「同性婚ケーキ作り拒否裁判」に見る保革の主導権争いと米最高裁判事の任命制度 : 国際 : クリスチャントゥデイ より引用
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現地時間4日、保守的なキリスト信仰を持つケーキ店主ジャック・フィリップ氏が、2012年に同性婚カップルのためのウェディングケーキを作ることを拒否したことに端を発する係争に、米連邦最高裁が判断を下した。7対2でフィリップ氏を擁護する判決が言い渡されたのである。
この問題は、コロラド州に住むケーキ店主(フィリップ氏)と、その彼にケーキを注文した同性カップルの間で争われたのではない。最初はそこに火種が生まれたが、最高裁で争われたのは、フィリップ氏とコロラド州公民権委員会の対立だった。公民権委員会は、同性カップルからの提訴を受け、人種や性別、性的指向(離婚歴も含む)に基づくサービス拒否を企業に禁じる反差別法に違反するとの見解を示した。これに不服だったフィリップ氏が、公民権委員会を相手取って最高裁まで係争を持ち込んだという流れである。
公民権委員会の判断はコロラド州裁判所も支持した。州の判決に不服である場合、その最終判断を連邦最高裁に持ち込む(持ち込める)には、かなりの忍耐と努力が必要である。まず、その係争を州裁判所ではなく、連邦裁判所が米国全体に対して判断しなければならない、と見なされることが必要である。さらに舞台が連邦最高裁となる場合、それは本人同士の利害に留まらず、米国全体の保革争いに政治的に取り込まれてしまうことを意味している。
その好例が1973年の「ロー対ウェイド事件」であり、2005年の「テリ・シャイボ事件」である。前者は人工妊娠中絶を事実上容認する(と保守派は受け取り、猛烈に反対している)判例となり、後者は人間の尊厳死をどこまで認めるかという倫理的な判断にいつしか大統領(当時のジョージ・W・ブッシュ)まで登場して、争いを激化させた判例である。どちらも福音主義的な聖書観に則った保守層(主に共和党)が大いに反発した。特に前者は、いまだにこの判決を覆そうとする保守層の気概はなえていない。
今回の判決は、最高裁判事の1人であるアンソニー・ケネディ判事が主文を書いており、7対2という圧倒的多数でフィリップ氏擁護となった。最高裁は、公民権委員会が宗教に対して容認しがたい敵対心を示していると判断し、米国憲法修正第1条に定められた宗教上の権利(信教・表現の自由)を侵害したと結論付けたのである。
ただ、係争領域が宗教にまで及ぶ事件であるため、この一件でコロラド州の反差別法の是非を問うことや、本件のような例外を認める条件などについては判断を避け、下級裁判所に差し戻されることになる。つまり同性婚やLGBT問題に関わる政治的な意味でのマイルストーンと見なされることは本意ではないということだろう。
だがその判断が米国市民にきちんと浸透するかは定かではない。そしてすべての事柄を「宗教」に連関させることを留める術はないと言わなければならない。
主文を執筆したケネディ判事は、1987年にロナルド・レーガン大統領から指名された人物である。レーガン大統領は、彼の前に保守派のロバート・ボーク氏を最高裁判事に指名しようとするが、民主党からの強い反対によってこれを完遂することができなかった。その後任として推されたのがケネディ判事であった。そのため、基本的に保守的な思想の持ち主ということになろう。その彼が今回の裁判を切り盛りしたというわけである。
保革両派から見た大統領の評価として、連邦最高裁の判事に誰を指名したか、というものがある。連邦最高裁の判事の指名というのは、その職が終身であるため、大統領本人がいくら努力しても、その機会は巡ってこない。判事本人が辞意を表明するか、または死去することでそのポストが空くことでしか交代は起こり得ないのだ。
しかし一度そのチャンスが巡ってきたとき、支持母体である保守(共和党)または革新(民主党)に歓迎される人物を指名するかどうかが、大統領の評価につながるのだから、大統領にとっては大きな課題となる。
歴史の妙とでもいうべきか、1981年から88年までの8年間でレーガン大統領(共和党)は4人の判事指名権を得たのに対し、同じ8年間(1993〜2000)在任したビル・クリントン大統領(民主党)は2人のみ。また同じく8年間(2009〜16)務めたバラク・オバマ大統領(民主党)に至っては、3人目の指名権を持ちながら任期切れのため、その権限をドナルド・トランプ大統領(共和党)に譲らなければならなかったのである。当然、トランプ大統領は就任直後(わずか11日目)に保守派のニール・ゴーサッチ氏を指名した。
これで9人の判事が、保守4、革新(リベラル)4、中道1となったわけである。その中で下された今回の判決は7対2。いろんな見方ができるだろうが、やはり保守化傾向が次第に強まっていると見ることもできるだろう。ただ、だからと言って一気に同性愛撲滅キャンペーンのようなものが張られるわけではないし、そこまでの急激な反動を起こさないために存在しているのが最高裁だともいえる。
判事たちは、一旦就任してしまえば推薦者たちの顔色を伺う必要はない。だから判事候補の過去の足跡だけを見るなら、「保守」「革新」という判断は下させるが、果たしてその人物が周囲の(特に推薦者たちの)予想通りの司法判断を下すかどうかは、誰にも分からない。大統領であっても、自薦した判事に圧力をかけることはできない。だから判事がどう判断するかについては、まさに「神のみぞ知る」である。
今回の判決は、確かにトランプ大統領にとっては歓迎すべき結果だろう。しかも圧倒的多数でのフィリップ氏の勝利である。しかしこの判決をそのままキリスト教保守派の主張が通ったと見なし、トランプ大統領の成果と見なすのは早計であろう。判決文は明らかに中道を意識しており、両派をいたずらに刺激しないような配慮がなされている。
何より2015年の「オーバーグフェル対ホッジス事件」を通して、同性婚を認めない州法をすべて違憲であるとする判断を下した最高裁判決(事実上の同性婚の認可)の主文を書いたのは、今回の判決の主文を書いたケネディ判事その人なのである。
宗教的な理由のみでなく、判事集団には彼らなりの矜持があり、三権分立の精神を体現する中で今回の判決に至ったのだ、と含みを持った受け止め方こそ、今必要なことなのではないだろうか。
そういった意味では、トランプ政権となって米国が前代未聞の事態に陥りながらも、米国の米国たる基本理念(三権分立)はまだ守られているといえる。
トランプ大統領がイスラエルへの大使館移転、北朝鮮との歴史的会談、と人々から注目されることに酔いしれる中での今回の判決。これを決して「トランプ劇場」の一幕という小さな視点だけで捉えてはならないだろう。
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米司法界が保守化? 「中間派」ケネディ判事引退が示す米国事情と「福音派」(1) : 国際 : クリスチャントゥデイ より引用
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米連邦最高裁判事の1人で、1988年にロナルド・レーガン大統領(当時)の指名を受けて就任したアンソニー・ケネディ判事が、7月末で引退することを表明した。勤続30年の大ベテランにして、保革どちらにもくみしないいわゆる「中間派」の判事として米司法界をけん引したケネディ判事。彼の引退は、単に1人の判事が辞めるにとどまらない影響を与えることになる。さまざまな憶測が飛び交い、今後の米国の行く末を占う声がささやかれ始めている。
前回の寄稿で分析したように「移民規制」に対する司法の方向性が示されてからわずか数日、振り子はさらに保守化へ向かうのか、それともバランスを取るべく均衡を目指すのか。今回はケネディ判事就任時の様子を詳述するとともに、共和党に代表される米国の「保守派」が何を目指そうとしているのか、について考えてみたい。それはすなわち現政権と親和性の強い一部の「福音派系宗教集団」(彼らを「福音派」とひとくくりにしてしまうのに筆者は大いに抵抗がある)の在り方をも方向づけることになると思われる。
まず基本的なことを押さえておこう。米国のみならず外国のことを語る場合、その国の政治機構についての基礎知識は必須となる。どうしても私たちは日本との類似性で他国を見てしまう傾向があるからである。特に米国の場合、裁判所は日本よりも政治的な色合いが濃く、統治機構の1つと位置付けられている。そのため、連邦裁判所にせよ州裁判所にせよ、その選出方法のほとんどは選挙形式である。そして判事のパーソナリティーが判決に反映することが当然と見なされている。もちろん判事は「法に則って」「公平に」判決を下そうとするが、そこに個々人の世界観(特に宗教観)が反映されないとは決していいきれない。
米連邦最高裁の判事は9人。そして一度就任するなら、終身職である。大統領は最長8年間しか影響力を行使できない。最高裁判事の指名権は大統領が持っており、連邦議会の上院で承認される。こうしたややこしい手続きを踏むのは、米国特有の「三権分立」の原則に沿ってのこと。しかし一度任命され承認されたなら、最高裁判事は任命者(大統領)よりも承認者(上院議員)よりも長く、自身の「色=イデオロギー」を米国に残すことができる立場を手に入れる。だから就任に際してさまざまなドラマが展開することになる。
このほど引退を表明したケネディ判事の場合、30年前まさにドラマチックな波乱の展開を経ての任命となっている。
1987年6月、ルイス・パウエル判事が引退を表明した。翌年に大統領選挙があり、もしも民主党が政権を奪うことになり、その後に自分が辞めるなら、きっと革新的な判事が未来の大統領によって任命されるだろう。そうならない前に、レーガン大統領の手で保守的な判事にバトンタッチすべきだとパウエル判事は考えたのではないか、というのが大方の見方であった。
いずれにせよ、レーガン大統領は保守的な判事を任命すべく、人選に当たった。そして大統領が白羽の矢を立てたのは、保守系判事として有名なロバート・ボーク氏であった。しかしこれに猛烈な反対を表明したのが民主党多数で運営されていた上院議会である。1987年当時、レーガン政権は上下院とも民主党が多数派の状態であった。結果、レーガン大統領はボーグ氏を指名したものの、上院議会で否決されるという事態を引き起こしてしまったのである。しかし波乱はなお続いた。
ボーグ氏の後にレーガン大統領が指名したのは、ダグラス・ギンズバーグ氏。同じく保守派の判事である。ところがギンズバーグ氏の名が挙がった途端、メディアに過去のスキャンダル(ロースクール時代にマリファナを吸っていた)をすっぱ抜かれ、上院議会での反対に遭い、彼も任命できない状態になってしまう。そして3人目の候補者として無事に就任したのが、アンソニー・ケネディ氏だった。
ここに至って、共和党と民主党の間に微妙な政治的駆け引きが機能した。さすがに大統領が指名しようとする候補者を2人続けて否決した民主党議員たちは、3人目のケネディ氏の審査には多少緩やかな姿勢で臨んだことは想像に難くない。一方、共和党側(レーガン政権)にとっても、今度は承認してもらいたい。その結果両者のバランス感覚がいわゆる「中間派」と呼ばれる新判事を生み出すことになったのであった。
そのケネディ氏が30年の時を経て引退を表明したのである。
次回、どうしてケネディ氏がこの時期に引退を表明したのか。また保守系判事が増えることで、共和党およびそれにくみする福音派系宗教集団が一体何を目指そうとしているか、について考えてみたいと思う。(続く)
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米司法界が保守化? 「中間派」ケネディ判事引退が示す米国事情と「福音派」(2) : 国際 : クリスチャントゥデイ より引用
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前回はアンソニー・ケネディ判事就任までのゴタゴタをまとめることになった。米連邦最高裁判事は、単に大統領が指名したら終わりではなく、その後に審査が上院議会で行われるため、政治的な駆け引きの道具と見なされる一面があることは、お分かりいただけたであろう。
同時にしっかりと押さえておくべきことは、現職大統領が共和党か民主党かを見て米国の行く末を占うだけでは片手落ちであって、上下院議会でどちらの政党が優勢であるかまで踏まえた分析が必要になってくるということである。
その場合、現職のドナルド・トランプ大統領と、彼が憧れ目指そうとしているロナルド・レーガン大統領とでは、同じ共和党の大統領であっても置かれている状況がまったく異なることを理解しておかなければならない。
レーガン政権下、下院は共和党多数であったが、上院は常に民主党多数であった。その中で政策を打ち出し、判事を任命するのだから、政治的な調整はかなりセンシティブなものであったろう。ところがトランプ政権は現在、上下院とも共和党多数の状態を維持している。選挙期間中からあれほど物議を醸し、共和党内からも異論が噴出したにもかかわらず、彼が大統領として迎えられたのは、歴代大統領たちがのどから手が出るほど欲していた好状況があったからなのである。
大統領、また上下院の多数派の政党が異なるという「ねじれ」現象は、米国政治では当たり前のことである。1980年以降の40年近くを振り返ってみると、大統領も上下院もすべて同じ党で独占できたのは、2002年から06年にかけてのジョージ・W・ブッシュ政権(共和党)下の4年間、08年から10年にかけてのバラク・オバマ政権(民主党)下の2年間のみであった。
トランプ政権は奇跡的(?)に恵まれた条件下でかじ取りができている。しかしこの至福の時代も今年の11月で終わるかもしれない。中間選挙があり、そこで民主党が議会の多数派となる可能性が高いといわれている。これはかなりの確率で起こり得ると見てよさそうである。だからトランプ大統領は「結果」を急ぐことになる。在イスラエル大使館のエルサレム移転、米朝首脳会談の実現、そしてこの最高裁判事の任命はすべて中間選挙へ向けてのアピールになる。
時代はトランプ大統領に追い風を吹かせている。すでに2017年に彼はオバマ大統領が達成できなかった判事指名権を受け継ぎ、ニール・ゴーサッチ氏を任命し就任させている。その翌年にまたも判事を任命する機会を得たのである。しかも「中間派」として最も評を読みにくくしていたケネディ氏を合法的に送り出し、保守的な判事を迎えることができるのである。これが11月の中間選挙後であったとしたら、レーガン元大統領と同じわだちを踏むことになったかもしれない。
では、共和党に代表される「保守派」は自分たちに好意的な判事をトランプ大統領に選出させることで、一体何をしようとしているのだろうか。
一口に「保守」といってもさまざまな側面があるため、各々の立場によってこの言葉の使われ方は異なるが、彼ら保守層が絶対に覆したい判例がある。それは1973年の「ロー対ウェイド事件」における最高裁の判決である。
この裁判は、米国がリベラル化していく分岐点となった判例だともいわれ、一般的には人工妊娠中絶を女性の権利として認めた判例とみなされている。しかし事はそれほど単純ではない。1970年代初期、テキサス州は中絶を犯罪として取り締まっていた。当時、ジェーン・ロー(仮名)と呼ばれる未婚女性は妊娠しており、中絶を願ったが、州法がこれを許さないという状況にあった。彼女はこの法律のために中絶手術を受けられないのは憲法上の権利が侵害されていると主張し、連邦裁判所に州法適用の差し止めを求めた。その後、上告を受けた連邦最高裁は、テキサス州法が違憲であると7対2で判断した。結果、あたかも中絶が公的に認められたかのような印象を与えることとなった。
だが正確には、妊娠期間を3つに分割し、第1期と第2期の段階では女性に手術を受けるかどうかの選択権があるとし、第3期になっていたら中絶を禁ずる州法を適用してかまわない、という判決であった。つまり州法の適用範囲を限定的に認めるということでもあり、決して中絶をすべて認めた判決ではない。
だがこの判決そのものを葬り去りたい保守派の人々は、あえて極端に「最高裁が中絶を公的に認めてしまった」と人々に訴え、この判例を覆すことを支持する人々を掘り起こしにかかったのである。
そして保守的な宗教家がこれに賛同した。「福音派」と称する穏健なキリスト教保守層もこれに加わった。そしてその中の一部が政治化し、「宗教右派」と呼ばれる政治的キリスト者集団が生み出されていく。この判決が出たことで、かえって中絶に対する人々の関心が以前より高まってしまったという指摘すらある。
言い換えるなら、共和党や彼らに親和性を持つ南部の人々、そしてキリスト教保守層として聖書を人生の道徳的指針として受け止め実践している「福音派」が、共通の敵の前に一致団結したということである。
次回、ケネディ判事引退によって米国がどのような方向へ進むか、またその中で「福音派」と呼ばれる緩やかなキリスト教保守層がどのような役割を果たすのか、これからのことを予想してみたい。(続く)
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トランプ米大統領、最高裁判事に保守派キャバノー氏指名 - BBCニュース より引用
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ドナルド・トランプ米大統領は9日夜、現職判事の引退で近く空席になる連邦最高裁判事の後任に、保守派のブレット・キャバノー判事(53)を指名した。上院の承認手続きが滞りなく進むかどうかが注目される。テレビのゴールデンタイムにホワイトハウスで記者会見したトランプ氏は、ジョージ・W・ブッシュ元大統領の顧問だったキャバノー判事を、「素晴らしい法曹家」とたたえた。
首都ワシントン(コロンビア特別区)の高裁判事を務めるキャバノー氏について、トランプ氏は「非の打ち所のない経歴と比類なき資格の持主で、法の下の正義の平等にこれまでも熱心に尽くしてきた」と説明した。さらに「分かりやすく効果的な文章を書く、素晴らしい法曹家で、現代における最も優れた、鋭敏な法律家と広く認識されている」と、最高裁判事としての適任ぶりを強調した。
ホワイトハウスの記者会見で、キャバノー判事はトランプ氏に感謝し、「この発表に至るまで、米国の司法の役割の重要性を大統領がいかに大事にとらえているか、私は間近で見させてもらいました」、「最高裁判事指名についてこの大統領ほど、広く相談し、この大統領ほど様々な立場の大勢に意見を求めた人はいません」と述べた。
「感謝します。私を信頼していただいて、恐れ多い気持ちでいっぱいです」と判事は強調した。
連邦最高裁は米国の市民生活に重要な影響力を持つ。人工中絶、死刑制度、投票権、移民政策、政治資金、人種偏向のある警察の行動など、激しい賛否両論のある法律について最終判断を示すほか、連邦政府と州政府の争いごとや、死刑執行停止の請求などについても最終判断を示す。最高裁判事は終身制で、死去もしくは引退するまで地位が保障される。
トランプ大統領が最高裁判事を指名するのは2人目。最高裁長官を含めて合計9人の判事の政治的傾向が圧倒的に保守寄りになった場合、その判決はトランプ氏の任期満了後も長く米社会に影響を及ぼすことになる。
上院がキャバノー判事の指名を承認した場合、今年夏で引退すると発表したアンソニー・ケネディ判事(81)の後任となる。
現在の最高裁判事はすでに保守派5人、リベラル4人で、保守派が優勢のため、キャバノー氏が就任しても直ちに大きく傾向が変わるとは限らない。ただし、引退するケネディ判事は同性結婚合法化や人工中絶権支持など多くの重要判決でリベラル派の判断を支持することが多く、「浮動票」として5対4で判決を成立させる重要な役割を担ってきただけに、リベラル派は危機感を抱いている。
トランプ氏が昨年指名したニール・ゴーサッチ判事(50)はすでに、判事9人中最も保守的な判断を重ねている。
キャバノー判事とは
2006年以来、影響力の強いコロンビア特別区連邦控訴裁の判事を務める。その前はブッシュ政権の顧問だった。
1990年代にビル・クリントン大統領(当時)を捜査したケネス・スター特別検察官の、部下だったこともある。
イェール大学卒。カトリック・イェズス会系高校出身の熱心なカトリック信者で、引退するケネディ判事の下で調査官を経験した。
2009年には「ミネソタ法学論集」に、現職大統領は刑事捜査や民事裁判から免除されるべきだと書いた。
今回のトランプ大統領の指名には、キャバノー判事のこうした主張が影響したかもしれないという指摘もある。2016年大統領選のロシア疑惑とトランプ陣営の関係についてロバート・ムラー特別検察官が捜査を進めるなか、いずれ最高裁が捜査について判断を求められる事態も想定される。
これからどうなる
大統領が指名した最高裁判事候補は、就任に上院の承認を必要とする。
現在の上院(定数100)は共和党51議席、民主党49議席で、わずかに共和党が有利。ただし、共和党重鎮のジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州選出)が地元でがん治療を受けているため、共和党が実際に確保できる票数は50票に留まる。
上院本会議での投票の前には、上院司法委員会が公聴会を開いて候補者に質問を重ね、最高裁判事としての適性を確認する。司法委公聴会には長時間かかることもある。バラク・オバマ前大統領が任期末期に指名した判事候補については、上院共和党が公聴会審議を拒否し、結局時間切れとなった。
キャバノー判事は10日にも上院議員との面会を始めると話した。
民主党は特に、人工中絶は憲法が保障する基本的権利だと認定し、人工妊娠中絶を規制する米国内法の大部分を違憲とした重要な1973年最高裁判決「ロー対ウェード事件判決」について、キャバノー判事の立場を追及する見通し。
保守派キリスト教徒を中心とする中絶反対派は1973年以来、判例を覆す最高裁判断を求めてきた。トランプ氏も、中絶権に反対する「生命支持」判事を希望していると発言したことがある。
米国では今年11月に、下院全議席と上院の35議席が改選対象となる中間選挙を控えている。そのため、ホワイトハウスも共和党も選挙前に、キャバノー判事の就任を確保したい構えだ。
(英語記事 Brett Kavanaugh picked for Supreme Court by President Trump)
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