原理講論を読む

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以前の消えてしまったバノンの記事の引用です

スティーブン・バノンの愛読書 : 地政学を英国で学んだ


スティーヴ・バノンの暗い歴史の理論書への傾倒は懸念すべき事態だ
by リネッテ・ロペス

トランプ大統領のアドバイザーであるスティーヴ・バノンは、今週のタイム誌の表紙を飾っており、その記事の中では『4thターニング』と呼ばれるアメリカの未来を予測した本の中で展開されている理論を深く信じていることが明らかにされている。

この事実は、すべてのアメリカ国民にとって懸念すべきことだ。

なぜならこの本の著者であるウィリアム・ストラウスとニール・ハウは、人間の世代は80年から100年の周期で「サエクラム」と呼ばれる一つのサイクルを構成しているというのだ。

このような考え方が古代ギリシャ時代までさかのぼることができるとしており、ギリシャ人たちは「サエクラム」の終わりが「エクピロシス」という破滅的な出来事によってそれまでの秩序が破壊され、劇的な形で新しい秩序がもたらされると考えていたという。

この激変時代は「第四の節目」(4thターニング)として知られており、バノンはこの二人の著者のようにこの時代に突入していると考えているのだ。

(3月に邦訳が発売される)この本によれば、アメリカが過去2回経験した「4th ターニング」は、南北戦争とその再興、そして世界恐慌から第二次世界大戦までの期間だという。そしてその前は、米国の独立戦争の時代となる。

いずれの「4th ターニング」においてもアメリカ人は新たな未来のために団結して再興することを余儀なくされたのだが、それらはすべて大規模な紛争によって多くの人命が失われた後なのだ。

この「節目」は例外なく「破壊的な出来事」の発生から始まり、その後に退廃の期間が続いてから古い秩序をめぐる決定的なクライマックスが戦争とともに訪れ、最終的に新たな世界秩序によって解決して安定化するというのだ。

そしてバノンが傾倒しているこの部分にこそ、大きな懸念がある。

バノンは新たな秩序の到来のためには「激変」が必要であると考えている。それによってわれわれは紛争のクライマックスを迎えるというのだ。彼はホワイトハウスにおいて、自分が「必然的」であると考える秩序をもたらすために現在の秩序を崩すような政策をトランプにアドバイスしようとしていることを示してきたのである。

彼はカオスを発生させるために、政治・経済面での連携を分断し、伝統的なアメリカの原則から背を向けようとしている。こうすることによって、バノンは「4th ターニング」を招き入れようとしているのだ。

▼バノンにとっての「聖書」

バノン自身はトランプを使って自分自身のアメリカについてのビジョンを実現するという欲望について、あけっぴろげに語っている。

たとえば去年の夏のヴァニティー・フェアー誌のインタビューで、トランプについて「われわれにとってのガサツなツールだが・・・彼がそれを理解しているかどうかはわからない」と語っている。

おそらくトランプは理解していないのだろうが、『4thターニング』という本の視点からトランプの政策を見れば、ことの重大さがわかる。

バノンは「4thターニング」を発生させる「きっかけ」はすでに起こっていると考えている。それは2008年の金融危機リーマン・ショック)である。

よって、われわれは退廃期に入っており、ハウとストラウスはこの期間のことを、孤立主義、インフラ建設、連邦政府への権力の集中とその権限の強化、そして経済の再構築の想像が考えられる期間だと考えているのだ。

もちろんこれらがその目的そのものになっているわけではない。バノンは独裁的な政治の開始が東西間での大規模な紛争に備えたものになると考えている。もちろんそこでの「東」は、中東と中国のどちらかを意味することになる。

長年にわたってバノンは、現在マサチューセッツ工科大学(MIT)の歴史学者であるデイヴィッド・カイザーにも同様のことを言わせようとして圧力をかけてきたが、失敗している。

タイム誌によれば、「バノン氏は私に向かって、独立戦争の次はさらに大きな革命となる南北戦争、そしてさらに大きな第二次世界大戦という革命をアメリカは経験しましたよね、と言ってきたわけですが、これと同じことをカメラに向かって言うように促したのです。もちろん私はそう言いませんでしたが」とカイザー教授は証言している。

さらに「ハウ自身も、バノンの過激な未来予測については衝撃を受けておりました」とカイザー教授。

バノンは自身のラジオ番組で、アメリカが世界中でイスラム過激派と「戦争中」であることを繰り返し述べており、「グローバルな生死をかけた戦争」であり、「再び中東での大規模な軍事闘争」に発展する可能性が高いとしている。

また、中国との戦争も迫りつつあると言っている。これは彼が主宰していたニュースサイト「ブレイトバート」における中心的なテーマであり、2015年11月には「われわれの運営しているサイトの主なメッセージの一つは、われわれが戦争中であるということだ」と述べている。

▼繰り返される現実

究極的にいえば、過去と未来を同時に書くことの危険性は、著者がその二つをわけたものとして考えられなくなる点にある。過去の歩みやその踏み間違いというのは、容易に繰り返されるように感じるものであり、未来も決まっていると考えがちだ。

ところが実際の歴史はこのようなことを示しているわけではない。すべての時代の大災害は、常に独特な形で発生しているからだ。ストラウスとハウがその著書の中で失敗し、バノンがはまってしまったのは、まさにこの点であった。

ハウとストラウスは「危機」をもたらす出来事が「金融危機の不吉な予兆か、もしくは国政選挙のような通常の形でもたらされる」とも書いている。

これはたしかに合理的だ。南北戦争と再興までの「4thターニング」は、それ以降の世界恐慌から第二次世界大戦までの「4thターニング」とは違う形で発生したからだ。

ところがストラウスとハウは、このような違いというものを次の「4thターニング」の到来において指摘するのを忘れている。彼らは同じ「節目」が存在しないことを指摘できていないのである。

その代わりに彼らは前回の「危機」の予兆となる出来事である世界恐慌という金融危機が今回も起こるはずであり、バノンもこれを信じているのだ。彼が2008年のリーマン・ショックを「危機」の始まりであると信じているのは、まさにこの点にある。

ところがこの二つは比較できるようなものではない。米国内の失業率は前回の危機のような20%のレベルまで上がらず、最悪であった2009年10月でも10%であった。2008年の政府はフーバー大統領が2年間何もせずに状況を悪化させたのとは違い、世界的な金融崩壊を阻止するために素早く動いて対処したのである。

今回の金融危機は、アメリカ全体を苦しめる代わりに、それ以前の40年間に拡大していた経済格差を悪化させた。よって、フランクリン・ルーズベルト大統領が1933年の就任演説で描いた「世界恐慌で失われたアメリカ」という姿は、すべてのアメリカ国民に共感できるものであった。

ところがトランプ大統領が就任演説で描いた「大虐殺されるアメリカ」という暗い世界観は、多くの人々には共有されていなかった。

そしてこの認識の隔たりが、まさにアメリカという国の深い分裂状態をあらわしているのだ。

▼調整

よって、「4thターニング」は来るかもしれないが、バノンがその設計図を描いているわけではない。ハウとストラウスによれば、退廃期の最大の特徴は「結束」だからだ。

この結束のおかげで、リーダーたちは危機において「独裁的で厳しく断固とした態度」をとることができるようになるというのだ。ルーズベルトはまさにこのような立場をとることになり、国民を働かせるために政府の全権を握ったのである。

ところがこのような結束は、アメリカでは長年見られていない現象だ。むしろその反対に、現在の米国社会の分裂は今までに見たことのないほどの状態なのだ。

「4thターニング」で活躍するのはベビーブーマーとミレニアル世代たちである。ブーマーたちは暴挙によってわれわれを紛争に導くイデオローグであり、ミレニアル世代は若き「英雄」という役割を担ってその困難を戦うのである。

危機の「きっかけ」的な出来事が発生すれば、アメリカはストラウスとハウのいうブーマー世代の「老年の守護者」のリーダーの元に団結するという。そしてこのリーダーは、「いかに経済が崩壊しようとも、アメリカン・ドリームが二世代続けて拒否されるような考えに対して激しく抵抗する」ような人物だというのだ。

もしバノンがこの「老年の守護者」のために働いていると考えるのであれば、彼は一つ重要な点を勘違いしている。それはミレニアル世代こそがこの危機からの脱出を主導するという点だ。ところがトランプの考えの中には、若者の必要性は考慮されていない。

トランプのメッセージは喪失感のある古い世代に人気があり、そもそもアメリカン・ドリームを追究するチャンスさえ与えられてこなかったと感じている若い世代には響いていない。

2016年の大統領選挙において、選挙に行った若者のほとんどはトランプ大統領に投票しておらず、それ以上の数のミレニアル世代は投票さえしていない。この理由の一つは、トランプが若者に対してほとんど何も公約を提供していないからだ。

その証拠に、七月の共和党大会では青年部代表のアレクサンドラ・スミスが、自分の党に対してこのような状態を警告しており、「共和党は長年にわたってミレニアル世代に対して何もアピールしていいません。わが党はあまりにも老人向けであり、自分たちの価値観を次の世代にアピールするための努力が足りないのです」と説いている。

ハウとストラウスによって示された「4th ターニング」には、アメリカ国民がすべからく合意できるような価値観への回帰が必要となるのだが、ミレニアル世代と共和党(というかバノン)との間の距離はあまりにも大きい。

その理由として、ミレニアル世代というのは米国の歴史の中でも最も多様な集団(43%が非白人)であり、そのほとんどがバノンの「人種紛争」というビジョンを共有していないからだ。

「4thターニング」には、米国が国内の分裂と外からの脅威に対して結束するというストーリーが描かれている。著者たちはこれが歴史の自然な流れであり、その発生は不可避であると説明している。

ところがメキシコやカナダに対する脅しや、渡航禁止措置などによってわれわれが目撃しているのは、敵の創出であり、しかもこの敵というのは多くのアメリカ人がそもそも欲していないような存在なのだ。

バノンの「4thターニング」に対する信仰は、われわれを結束させるものではなく、分裂させるものだ。これは危険であり、まだ誰も見たことのない現象となっている。

そして当然だが、次に何がやってくるのかは、まだ誰にもわからないのだ。

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The Fourth Turning: What the Cycles of History Tell Us About America's Next Rendezvous with Destiny

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