縦割りの省庁の弊害を、官邸主導という切り口で政府は突破してきました。
小泉政権の時から既にそのような取り組みはなされてきました。
マスコミはこの官邸主導にネガティブなイメージを持たせるために、「安倍一強」と揶揄しています。
しかし、それは本末転倒で、霞が関の岩盤規制を突破するために、官邸主導が用いられてきました。
以下のサイトに官邸主導の説明があります。
官邸主導・政治主導と人事権-日本と英国との比較 ー 内山融 | | Platnews より引用
===
官邸主導・政治主導とは
小泉政権以降、「官邸主導」「政治主導」といった言葉がよく聞かれるようになった。首相官邸や各省大臣がトップダウン的に政策決定を進めることだが、「安倍一強」と言われるように、現在の安倍政権では官邸主導の傾向が特に強い。
その背景を少し説明しよう。20世紀後半の日本政治(「55年体制」と呼ばれる)では、官僚や、官僚と連合した族議員が大きな力を持っていた。しかし、こうした仕組みに対しては、民主的に選ばれたわけではない官僚が大きな権力を持つのはおかしい、官僚と族議員は既得権益を守るばかりで重大な改革は行えない、といった批判がなされていた。そこで1990年代頃には、首相を中心とした内閣が官僚や与党に対するリーダーシップを発揮すべきだという考え方が強くなってきた。こうして選挙制度改革や中央省庁等改革(橋本行革)が実行され、首相の持つ力は大きく増強された。
そうした力を存分に用いたのが小泉首相(在任2001年~2006年)である。小泉政権における官邸主導の政治運営により、郵政民営化を始めとした構造改革が次々と実行された。小泉後の自民党政権は短期間で首相が交代したものの、2009年に就任した民主党政権は、「政治主導」「脱官僚支配」を掲げて、官邸主導・大臣主導型の政治運営を試みた。
現在の「安倍一強」体制は、そうした流れの延長にある。2012年末に再登板した安倍首相は、強いリーダーシップの下、デフレ脱却を目指して、大規模な金融緩和を柱とするアベノミクスを導入した。昨年7月に集団的自衛権行使を容認する憲法解釈変更を閣議決定したのに続き、この9月には、集団的自衛権行使を可能とするほか他国軍への協力を拡大する安全保障法制も実現させた。同9月行われた自民党総裁選でも、他の候補は出馬できず、首相の独り勝ちであった。
人事権の重要性
こうした首相の権力を支えるものとして注目すべきなのは、人事権である。首相がある政策を実現したいが官僚機構が抵抗しているといった場合には、抵抗する者を主要ポストから外し、賛同してくれる者を代わりに据えるのがもっとも効果的だからである。
実際、安倍首相は、人事権を効果的に活用して、自らが望む政策を実現させている。たとえば、政権発足間もない2013年3月には、大規模緩和に積極的な財務省出身の黒田東彦氏を日本銀行総裁に登用した。黒田総裁は「黒田バズーカ」と呼ばれる量的・質的緩和を2度にわたって繰り出している。同年8月には、外務省出身の小松一郎氏を内閣法制局長官に起用した。これまでの長官人事は法制局からの内部登用が慣例だったが、従来の法制局は集団的自衛権行使に消極的だったため、慣例を破って外部からの登用に踏み切ったのである。
モデルとしての英国
ところで、官邸主導・政治主導のモデルといえるのは英国政治の仕組みである。英国では首相のリーダーシップが強く、官僚や与党内に大きな影響力を発揮する。そのため英国首相は「選挙された独裁」などと揶揄されることもある。たとえば、保守党のサッチャー首相(在任1979年~1990年)は政府内の抵抗を押し切ってさまざまな新自由主義的改革を実行したし、労働党のブレア首相(在任1997~2007)も、大臣特別顧問を多用するなどしてトップダウン型の政治運営を行った。
このような英国の仕組みは、長らく日本政治にとって見倣うべき模範とされてきた。英国のような二大政党制を日本にも導入するべきという主張は根強いが、民主党の「政治主導」も、自覚的に英国モデルを取り入れようとしたものだった。たとえば、民主党の菅直人代表代行(当時)は、政権獲得直前の2009年6月、官僚主導政治を改革するためのモデルとして英国政治を視察している。また、民主党政権が政治主導を実現するための司令塔として設置した「国家戦略室」の英訳は”National Policy Unit”であるが、これは、英国での官邸主導政治に大きな役割を果たしている首相官邸の組織”Policy Unit”の名に倣ったものである。
英国官僚人事の実際
このように英国は官邸主導・政治主導の本家のように言われているが、実際は、政治家が官僚人事に介入する程度は、日本に比べると随分小さい。各省の事務次官や局長の人事は、中立の機関である国家公務員人事委員会が候補者を1人選定し、首相に推薦する仕組みである。各省の大臣はそのプロセスに一定程度関与することはできるが、複数の候補者を推薦させることや、推薦された候補者と別の者を事務次官等に任命することは不可能である。官僚人事の政治的中立が尊重されているのである。
もっとも、2010年に就任したキャメロン政権は、事務次官人事への大臣の影響力を強化する制度改革を進めようとしていた。改革案として提示されていたのは、国家公務員人事委員会が候補を複数推薦して、首相の選択に委ねるという形であった。本年5月の総選挙後にこの改革を担当する内閣府大臣が交代したため、今後どのように進展するかは明らかでないが、たとえこの改革案が実現したとしても、中立機関の人事委員会が候補推薦の中心的役割を担う点は変わりがない。候補者名簿作成や任命に首相官邸や各省大臣が影響力を行使できる日本の内閣人事局の仕組みとは、まだ開きがある。
政策決定についても、必ずしも政治家が独占しているのではなく、官僚も一定の役割を果たしている。大臣の指示を官僚が黙って忠実に実行するというよりも、大臣と官僚との絶えざる対話により政策がつくり上げられていく。つまり、新しい政策を実現する際には大臣が官僚に大まかな指示を出すが、官僚はその指示を精査して、大臣と相談しつつ、政策の詳細を組み立てていく。実際の英国の政策決定は、通常イメージされる「政治主導」よりもやや複雑なプロセスなのである。
バランスの取れた官邸主導・政治主導を
以上のように、日本では、英国モデルが過度に単純化された形で理解されているように思える。実際の英国政治は、官僚の中立性や専門性を尊重したものである。もちろん、民主的に選ばれた政治家がリーダーシップを発揮するのは重要なことである。しかしそれによって官僚が萎縮してしまい、専門性に基づく政策立案が損なわれるようでは好ましくない。官邸主導・政治主導と、官僚の中立性・専門性とのバランスをどう取っていくか、真剣に考えることが必要であろう。
内山融(うちやま・ゆう)
東京大学大学院総合文化研究科教授。専門は日本政治・比較政治。著書に、『小泉政権―「パトスの首相」は何を変えたのか』(中公新書)、『現代日本の国家と市場』(東京大学出版会)など。
(Photo:Wikipedia)
===
民主党が政権を握っていた時には、官邸主導や政治主導を自民党のように模索はしている。ところが野党になった民進党は真逆の行動に出ている。
本来民進党議員が進めてきた加計学園の獣医師学部の建設であったが、それを翻して反対するようになった。
しかも、天下り問題で官僚を辞めた前川と一体化して、岩盤規制の突破の戦略特区の意義を打ち砕こうとしている。
全部、党利党略のためであり、政局にするためという浅ましさである。
さて、よく聞く「政務官」もその性質が変わってきている。
それは、以下に詳しい。
小泉進次郎氏を起用へ――「政務官」ってどんなポストなの? | THE PAGE(ザ・ページ) より引用
2013年9月29日
===