原理講論を読む

日常生活の中で 考える糸口を求めて

創造原理 相対思考 客観的事実と主観的判断を意識する生活習慣 STAP細胞の要点と理研やバカンティ教授の行動を巡って

先日「サイエンスZERO」という番組でSTAP細胞が扱われていた。それを踏まえて以下に要約する。

細胞があらゆる細胞に変化できる多能性を獲得することができるということから、STAP細胞と命名されたという。

受精卵が細胞分裂していき、皮膚であるとか神経・赤血球・心臓・小腸・・・といったように役割の違う細胞になることを「分化」という。

この時遺伝子レベルで何が起きているかというと、実はどんな細胞も全身のあらゆる細胞になることができる遺伝子情報を持っている。しかし例えば皮膚の細胞になるときにはそれ以外になることのできる遺伝子には、いわば蓋をされて働かなくなる。

初期化とはこの蓋が取れて再びどんな細胞にもなることのできる受精卵のような状態に戻ること。

初期化が起きて様々な細胞になれる能力を手に入れることができた細胞を多能性細胞と呼び、一般には万能細胞といわれている。

この論文や論文の問題を理解するためにはOct4という言葉を先ず理解しなければならない。Oct4というのはタンパク質の一種で、これがあるから細胞は初期化された状態を維持することができると考えられている。

まさに多能性細胞の目印とも言えるタンパク質。

ということはもし酸に付けた細胞が初期化されれば、目印であるOct4が現れるはず。そこでOct4が細胞内に現れると緑色に光る、特殊なマウスを用意してマウスから血液細胞を取り出し酸につけてみた。

培養を初めて二日目一部の細胞が緑色に光り始めた。酸につけた細胞から多能性の目印Oct4が現れたので初期化が起きたと考えた。

このSTAP細胞が本当にあらゆる細胞に分化できるのかを確かめるため、STAP細胞をマウスの皮膚に注入した。するとSTAP細胞が増殖し腫瘍がつくられた。この腫瘍の中を調べたところ、皮膚・筋肉・腸などのSTAP細胞から分化したと見られる様々な細胞が見つかった。

Oct4の出現と様々な細胞への分化の2つをもって多能性細胞ができたと結論づけられた。

実はここまでではiPS細胞のような万能細胞ができたとは言えない。

さて、STAP細胞作成の流れは

マウスの血液細胞群→弱酸性→STAP細胞群→分化(皮膚・筋肉・腸)

ところがこのSTAP細胞は増殖しないし、そのままでは死んでしまう。

そこで特殊な培地を用いて

STAP細胞→STAP幹細胞(増殖能力を備えた細胞)

にしなければならない。ここまで来て初めて中山教授の作成したiPS細胞に並ぶことができる万能細胞となったと言える。

生体の中では増えても試験管の中では増えないことがよくあり、それでは医療や実験に使う際に実用的とは言えない。

論文を参考にして世界中の科学者が同様な条件で実験をする追試を試みたが、未だに誰も作成できずにいる。

科学的であるとは再現可能だということで、この再現性に疑問を持つ科学者が出始めた。我が国では細胞の中でどのような初期化が起きるのか研究している、関西学院大学の関由行専任講師がそのひとりだ。彼はマウスの皮膚からSTAP細胞を作製する実験を三度試みるも三度とも失敗した。細胞は全て死んでしまった。

カリフォルニア大学Paul Knoepfler準教授が「STAP NEW DATA」

を投稿しているサイトがある。追試の結果報告がなされている。

http://www.ipscell.com/stap-new-data/

ここに関由行専任講師は投稿している。

論文中のSTAP cells from other tissue sourcesに以下のような文章があり

We next performed similar conversion experiments with somatic cells collected from brain, skin, muscle, fat, bone marrow, lung and liver tissues of 1-week-old Oct4-gfp mice.

脳や皮膚や筋肉・脂肪・骨髄などの細胞からの変換を試みたことが示され、続く文にはSTAP細胞が作製されたことが観察されたと書かれている。

関氏はここに注目したので比較的容易に作製できると考えた。

詳しくはネイチャーを参照

http://www.nature.com/nature/journal/v505/n7485/full/nature12968.html

当初は手の振り方や培養液がメーカーによって多少違ったり、これに加えるものなどによって再現できないのではないかと専門家は好意的に受け取っていた。

追試をする科学者のために理研は論文には書かれていない詳しい作製手順を公開した。以下英文

http://www.cdb.riken.jp/jp/04_news/articles/pdf/14/protocol_exchange_v1.pdf

ところがこの中にある文章が物議を醸し出した。

contained the rearranged TCR allele,

TCR再構成は無かった

TCRとはT Cell Receptorのことで

T細胞とはSTAP細胞を作る際酸につけた細胞にあったリンパ球の一種

TCR再構成とはT細胞にだけ起こるある現象をさす 

T細胞とは病原体などから体を守ってくれる重要な細胞。病原体に対抗する武器を体の表面に持っている。攻撃すべき病原体は実に様々。それに合わせてたくさんの武器を用意する必要がある。その多様な武器を得るため実はDNAが変化する。一部が切り捨てられDNAの配列が変わる。これがT細胞だけに起こるTCR再構成。そもそも一つの受精卵から分化してできる全身の細胞は、基本的に同じDNAを持っている。しかしT細胞になった細胞はDNAが変化する。つまりTCR再構成はT細胞に分化した証拠。

ところでSTAP細胞とは酸につけたことによって一度分化した細胞が初期化されることだった。

酸につけた細胞は一種ではなく、いくつかの細胞が集まったもので、その中にT細胞も含まれている。これらの細胞を酸につけてできたSTAP細胞のDNAを調べたらT細胞の目印であるTCR再構成があったと論文には書かれている。

つまりSTAP細胞を調べてTCR再構成があったということは、それはもともとT細胞だったものが初期化したのだという証拠になる。

ところが手順書にはTCR再構成は無かったと記されている。

これはSTAP細胞ではなく増殖可能になったSTAP幹細胞のことを意味している。途中まであったT細胞の目印が消えてしまったという。

手順書においてTCRはSTAP細胞ではあったが、STAP幹細胞に変わるときにTCR再構成を持っている細胞というのは生存が不利になるので、その結果生存がなくなると主張されている。

画像の問題を騒がれているのはSTAP細胞の段階でも本当にTCR再構成があったのか怪しくなったという話だ。切り張り問題だ。

善意に受け取ればその細胞はどこから来たのか考えると可能性として考えられるのは、

一つは理研の主張通り何らかの細胞が初期化されたが、そのメカニズムがなんだか分からない。

もう一つは酸につけることによってもともとあった多能性細胞が選ばれたということかもしれない。

もう一つ画像で問題視されているものは、分化の証明として使われたが、実は別の論文、すなわち早稲田大学の大学院の博士論文のものと同一だった。

 

以上の記述を踏まえて理研のホームページのプレス向けのSTAP細胞の要約を読むと分かりやすいと思う。

http://www.riken.jp/pr/press/2014/20140130_1/

つまりSTAP細胞の証明もSTAP幹細胞の証明も分化の証明も三つとも崩壊したということである。

 

理研により3月5日に明らかにされた詳しい手順書は、既に小保方さん主導とは言えず、理研という組織の責任の元に行われている。

ところが前述のようにもともとSTAP細胞は存在しなかったのではないかと思われる記述があったことになる。これによって私は理研に対する第一の不信感を抱いた。次はノーベル賞受賞者である野依良治理事長が、18日に再現実験に3ヶ月はかかり全体としては約一年かかると、自民党の科学技術・イノベーション戦略調査会で言われたことである。

上述したように様々な細胞からSTAP細胞が作製されたという、またその作成方法も細い管を通したり、酸につけたり、穴を開けたりと数通りあるという。前者の証拠の画像や動画も当然残っていなければならないであろう。それらの実験過程のデータの検証をしつつ、方法の種類×使う細胞の種類の実験をどんどんすれば、単にリンパ球だけから作製できたわけではないので、少なくとも各実験で一度だけ成功したのではないはずである。何故各々での証拠写真を論文に載せなかったのであろう。勿論代表させたという意図があったのかも知れないが、複数の分化された細胞から作られたという証拠は、それぞれ貴重な証拠となるべきものであろう。

3ヶ月もかかるというのは一体どういう事なのであろうか?3ヶ月かかるということ自体がSTAP細胞がインチキであったという告白になりはしないのであろうか?ノーベル賞を受賞した科学者の発言とは、素人として信じがたいことである。全ての情報を握っている理研が3ヶ月もかかるものであるなら、手順書にも記載されては如何であろうか?

理研は大丈夫なのであろうか?野依良治理事長は大丈夫なのであろうか?よもやこの論文に目を通していないようなことがないことを祈る。

 

ハーバード大学のチャールズ・バカンティ教授は自分のつとめる病院のホームページにより効果的な作成法として、弱酸性につける前に細い管を何度も通すことが重要であると紹介した。これには驚いた。どの様な刺激であれ、それを施せば多くの細胞は死滅する結果が出ている。生き残った細胞にまた別の刺激を与えてSTAP細胞を作製するというのである。ボディビルダーが様々なトレーニングを駆使して筋肉をモリモリにするような発想であろうか?私には違和感がある。いっそ穴を開ける方法も加えて三段ロケットにしては如何であろうか?素人には受け入れがたいことを科学者は考えるものらしい。バカンティ教授は本当に大丈夫なのであろうか?

しかし、最後に「サイエンスZERO]で紹介されたシクラメンの話をもって、私もエールと代えさせて頂きたいと思う。

シクラメンの茎を切るという物理的な刺激を与えると、切り口の細胞がつぶつぶの固まりになる。これはカルスと言って初期化された細胞の固まりだそうである。このカルスを培養すると、また根や茎や葉などの全ての種類の細胞が出てくる。茎の細胞が初期化されたというわけである。植物にできるのであれば、人間や動物にも起こることはあるかも知れないと考えることは、不自然ではない。

とはいえ、私にはこのSTAP細胞を巡る話はどこか進化論を思わせるものがある。何故であろうか?