ローマ・カトリック教会の聖職者による子どもへの性的虐待問題をめぐり、フランシスコ法王が批判の矢面に立たされている。長年隠蔽(いんぺい)された問題に厳しく対応する姿勢を示してきたが、25、26日に訪れたアイルランドでは抗議デモが起きた。教会内から法王の辞任を求める書簡も公表された。すべての権力が法王に集中するカトリック教会では、極めて異例の事態だ。

 26日、ダブリン。フランシスコ法王はミサで「真実の追求のために確固たる行動を取らず、教会内で沈黙してきたことへの許しを請う」と述べ、性的虐待問題への教会の対応の不十分さを謝罪した。

 アイルランドはこれまで、カトリック教徒が約8割を占める保守的な国柄だった。だが聖職者神学校の男子生徒に性的虐待を繰り返していたことなどが発覚。同国政府が2009年に公表した調査報告書は、こうした性的虐待が1970年代から行われながら、教会が組織的に隠蔽していたと指摘した。

 教会の権威が失墜する中、同国ではローマ法王庁バチカン)が「教義の根幹に関わる」としてきた政策課題について転換が進んだ。国民投票の結果、96年に離婚が合法化され、2015年には同性婚憲法で認められた。昨年には同性愛者であることを公言するバラッカー氏が首相に就任。妊娠中絶についても、今年5月の国民投票で容認派が多数を占めた。

 フランシスコ法王の、ヨハネ・パウロ2世以来39年ぶりとなる同国訪問は、カトリック教会の存在感を再び高めることをめざしたものだった。

 だがミサ会場の外では、法王の訪問に抗議する数千人が集結。プラカードを手に、「法王は小児性愛者を守っている」と批判し、「真相を解明し犯罪者を処罰せよ」と訴えた。バチカンは、この日のミサに約30万人が集まったと発表したが、実際にはもっと少なかったと指摘するメディアもある。

「法王が問題を放置した」

 逆風下の法王のアイルランド訪問にぶつけるかのように、26日に衝撃的な書簡が公表された。

 元駐米バチカン大使のカルロ・マリア・ビガノ大司教によるもので、「法王が性的虐待の疑惑について報告を受けながら放置した」と告発し、法王の辞任を要求する内容だ。

 伊メディアによるとビガノ氏は、米国のマカーリック元枢機卿による性的虐待疑惑の告発について、法王が就任直後の2013年に報告を受けながら、対応せずに放置したと指摘。マカーリック氏が同年の法王選挙(コンクラーベ)で法王を支持していたからだと主張している。マカーリック氏は今年7月になって法王に辞職を申し出て、枢機卿の地位を解かれている。

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