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石破政権誕生なら失われた20年に逆戻りか? 高橋洋一氏は日本経済大失速間違い無しと言う

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「安倍降ろし」で石破総理が誕生すれば、日本経済は大失速間違いナシ(髙橋 洋一) | 現代ビジネス | 講談社(1/4) より引用

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さて、加計問題が再燃するが日

 

本稿が出る10日(月)には、国会閉会中審査で加計学園問題が取り上げられ、前川喜平・前文科事務次官参考人として出席する。本コラムでは、加計学園問題について何回も取り上げてきたが、前川氏の記者会見でのおかしな発言などが取り上げられることになるだろう。

本コラムで取り上げた前川発言の問題点は以下の3点である。

1.天下り斡旋の違法性を知らなかった
2.石破4条件の立証責任は内閣府
3.部下の言うことは正しい

これらについては質疑が行われるので、その中でこの発言の問題点が指摘されるだろう。もっとも、マスコミは、前川氏を勇気ある告発者として位置づけているので、この点に関する報道はあまりないだろう。マスコミ報道より、後で議事録を見たほうがいい。

国会質疑を聞く上で、加計学園問題の構造を改めて簡単に見ておこう。実は本当に簡単な話なのだ。

問題のはじまりは、2003年3月の文科省告示である(http://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/nc/k20030331006/k20030331006.html)。大学等の申請に関する告示だが、ここで、なんと獣医学部の新設認可は申請を出せない、となっている。つまり獣医学部は門前払いを喰らっている形だ。

これは本コラムで指摘したとおり、「不合理、違法」ともいえる。認可をするかどうかは役所の裁量ではあるが、申請さえも受け付けないとは普通はあり得ないものだ。

普通の役所であれば、この告示を改正して、認可基準についてよりはっきりと書くだろう。文科省に対しても、当然すったもんだしたのだが、埒があかない。そこで、2015年6月の石破4条件がでてきた。このポイントは、2016年3月までに文科省が需要予測について検討する必要があるという期限が切られていることだ。

ところが、延々と9月まで交渉が行われた挙句、そこで時間切れとなった。獣医師会の意向もあり、2017年1月に文科省告示の特例が作られた(http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/pdf/170104_kokka-monka.pdf)。その内容は、獣医学部に関して、18年度には一校の申請は受け付けるというものだ。

要するに、新設認可の申請を受け付けるかどうかを延々2~3年も議論していたわけだ。そもそも受け付けないという文科省告示にかなりの不合理があるわけで、この特例の結論に誰が異論を挟めるのだろうか。

なお、この特例は、あくまで「申請できる」ということであって、これで獣医学部新設が認可を得ることにはならない。これは文科省内で別に検討されるべきことだ。

安倍首相が「もっと新設できるようにする」といえば、それをマスコミは叩くが、文科省告示の特例は19年度以降白紙であり、そもそも文科省告示そのものを改正するということを示しているのであれば、何も問題のない発言だ。文科省告示もその特例も読まずに批判ばかりするマスコミの悪しき体質がここでも見られたのである。

前述の通り、文科省告示の特例では、申請できるのは1校だけと限定されている。この限定を問題視する向きもあり、10日の閉会中審査ではこれも質疑の対象になるだろう。その中で、18年度に限った今の特例では、さしたる実害がないことも明らかになるはずだ。が、はたしてこれらのことをマスコミは正しく報道できるかどうかのほうが、筆者には問題のように思える。

ともあれ、安倍政権の支持率が落ちているのは事実だ。かといって、民進党の支持は増していない。都民ファーストの国政進出にも疑問符がついている。支持なしが大きくなっているので、国民の不満のマグマが大きくなっているようだ。

そこで本コラムでは、平成以降、つまりバブル崩壊後の政権と経済パフォーマンスの関係を調べて、ポスト安倍政権になり得るものがあるのかないのか、を検討してみよう。

歴史を振り返れば分かること

経済パフォーマンスをはかる際に、どんな指数や指標を選ぶかは重要であるが、筆者は雇用こそ国の政策の基本と考えているので、雇用として就業者数をあげてみたい。

平成以降の政権の寿命をみてみると、小泉政権と第二次安倍政権だけが長期政権で、その他は1、2年でつぶれた短命政権であった。この二つの長期政権は、短命政権と比較して、デフレこそ悪であると規定して、日銀人事をうまく使い、金融緩和をやり、雇用をよくした点に特徴がある。

筆者はこの二つの政権の近くで、その経済運営をみてきた。もっとも、小泉政権では金融政策は前面に出してはおらず、竹中平蔵・経済財政相がマクロ経済運営の中でやっていた。一方、安倍政権(第二次)では、アベノミクスの3本の矢でわかるように金融政策が前面にでている。筆者の知るかぎり、安倍政権は戦後史で金融政策の重要性を理解した唯一の首相が率いる政権である。

なぜ金融政策が重要かといえば、金融政策は雇用を改善する必要条件であるからだ。ただ、マクロ経済政策において、金融政策とならぶもう一つの財政政策も、雇用では重要な役割を果たす

実は、雇用が良かったのは、平成以降の政権では橋本龍太郎政権(前半)、小泉政権(後半)、安倍政権しかない。橋本政権は大型公共投資を実施したことで出足がよかったが、1997年4月からの消費増税でその成果がぶっ飛んだ。

一方、小泉政権は発足当初から消費増税はやらないと宣言し持ちこたえ、安倍政権は2014年4月からの消費増税で一度失敗したが強力な金融緩和で持ちこたえ、2回目の失敗はしていない。

なお、マクロ経済政策を行う上で、長期政権は、財務省管理と日銀人事もうまくやったことに共通点がある財務省のコントロールについて、小泉政権では、表だって公務員改革・天下り規制を行わなかったが、郵政民営化とともに政策金融改革も行い、政策金融機関の整理統合を実施したことで事実上の天下り規制にもなった。安倍政権では、公務員改革基本法などで天下り規制をし、内閣人事局を作ることでにらみを利かせた。

日銀人事に関しては、小泉政権、安倍政権は他の政権よりうまかった。特に、安倍政権では首相が先頭にたって日銀人事を主導している。

以上を踏まえて、「安倍辞めろ」という意見について、経済面から検討してみよう。

石破氏の弱点

「安倍辞めろ」の最も現実的なシナリオはなにか。まず、当面国政選挙が行われることはないだろう。となれば、政権支持率下落とともに、党内で安倍おろしの動きが出始める可能性がある。

自民党国会議員衆議院287人、参議院122人の計409人であるが、党内の勢力図は、細田派96人、額賀派55人、麻生派59人、二階派43人、岸田派46人、谷垣派20人、石破派19人、石原派14人などという状況だ。

細田派、麻生派二階派を取り込めば、数の上で政局はおきにくい。都議選直後、安倍首相が、麻生副総理、菅官房長官、甘利前経済再生相と会談したのは、党内体制を固めるためだ。もちろん、政治の一寸先は闇だから、何が起こるかわからないが。

自民党内で安倍政権に反対する人たちの中では、石破茂・前地方創生相が筆頭格だろう。経済政策では「反アベノミクス」を鮮明にしている。自民党内の反アベノミクス勉強会があり、財務省OBの野田毅・前党税制調査会長が代表発起人を務めるこの勉強会には、石破氏も参加している。6月15日に開かれた2回目の会合の後、石破氏は「原油安と円安に頼る経済政策であってはならない」とアベノミクスを牽制したという。

アベノミクスは、基本は「第1の矢」の金融政策によって失業率を下げる政策なので、原油安と円安に頼るわけではない。石破氏は全く的外れのことを言っているわけだ。それもそのはずで、その勉強会に講師として来たエコノミストは、「金融緩和するとハイパーインフレになる」などと論じていた人で、現実は予想と全く異なる動きとなった。

別の講師には「消費増税しないと国債が暴落する」と主張していたエコノミストもいたが、これも実状とは大きく異なる。的外れの政治家と的外れのエコノミストで、類は友を呼んでいる状況というべきだろうか。

石破氏がマスコミに多く露出するのは、政局を仕掛ける者やそれを煽るマスコミがいるからだ。ただし、石破氏を支持するグループは、がぜん人数が少ない。今の石破氏の仕掛けがうまくいくかどうかは、小池旋風を取り込めるかどうかにかかっているのだろう。

この小池氏の追い風がなければ、石破氏は大きな流れをつかみにくい。というのは、政権奪取のカギを握るのは経済政策になることが多いが、石破氏は反アベノミクスという立場を取っているからだ

マスメディアが言わないからこそ

もし石破氏が政権を握れば、マクロ経済政策では反アベノミクスの政策を採るので、具体的には金融引き締めと財政緊縮路線に動くことになるだろう。特に、2019年10月に予定されている10%への消費増税については、予定通りの増税実施を主張すると思われる。

その経済政策では、雇用は悪くなる。また、デフレに逆戻りしてしまい、失われた20年の再来となりかねない。仮に石破氏が政権をとっても、最近の政権の長さと経済パフォーマンスが関係していることを考える限り、短命政権に終わることはほぼ確実であろう。

安倍政権の立て直しには時間がかかるだろうが、加計問題で10日の閉会中審査に続き、G20に出席した安倍首相が、帰国以降も国会で説明するだろう。その後8月上旬の内閣改造によって、秋の臨時国会に備えるだろう。

臨時国会では何より経済政策が重視されるのであり、雇用の確保のみならず賃金上昇を確実に進めるべきである。でなければ、支持政党なしの有権者の大きな不満を受け止められないで、潜在的な不安定要因を抱えたままの政権運営を強いられることになる。

ついでに、冒頭の加計問題は些細な話だが、戦後の政治史の中ではマイルストーンとなるかも知れない。

バブル崩壊以降、マクロ経済とミクロ経済でまともな経済政策が指向されてきた。マクロ経済政策ではそれをうまくやった小泉政権と安倍政権が長期政権になった。ミクロ経済政策では、人為的な市場管理から市場ベースの規制緩和、特に許認可での経済的な需給調整条項はほぼ撤廃された。官僚は将来需給見通しができないのがその理由である。その中で残った数少ないモノが、冒頭の文科省告示である。

長期政権では、財務省のみならず官僚管理もうまくやっている。それは、規制緩和と表裏一体のものだ。許認可を背景とする天下りは徐々に縮小されている。その中で、今回の加計問題は、前川氏を通じて、文科省の許認可と天下りの関係を世間に広く知らしめたと筆者は思っている。そして、その前時代性も知らしめたはずである。

こうした話は、マスコミ報道をだけを見ていると、わからないだろう。だから、何度でもいうのだ。

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