原理講論を読む

日常生活の中で 考える糸口を求めて

選択の自由・結果の平等のいずれの価値を礎に国を造っていくのか? それが問題

今年は憲法を改正する年になるかもしれない。

憲法は国の骨格である。

われわれは日本という国をどのような国にしたいのだろうか?

 

私たちはそれぞれ意識的にせよ無意識的にいせよ個人の価値観をもっていて、それによって生活上必要となる判断を手に入るだけの情報を精査して決して実行に移している。

同様に国家もある価値観によって国内情勢や国際情勢に鑑み、判断を下し環境の変化に対応を強いられている。

その国家の価値観とは、われわれ一般の国民の手の届く話では、具体的には「自由」と「平等」というある種両立が非常に難しい問題に対して、われわれがどのような態度を取るかに関わってくると思われる。

「自由」というのは「選択の自由」のことであり、「平等」というには、「結果の平等」のことであるが、この「結果の平等」に対する概念では「機会の平等」がよく取り上げられる。こちらの方は、「選択の自由」に密接に関係していて「機会の平等」が保証されていればこそ、「選択の自由」の実現が後押しされ促進されるというわけである。

 

さて、最近子供向け「自由の国 平等の国」という本を読んでみた。

小川仁志という哲学者の著作である。

 

自由の国 平等の国

自由の国 平等の国

 

 

この本は、3つのパートからなっている。

メインは物語で、小学4年生以上を読者対象にしていて平易な童話のような、あるいは名作小説を児童向けに簡単に書き直したようなレベルのものである。

一体、人はどのような価値観の国に住むことができれば幸せになれるのか?

という問いかけを、昔は一つであった国の中の人々に、自由を重んじる人と平等を重んじる人が顕著に現れて2つの国に分断されてしまい、今ではその2つの国の境界には、高い壁がつくられている。

自由の国に住んでいた女の子ベルと平等の国に住む女の子クウが、ひょんなことから入れ替わりお互いに相手の国に三日間住んで戻ってくるのだが、そこで「自由」や「平等」が具現化した有様を街の中で見かけて、今まで何も疑問を抱かなかった価値観について思いを巡らす。

さあ、この二人によってどう物語が展開するかはお楽しみである。

 

二つ目のパートは、著者が「少し大人になった君へ 〜「自由」と「平等」について考えるためのヒント〜」と題して「自由」と「平等」についての社会思想史の流れを平易に説明している。

これらの2つの価値観が人間が幸福を追求する中でどのように模索され、現代社会に繋がってわれわれの日常生活と密接な関係にあることを明らかにしている。

そこには、トマ・ピケティにもさらりと触れられている。

ギリシャ哲学の自由人と奴隷の思想から、ジョン・ミルの「自由論」、トマス・ホッブスの「自然状態」や「万人の万人に対する闘争」という表現、社会契約やルソー、さらにヘーゲルまで名前が出てくる。

勿論現代についても要所をおさえ、同じく「新自由主義」と日本では訳されているニュー・リベラリズムとネオ・リベラリズムの違いの説明には、ジョン・ロールズの「正義論」に代表される自由の追求に社会福祉と公正の視点が現れたことにも言及している。

こう言うと名前を聞いただけで後ずさりしそうだが、あくまで必要最低限に触れて、社会思想の流れがどのように今日の状況をもたらしたのかという手助けとして書かれていることは貴重だと思う。

おなじみのハイエクフリードマンも登場し、果ては現代アメリカの共和党支持者の銃所持賛成や公的医療保険制度の反対が自由や所有権にも関わってくることを語っている。

 

勿論、「平等」についてもセネカからサン・シモン、フーリエオーウェンマルクスが出て来て思想の経緯を説いている。

 

さて、3つめのパートは「小説をより楽しみたい人のために 〜隠された秘密〜」と題してストーリーの中に、我々現代人が抱える問題を組み込んでいることを明かしている。「公共施設」「最小国家論」「尊厳死」「医療保険」「生殖医療」「奈落の底に落ちる権利」などである。

 

つまり子供向けの本ではあるが中高生はおろか、大人にも充分我が国の国家像を考えさせる契機と材料を提起してくれている。

 

もう一つ別のことも書こうと思っていたが、長くなったのでこの辺にしておこうと思う。

お子様と家族で読まれてはいかがだろうか?

 

 

 


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