に生きる動物と植物や空を飛ぶ鳥たちを土でお造りになり、人のところへ連れてきて、彼がどんな名前をつけるのか見るのを楽しみとされました。

人がすべての生き物に与える名は、すべてそのとおりになりました。

目に見える被造世界のあらゆるものは、目に見えない天界にあるものに、一対一で対応して存在するよう創造されました。

そこで地上で人があるものに名前をつけると、天界でこれに対応して造られた霊的な生き物が人の前に現れては、うやうやしく膝を折り腕を曲げてお辞儀をしました。

こうしてすべてのものに名前をつけ終わってみると、人にはふさわしい助け手がなかったことに気づきました。父母である神様は、人を深く眠らせ、眠った時に、そのあばら骨の一つを取って、その所をふさがれました。

父母である神様は人から取ったあばら骨でひとりの女を造り、人のところに連れてこられました。

エバはアダムの心臓の鼓動を聞くことのできる、ふさわしい助け手として誕生したのでした。

真の父母であられる神様から美しい性稟と形を、アダムとエバに分与され、時満ちて神の祝福を受けて結婚することが御旨でした。

それで人は父と母を離れて、妻と結び合い、一体となるのです。

人とその妻とは、ふたりとも裸であったが、恥ずかしいとは思いませんでした。

何故ならそれまで彼らは神様の立てられた、絶対「性」の戒めを守っていたからでした。

さて天使長ルシファーは人類始祖アダムとエバが誕生する前までは、神様の愛を一身に受けて、彼から神様の御愛が天地のすべての存在に注がれゆく中継者でした。それゆえ被造世界においては神の愛の基のような立場にあったのです。

あるとき神様がアダムとエバに対して三大祝福をなされているお姿を見て、自分は僕にすぎないので、神様の実子として生まれたアダムのように、エバのような相対者を持つことができず、肉身もなかったので神様に祝福された結婚をして、子女をたくさんもって天国の雛形である家庭を持つことが許されていないのだと、淋しく思うようになりました。

地上に物質的に造られた動物や植物でさえ相手を持って繁殖し家庭を持つことができているのに、なぜ神様とともに最も支えて歩んできたわたしには、そのような恩恵を与ることができないのだろうかと、御心を怪しみ疑いを抱くことになってしまいました。

神様の最も御側で仕える立場でありながら、神様の心情に立てず、御心から遠く離れ、アダムとエバの養育を任されていたルシファーは、本当は神様を兄とするなら弟であり叔父のような立場で二人の子供たちを祝福すべき立場でありました。

ところが彼の心に天界では未だ存在しなかった影が生まれました。

もしアダムより先にエバと関係を結び、わたしが霊的な種をエバに宿すことができれば、その後に二人が結ばれようとも、その子孫は彼らのものではなくわたしの子孫になるに違いない。

そのように天使長は考え始めました。

そのころアダムは神様が自分たち神様が造って下さった大地の恵みに関心を深く持ち、エバを一人残して活動することが多くなっていたのでした。

エバは少しずつ淋しく思うようになって、被造物を見ていると陽性の雄と陰性の雌が仲睦まじく愛し合い、子供を得てたいそう幸せそうに見えました。

思春期にアダム兄さんの体には、自分にはない出っ張ったものがあり、妹の自分にはなく、むしろ引っ込んでいることを二人して不思議に思っていました。

アダムは天界に近いものとして創造されましたが、エバは大地に近いものとして神様はお造りになられました。それでエバは地上のあらゆる生き物を見ていると、みな例外なくお互いに愛し合い、そこで結ばれて幸せになっている様子を発見しました。そしてほんの少しずつ羨ましいと思う感情が湧いてきていたのですが、はっきりと意識されたわけではありませんでした。

アダムがいない日が多くなると、淋しい気持ちを満たすために、アダムに変わる相手を彼女は求めはじめました。それは地上の動物では充分でありません。霊的な存在であるエバにはそれなりのふさわしい相手でなければなりませんでした。

彼女は地上に見られる生き物が愛と性によって幸せを得ていることをルシファーにも話しました。初めは気づいたことを話しているに過ぎませんでしたが、こうしていつも自分の側にいて自分を大切にしてくれるルシファーは、しだいにアダムより頼もしい存在に思うようになったのです。

ある時ふと、アダムではなくルシファーがわたしをリードしてくれる主体であったならという思いと実感がこみあげてきました。エバはなかば無意識的にルシファーの方からわたしを誘ってくれるようこっそりしむけているようでした。

ルシファーには、エバがアダムより自分の方に関心と頼もしさを抱いていることが、はっきりと読みとることができました。

アダムとエバが誕生する以前に神様がルシファーに注がれていた愛が、彼らの誕生以後にも変わらず注がれていたにもかかわらず、僕であるルシファー以上にいっそうアダムとエバを愛される神様のお姿を見て、あたかも自分に与えられていた神様の愛情がどんどんどんどん減っていくかのようです。

神様の愛の減少感を心底ルシファーは感じるようになってしまい、生まれてきてはならない狡猾な策略が頭の中に浮かんできたのです。

エバを見ると、うっとりとルシファーを見ていました。まるでその様子は

「あなたが一番よ。でもあなたが主体なのだからあなたが決めてちょうだい。」

とでも訴えかけてきているようでした。

そこでルシファーは神様のお姿をすっかり消し去るために、一度目を閉じて、決心を固めたようにエバにわざとこのように言いました。

「園にあるどの木からも取って食べるなと、ほんとうに神様がおっしゃったのですか?」

エバはルシファーに言いました。

「わたしたちは園の木の実を食べることは許されていますが、ただ園の中央にある木の実については、これを取って食べるな、これに触れるな、死んではいけないからと、神様はおっしゃいました。」

エバが動揺し不満を抱いていることを確認したルシファーは、今度はきっぱりと言い切りました。エバがルシファーに相対してきた気配をすばやくとらえたからでした。

「あなたがたは決して死ぬことはないでしょう。それを食べると、あなたがたの目が開け、神様のように善悪知る者となることを、神様は知っておられるのです。」

 まあ、本当にそうなら納得がいかないことだとエバは思いました。

ついに時ならぬ時に時のことを強く願ってしまったのです。

過分な欲望を抱いた天使長ルシファーの誘惑を受け入れて、身を委ねたエバは不倫なる淫行関係を結んでしまったのです。

善の天使長であったルシファーも堕落してサタンに変わり果ててしまいました。

その結果エバには遅まきながらも知恵がもたらされました。

時が満ちていない未成年の未熟な時に、父母である神様の承諾なしに、本来の相手ではないルシファーと、しかも不義の結婚をしてしまったことを。

本当の自分の相手はアダムであったことを知りました。

堕落したエバはあっと言う間に心霊を引き裂かれ、ほとんど恐怖そのものに近い不安で足が地に着かないありさまでした。

エバは神様の愛から遠く遥かに遠く引き離されて行く自分を感じたのです。

あたかも、時間の流れもたたずんでいた空間さえも歪んで、大きな渦となって自分を巻き込んで、下降に向かって引き込んでいくように感じられました。そして魂の内に木霊する恐怖の叫びに翻弄されました。

恐怖の中で彼女は兄のアダムを探しました。

息も絶え絶えにしてやっとアダムに会うと、彼は今でも神の愛の中に平安を保って、たいそう美しく目映いばかりに見えました。

神様の愛にふたたび与る道はアダムを通してしかないことをエバは知っていました。エバは恐怖に震え泣きじゃくりながら無我夢中でアダムを誘惑しました。

いつものエバとは違う取り乱している妹を、神様の立場ではなく人の立場で哀れに思ったアダムは、堕落し性的経験をしたエバの妖艶な情にぐいぐい支配され、ついには許されぬ肉体関係を結んでしまいました。

こうして真の父母様であられる神様の愛の伝統を、アダムとエバは蹂躙してしまい、地上において神様の嗣業を相続することができなくなってしまったのです。

実は、神様は一部始終をご存知であられました。

御覧になっておられたのです。

今やすべての創造と苦労ががらがらと音を立てて崩れていくようでした。

全能の神様が天地創造に数十億年の年月をかけられ、懇切丁寧にお造りになったあらゆるものの創成が、一瞬にしてフラッシュバックしてお心に現れては消えてゆき、崩壊していく様子が走馬燈のようにお心をよぎったのです。

神様は呆然と立ちつくされてつぶやかれたのでした。

「わたしはこわれていく・・・」

神様ははじめて心を閉ざされました。すべてを閉ざされたのです。

「わたしにはもう何も見えない。わたしにはもう何も聞こえない。わたしが誰であるかさえわからない。わたしはいったいどうしたのだろう。」

全能の神様は御自身の無力感を嫌というほど味わわれたのです。

天使たちはこれほど狼狽している神様に驚くばかりでした。なぜなら今まで微塵にもそのような様子をお見せになったことがなかったからです。みな神様のあまりにも変わり果てたお姿にただただ恐れをなすばかり。

その不協和音のような神様の感情は天界中の音ばかりか光にさえも映し出されて、天界では混沌と騒然の中でてんてこ舞いでした。

天界の光にはもともと影がありません。それなのに妖しい影があちこちに乱れ起こりました。天界の音には方向がありません。それなのに不気味なきしむような音があちこちに響き渡りました。

天使たちは神様のご様子がしだいにおかしくなってゆかれるのを見守られていましたが、どうすることもできませんでした。神様は何かをおっしゃられているかのようでしたが、もはや文章の体をなしてはいませんでした。訳のわからないうわごとをおっしゃられているようでした。うつろな目をされては、うろうろうろうろと、同じところをぐるぐる回っておいででした。

すっかり狼狽し疲労の極みに至った神様は、とうとう突然気を失われてしまったのでした。

そして天にも地にも三日間の暗黒がありました。

神様はそこで地獄というものをわたしたち堕落人間より先に体験されたのでした。

 天使たちは、痙攣してうわごとを呟き激痛のなかにある神様をいたわり続けました。

彼らがあきらめずに精誠を尽くした介抱によって、やっと目をお醒ましになった時に、はじめて神様がおっしゃられた言葉は御自身に対するものではなく愛する者に対してでした。

「アダムよ、アダムはどこにいるのだ?」

というお言葉でした。

まるで堕落する以前のアダムの本当の姿を探し求めておられるかのようです。

もはやあの時のおまえは一体何処に行ってしまったのかと、おっしゃられているかのようでした。

すると、疼くようにきしむほどに、身も心も痛められておられていたはずの神様は、

激痛の中でも、一刻も早く子どもたちを救い出し、祝福したい気持ちで一杯になって、よろよろしながらも探し求められたのでした。

園の中をアダムとエバを探される神様の足音を聞いた二人は、

「取って食べたら死ぬだろう」と言われたのに、まだ生きていたので、

「もしかしたら神様に殺されるのではないか」と疑念を抱きました。

そこで、人とその妻とは父母である神様の顔を避けて、園の木の間に身を隠しました。わが子を救いに来られた神様が見た光景は、取って食べても死ななかったので殺されるかも知れないと、神様を見てふるえている我が子です。

神様の呼吸が止まりました。心臓も音を止めました。

そんなアダムとエバを見て神様の苦痛はいよいよ激しく襲ってきます。神様は胸を叩かれ嗚咽することをこらえられました。

神様は自分とは似ても似つかないほど変わり果てた子女に、それでも両腕を差し伸べて抱きしめたい思いをぐっとこらえて呑みこまれ、静かに悲しげに語られました。

「わたしの真の子。アダムよ、あなたはどこにいるのか?」

 彼は答えました。

「園の中であなたが歩まれる音を聞き、わたしは裸だったので、恐れて身を隠したのです。」

父母である神様は言われました。

「あなたが裸であるのを、だれが知らせたのか。食べるなと命じていた木から、あなたは取って食べたのか。」

アダムは答えました。

「わたしと一緒にしてくださったあの女が、木から取ってくれたので、わたしは食べたのです。」

アダムは神様に反発心を持って、もし神様が助け手としてエバを与えてさえいなければこんなことにはならなかったとでも言いたげでした。でもそのような思いはエバのみならず神様の御心を蹂躙するものだと気づいたでしょうか?

非を認めて帰ってくる我が子を迎えることができなかった神は、絶望のあまり膝を崩してうずくまりたいほどでしたが、やっとの思いでエバにおっしゃられたのです。

「あなたは、なんということをしたのです。」

エバは謝らずに言い訳をしました。

「ルシファーがわたしをだましたのです。それでわたしは食べました。」

エバも責任を転嫁し神の子の威信をすっかり捨て去りました。

神様はルシファーを叱責されました。

そして天使長ルシファーがエバと淫乱した罪悪の血統が人類に綿々と引き継がれていく様を神様は嘆き悲しまれたのです。

神の子ではなく罪の子を宿すことになってしまった、エバの出産の苦しみは増すにもかかわらず、価値なきものだとおっしゃられました。償いの道は愛のある夫と妻ではなく、悲しいかな夫に服従するだけの夫婦関係の道が続くことを予感させるお話をなさりました。

アダムの労働も神の子としてのそれとは違って、価値なき労苦に落ちて、霊人体を侵犯されたアダムは土から土に帰るだけのありさまに変わり果ててしまったのだと諭されました。

神様の創造理想は喜びの園であるエデンの中央にあったアダムとエバが、真の父母であられる神様の三大祝福を受けて、これを成就するために、神の心情が男女が愛し合い性器を通して結ばれた至聖所こそが、至福のエデンの園であり、神様が臨在されるところなのです。

そのとき天地に絶対「性」の伝統が確立され、アダムとエバから始まるすべての後孫である人類は、神の似姿としての栄光を相続することができたのです。

さて、人はアダムとエバが楽園を追放されたと言います。

それは果たして本当でしょうか?

神様が至誠を尽くされて、天地創造の業を行いましたが、神の血統とは全く関係のない妖邪なサタンの血統と歪められた心情を持つ、堕落人間に奪われ支配されてしまいました。

神様が立たれる一片の土地もなく、枕さえもありません。

失楽園」、それは人間が楽園を追放されたと多くの人は語ってきました。

でも、天地を創造された全知全能にして、永遠不滅の愛の神様が、その苦労の一切が報われることなく、天地創造の一切を奪われてしまい、住むところさえありません。

神様の威厳がどこにありましょうか?

哀れで悲しく苦痛に満ちた神様のお姿を天使天軍の誰が、そのまま語ることができましょうか?

 そこで、神の威信を鑑みて聖書は、神と共に沈黙して、このようにしか語ることができない切なさがあるのです。

 

22 主なる神は言われた、「見よ、人はわれわれのひとりのようになり、善悪を知るものとなった。彼は手を伸べ、命の木からも取って食べ、永久に生きるかも知れない」。

23 そこで主なる神は彼をエデンの園から追い出して、人が造られたその土を耕させられた。

24 神は人を追い出し、エデンの園の東に、ケルビムと、回る炎のつるぎとを置いて、命の木の道を守らせられた。

創世記3章22~24節