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イージス護衛艦「あたご」が弾道ミサイル迎撃実験に成功したことを伝える記事

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海自艦「あたご」弾道ミサイル迎撃試験に成功 実際に撃ち落とせること以上の意義とは | 乗りものニュース より引用

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海自護衛艦「あたご」が弾道ミサイルの迎撃試験に成功しました。このことは実際に撃ち落とすことができるという確認ができた以上に、大きな意義を持ちます。

日本を守る「BMD」とは?

 自衛隊が、西日本での台風や北海道での地震による被害と連日戦っていることは報道などによってご存知の方も多いでしょう。しかしその一方で、日本時間の2018年9月12日(水)午後5時37分、日本から遠く離れた太平洋上、ハワイ沖合において海上自衛隊護衛艦「あたご」も、日本の将来にとって重要な戦いに挑んでいました。それが、BMD(弾道ミサイル防衛)能力を確認するための模擬弾道ミサイル標的迎撃試験です。

 結果は、見事に迎撃成功でした。これにより、日本は弾道ミサイルの脅威に対してより一層確実に対抗していくことができるようになるのみならず、それ以上の意義を見出すことができたと言えます。

 そもそもBMDとは、自国に迫りくる弾道ミサイルを撃ち落とす仕組みのことで、おおまかには、弾道ミサイルの発射や飛翔を探知、追跡するために宇宙や地上に配備されたレーダーなどのセンサーと、海上や地上に配備される迎撃システムによって構成されています。

 日本の場合、各地に設置されている航空自衛隊のレーダーサイトがセンサーとなり、海上に配備されるイージス艦と地上に配備されるPAC-3が迎撃システムとなります。また、これにアメリカ軍が保有する衛星やレーダー、さらに横須賀などに配備されているイージス艦も加わって、日本に迫りくる弾道ミサイルを迎撃する態勢が敷かれています。

 このなかでも、海上に配備されるイージス艦はBMDにとって非常に重要な存在です。イージス艦は、搭載する高性能なレーダーによって弾道ミサイルを非常に遠距離から探知することができ、また、弾道ミサイルを迎撃するために搭載されているミサイルであるSM-3の1000km以上という長大な射程によって、広大な範囲を防衛することができます。

 

「あたご」が挑んだ難関試験「JFTM-5」

 今回「あたご」が挑んだ試験、正確には「JFTM-5(Japan Flight Test Mission 5)」と呼ばれるこの試験は、発射された弾道ミサイルを「あたご」が探知、追跡してSM-3により迎撃するという一連のプロセスを実際に行うという内容です。

 

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「平成30年版防衛白書」より、弾道ミサイル迎撃のイメージ(画像:防衛省自衛隊)。

 

 ひとことに「弾道ミサイルを迎撃する」といっても、非常に速い速度で飛翔する小さな目標を正確に射抜くというのは、非常に難しいことです。それをあらわすように、BMDについては「ピストルの弾丸をピストルの弾丸で撃ち落とす」というたとえ方がなされます。より身近なものでいえば、「野球のピッチャーが投げた剛速球に同じく野球のボールを当てる」という風になるかもしれません。そして、それを実際に行うのが、今回行われた試験というわけです。

 この試験は、「あたご」が弾道ミサイルを追跡し、迎撃することができるというBMD能力を証明するための実証試験で、この試験に合格することによって、「あたご」は堂々とBMD能力を持ったといえるようになるわけです。

 それだけ難しい試験であるため、ぶっつけ本番というわけにはいきません。この試験に備えて、「あたご」の乗員は弾道ミサイルの探知や迎撃の流れを、実際の情況を模擬しながらイージス艦の内部で繰り返しシミュレーションします。そしてその結果、今回、見事弾道ミサイル標的の迎撃に成功したわけです。決してまぐれやたまたまということでも、ましてや試験内容が簡単だったというわけでもありません。

「あたご」がBMD能力をもつ意義とは

 それでは、今回の試験で確認された「あたご」のBMD能力は、日本にとってどのような意義があるのでしょうか。

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海上自衛隊護衛艦「あたご」(画像:海上自衛隊)。

 

 まず、BMD能力を備えたイージス艦が増勢したことにより得られるさまざまなメリットが挙げられます。これまで海上自衛隊に存在するBMD能力を備え、かつその能力を実証したイージス艦は4隻の「こんごう型」のみでした。しかし、この隻数ではいつ発射されるかわからない弾道ミサイルに対する365日の常時警戒実施が困難であることが、ここ最近までの北朝鮮弾道ミサイル発射に対する警戒の実施によって明らかになりました。どんなに高性能であろうと、イージス艦もフネであり、洋上でずっと任務に就くことはできません。一度任務に就けば、その後港や基地に戻って修理や補給をする必要があり、また乗員の疲労という問題も出てきます。そのため、BMD任務を実施できるイージス艦が増えれば、その分警戒を行うイージス艦1隻当たりの負担は軽くなり、従来よりも柔軟な警戒実施が可能となります。さらに、有事に際して実際に弾道ミサイルが発射された場合、BMD任務に対応可能なイージス艦が多ければ多いほど、弾道ミサイルを迎撃できる確率や防衛の密度は当然高まることになります。つまり、日本のBMD態勢に「あたご」が加わることで、日本の安全がより確実なものに近づくこととなります。

 加えて、今回の試験成功によって、日本の弾道ミサイル迎撃能力が確かなものであることを、世界に向けてアピールできたことも重要でしょう。これまで日本は「こんごう型」4隻による弾道ミサイル迎撃試験を計4回(JFTM1から同4)実施し、うち3回迎撃に成功しています。今回の結果も加えれば5回中4回、つまり80%の確率で弾道ミサイルを迎撃できたことになります。日本のBMD能力の高さを十分に示す数字でしょう。これはつまり、もし、どこかの国が日本に弾道ミサイルを発射しようと考えた場合、そこに立ちはだかる壁が非常に高いということを意味し、それによって相手に弾道ミサイルの発射を思いとどまらせることができるかもしれません。

 つまり今回の「あたご」の試験成功は、実際にBMD能力が確認できたという意味に加え、日本のBMD能力をアピールできたことによって、日本の抑止力向上につながったものと考えられます。

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関連記事もあります。

 

イージス護衛艦「あたご」がハワイ沖で弾道ミサイル迎撃テストに成功(JSF) - 個人 - Yahoo!ニュース より引用

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 「あたご」型のBMD対応改修が終わったあとには新型イージス護衛艦「まや」型2隻とイージスアショア2基が加わる予定で、数年後には日本のイージスBMD対応ユニットは合計10と現在の2倍の数になります。「まや」型とイージスアショアはどちらも建造当初よりBMDに対応済みで新型迎撃ミサイル「SM-3ブロック2A」を搭載する予定です。

  • 「こんごう」型4隻・・・SM-3ブロック1A
  • 「あたご」型2隻・・・SM-3ブロック1B、SM-3ブロック2A(限定運用)
  • 「まや」型2隻・・・SM-3ブロック2A
  • イージスアショア2基・・・SM-3ブロック2A

 なおSM-3ブロック1Aは既に生産を終了し現行型は小改良型のSM-3ブロック1Bになるので「あたご」型は現在これを購入して搭載していますが、平成30年度防衛白書によると「あたご」型には今後更なる改修を施しSM-3ブロック2Aが発射できるようになる予定とあります。ただし「あたご」型には「まや」型で予定されているフルスペックの能力ではなく、エンゲージ・オン・リモート(遠隔交戦)が出来ない限定された改修になる予定です。(エンゲージ・オン・リモートについては「前方展開レーダーの役割が重要な弾道ミサイル防衛システム」で解説しているのでこちらをご覧ください。)

 これまで「こんごう」型4隻には1隻当たり9発のSM-3ブロック1Aが購入されて1発を各艦がハワイ沖の試験で射耗し、8発ずつが残って4隻合計32発が装備されています。「あたご」型のSM-3ブロック1Bや「まや」型のSM-3ブロック2Aの割り当て数は判明していませんが、仮に「こんごう」型と同様とした場合は海上自衛隊保有する予定のイージス艦合計8隻8発ずつで64発のSM-3が用意されます。またイージスアショアには配備予定地の秋田県への説明資料で発射機は1施設あたり24発分とあり、山口県配備と併せて2基合計48発となります。これで日本配備イージスBMD合計10ユニットで112発のSM-3が用意されます。さらにこれに加えて横須賀に配備されているアメリカ海軍第7艦隊イージス艦も加わる上に、有事の際にはハワイやアメリカ本土から増援のイージス艦がやって来るので、日本防衛に使用可能なSM-3迎撃ミサイルは数百発が用意されると推定できます。

【関連記事】弾道ミサイル防衛「シュート・トゥ・シュートとシュート・ルック・シュート」

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