原理講論を読む

日常生活の中で 考える糸口を求めて

韓半島情勢のおさらい

北朝鮮の「瀬取り」、米豪加軍が嘉手納基地拠点に監視へ(朝日新聞デジタル) - Yahoo!ニュース より引用

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 外務、防衛両省は28日、北朝鮮が洋上で違法に物資を積み替える「瀬取り」を監視するため、オーストラリア軍とカナダ軍の哨戒機が沖縄県の米軍嘉手納基地を拠点に警戒監視活動を行うと発表した。活動に加わる米軍を中心に運用を調整する。米軍以外の各国軍が、在日米軍基地を拠点に活動するのは異例。

 北朝鮮に対し、核・ミサイル廃棄に向けた具体的な行動を求めるため、最大限の圧力を維持する狙いがある。準備が整い次第、速やかに運用を始めるという。

 瀬取り対策をめぐっては、海上自衛隊海上保安庁東シナ海日本海で警戒監視を実施。今後、日米豪、カナダの各国が情報共有し、警戒監視を強める。

 両省の発表によると、豪州、カナダ両軍が今回、在日米軍基地を拠点に活動する根拠は、朝鮮戦争に伴う国連軍地位協定に基づくもの。協定の締結国に豪州とカナダが含まれており、協定では、締結国は在日米軍基地を使用できるとしている。外務省によると、瀬取り対策を理由に、各国軍が在日米軍基地を拠点に活動するのは初めてという。

 また、英国政府も瀬取りの共同監視に加わる意向を示しており、現在、海自と日本周辺海域で共同訓練中の英国軍の艦船も参加するとみられる。(藤原慎一

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第三次世界大戦は、思想戦において日本で共産主義が敗北することによって武力戦の道を逃れてきた。

勝共理論によって共産主義の間違いが天下に曝け出されたのであった。

共産主義国家には、蘇生的ソ連、長成的中共、完成的北朝鮮が代表格であった。

したがって、ソ連崩壊以降は中共北朝鮮が上手に崩壊してこそ、世界は平和の時の訪れを迎えることになる。

 

オーストラリア、カナダの他にイギリスも動きを見せている。

 

英揚陸艦「アルビオン」北東アジア派遣のねらい 英海兵隊は何しに地球の裏側へ? | ニコニコニュース より引用

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イギリス海軍揚陸艦アルビオン」が2018年4月、北東アジアに展開しました。そもそもどのような艦で、そして今回の派遣目的はどこにあるのでしょうか。

海兵隊の移動基地! 英揚陸艦アルビオン

2018年4月11日(水)、イギリスのウィリアムソン国防大臣は同国海軍の揚陸艦アルビオン」が北東アジアに展開したことを発表しました。この「アルビオン」とは一体どのような艦艇で、その展開にはどのような意味があるのでしょうか。

アルビオン」は、敵地への上陸作戦を専門とする海兵隊を乗せて移動し、彼らを洋上から目的地に展開させることを任務とするドック型揚陸艦という種類の艦艇です。そのため全長176m、幅28.9mという巨大な船体のなかには、船を動かすために必要な300名の乗員に加えて、256名の海兵隊員と戦車や装甲車などの各種車両や資材などを搭載することができます。

また艦尾には海兵隊員を海岸に上陸させるための上陸用舟艇4隻を収容するドックを備えていて、船体を後方に少し傾けてドックに海水を注水し、艦内から直接上陸用舟艇を発進させることができます。ヘリコプターを運用するスペースもあり、海と空から海兵隊員を送り込むことができるのです。

こうした能力を備える「アルビオン」は、まさに海兵隊の移動基地ともいうべき存在です。イギリス海軍はこのドック型揚陸艦を、「アルビオン」とその姉妹艦「ブルワーク」の計2隻保有しています。

アルビオン」の派遣目的とは?

では、この「アルビオン」がなぜ北東アジアに展開することになったのでしょうか。これには以下のような理由があると考えられます。

まずは、他国との連携強化です。「アルビオン」は北東アジアに派遣されるあいだに、日本を含む様々な国との共同訓練を行う予定です。こうした訓練を通じてイギリスと北東アジアの国々との連携を強化することを目的としていると思われます。あとで詳しく説明しますが、イギリスは現在アジア太平洋地域での存在感を強めようとしています。今回の「アルビオン」派遣は、その大きな助けとなるでしょう。

さらに2018年4月現在の、北朝鮮情勢との関連も指摘できます。現在国際社会は北朝鮮による核/ミサイル開発をやめさせるために、同国に対する経済制裁を強化しています。しかしこうした制裁から逃れるために、北朝鮮は洋上で他国のタンカーや貨物船から、制裁対象となっている石油などの物資を密かに受け取る「瀬取り」という方法を用いていることが明らかになっています。そこで、こうした瀬取りを取り締まることで北朝鮮の核/ミサイル開発をやめさせるための国際的な努力を補完するといった目的もあるのではないかと思われます。

そもそもイギリスは、1950(昭和25)年に韓国と北朝鮮との間で勃発した朝鮮戦争において、韓国を支援するために組織された朝鮮国連軍の一員としてアメリカなどと共に参戦し、1953(昭和28)年の休戦以降も朝鮮国連軍司令部に要員を派遣しています。こうした背景から、イギリスはほかの欧州諸国のように北朝鮮情勢を遠い他国の話とは捉えていないのです。

イギリス海軍は「アルビオン」に加えて、さらに2隻の戦闘艦「サザーランド」および「アーガイル」を2018年内に北東アジアへ派遣することを決定し、すでにこの内の「サザーランド」は日本の横須賀に到着して海上自衛隊との訓練も予定されています。また「アーガイル」も、2018年の12月に日本を訪問する予定です。

イギリスのアジア太平洋地域に対するまなざし

実は、1年のあいだにこうして3隻ものイギリス海軍艦艇がこのアジア太平洋地域に展開するというのは非常に稀なことです。また、2020年代から本格的に運用が開始される最新鋭の空母「クイーンエリザベス」も、アジア太平洋地域におけるパトロール活動を行うとイギリスのジョンソン外相が以前発言しています。なぜイギリス海軍はこのように急速にアジア太平洋地域への艦艇派遣を強化し始めたのでしょうか。これにはおもに以下のふたつの理由が考えられます。

ひとつは、近年の中国による南シナ海における海洋進出への対応です。中国はその強大な経済力と軍事力を背景に、南シナ海における人工島の造成や軍事的活動の強化などによって、周辺国との軋轢(あつれき)を生じさせています。

こうした中国による活動は、イギリスにとっても無関係ではありません。南シナ海に面しているブルネイやマレーシア、シンガポールといった国々はイギリスと安全保障上の協力関係にあり、特にブルネイには少数ながら数百名規模のイギリス軍部隊が駐留しています。また、南シナ海は世界中の大型タンカーや貨物船が利用する海の道「シーレーン」となっていて、ここで何か問題が発生すれば世界経済に大きな影響を及ぼしてしまいます。こうした背景から、このような中国の強硬な姿勢に対して、イギリスはアメリカや日本と歩調を合わせて対抗していく考えを示しているのです。実際に、先に述べた「アルビオン」「サザーランド」「アーガイル」、さらに空母「クイーンエリザベス」は、中国に対抗するような形での南シナ海における活動の実施が予定されているとの報道もあります。

もうひとつは、アジアにおけるイギリス製兵器の輸出拡大です。近年アジアは各国の軍備拡張が盛んで、兵器輸出のための大きな市場になっています。そこでイギリスはこうした国々への兵器輸出を視野に、アジア太平洋地域に実際に軍艦や戦闘機を派遣することで自国の軍事的存在感を示し、こうした軍備拡張を図る各国に対して自国兵器のアピールを行っていると考えられます。特に島国が多いアジア太平洋地域では、大小さまざまな大きさの艦艇から、そこに搭載する装備品に至るまで幅広い海軍関連の兵器需要が期待できるため、今回の「アルビオン」のようなイギリス海軍艦艇の派遣は非常に大きな意味を持つことになるでしょう。

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自由主義陣営と共産主義陣営の韓半島での闘いは、いったん休止するかに見えた、

この朝鮮半島の闘いの延長に起こってきたのがベトナム戦争であった。

 

ベトナム共産主義陣営に依って統一され、今日では敗戦後、恩讐であったアメリカとの関係改善に依って奇跡の復興を遂げた日本に見習って、杓子定規な外交を捨て自由主義陣営に近づいている。

 

     (3) 第二次世界大戦における天の側国家とサタン側国家
 第二次世界大戦は、民主主義によって結託した米、英、仏の天の側国家と、全体主義によって結託した独、日、伊のサタン側国家との対戦であった。それでは、どうして前者は天の側であり後者はサタン側なのであろうか。前者はアベル型の人生観を中心として、復帰摂理の最終段階の政治理念として立てられた民主主義を根本理念とする国家であるから天の側である。後者はその政治理念がカイン型の人生観を中心としており、反民主主義的な全体主義国家であるゆえにサタン側である。また、前者はキリスト教を支持する国であり、後者は反キリスト教的な立場に立った国家であるので、各々天の側とサタン側とに区別されたのである。
 その内容をもう少し明らかにしてみよう。当時代において枢軸国の中心であったドイツは、人間の基本的な自由を剥奪し、その思想統制は宗教分野にまで及んだのである。すなわち、ヒットラーローマ法王とは別途に協約を結び、厳重なゲルマンの原始的宗教思想を導入して民族的宗教を創設したのち、全国の主教のもとにすべての新教を統轄しようとしたので、新教はもちろん、旧教までもこれに強力な反対運動をしたのである。そればかりでなく、ヒットラーは六〇〇万のユダヤ人を虐殺した。また大戦当時の日本の軍閥は、韓国の各教会に神道の神棚を強制的に設置させ、キリスト教信徒たちを強制的に引っ張りだして日本の神社に参拝させ、これに応じない信徒たちを投獄、殺傷した。さらに、イタリアはサタン側に立ったドイツと一つになって枢軸国家となり、ムッソリーニは国民思想を統合するために、故意に旧教を国教とすることによって、神の復帰摂理に逆行する道を歩いた。これらのことを根拠として、当時の独、日、伊は共にサタン側の国家であると規定されるのである。

(4) 天の側とサタン側が各々三大国に対立した理由
 詳細は次の項で論述するが、第二次世界大戦は、イエスを中心として成し遂げようとしながらできなかった神の三大祝福を復帰する長成的な蕩減条件を、世界的に探し立てるために起こったのである。ところが、元来神の三大祝福が完成されなかったのは、アダム、エバ、天使長の三存在が堕落してしまったからであった。ゆえに、三大祝福の復帰にも、それらを蕩減復帰するための三存在の関与が必要であったので、後のアダムとして来られたイエスと、エバの神性をもって来られた聖霊(前編第七章第四節(一))と天使の三存在が一つになって初めて霊的救いの摂理を成し遂げ、神の三大祝福を霊的に復帰することができたのである。したがって、イエスを中心とする三大祝福を復帰するための、長成的な蕩減条件を、世界的に立てるべき第二次世界大戦も、アダム、エバ、天使を象徴する天の側の国家が中心となり、同一の型を備えたサタン側の国家と戦って勝利し、それを蕩減復帰する条件を立てなければならない。ゆえに、これを知っているサタンは、この摂理に先立って、サタン側のアダム、エバ、天使型の国家を先に団結させ、天の側のそのような型の国々に向かって攻勢をかけさせたのである。
 アメリカは男性国家として天の側のアダムを、イギリスは女性国家として天の側のエバを、フランスは中間的な国家として天の側の天使長を各々象徴し、ドイツは男性国家としてサタン側のアダムを、日本は女性国家としてサタン側のエバを、イタリアは中間的な国家としてサタン側の天使長を各々象徴したのである。第一次世界大戦においての米、英、仏と、ドイツ、オーストリア、トルコも、やはり各々このような類型に編成された、蘇生的な象徴型としての天の側とサタン側の国々であったのである。
 それでは、第二次大戦において、サタン側の国家であるソ連はなぜ天の側に加担するようになったのだろうか。法王を中心とする西欧の中世社会が復帰摂理の目的を達成できない立場に立ったとき、神はこれをカインとアベルの二つの型の人生観の世界に分立して、共産と民主の二つの世界を成し遂げていく摂理をなさらなければならなくなっていた。ところが、封建社会専制君主社会や帝国主義社会は、みなこのような摂理を成し遂げようとする天の側の行く道を妨げると同時に、サタン側が行く究極の道をも遮ることになるので、天の側とサタン側とが手を組んでそれらの社会を打破するようになったのである。復帰摂理は時代の流れに従って発展する。したがって、神の復帰摂理を先に達成していく非原理世界も、時代の流れに従ってサタンの目的を指向し発展せざるを得なくなる。ゆえに、サタン世界においても、古びた社会は進歩的な社会をつくるのに障害となるので、それを清算する戦いをするようになるのである。
 このような歴史的な趨勢からして、第二次世界大戦における全体主義は、天の側においてそうであるように、サタン側が行く道においてもまた、やはり障害となったのである。しかるに神は、サタン側が共産主義世界をつくることを、蕩減復帰摂理上、一時的にではあっても許容されなければならなかったので、ソ連が天の側国家と協力して全体主義国家を打倒することにより、共産世界が速やかにそれなりの結実をするようにされたのである。しかし第二次世界大戦が終わるや否や、民主と共産の二つの世界は、水と油のように、はっきり分かれるようになったのであった。

原理講論

 

 プーチン大統領共産主義イデオロギー無き後のロシアをどのようにして統一維持するのかに苦心した。

共産主義に替わる基礎あるいは脊髄にあたるものはロシアにとって何であろうかと考えた末に、それはロシア正教の他にはないと考えたようだ。

もし統一を理由ずける積極的な根拠がなければ、ロシアは幾つもの国家に歯止めなく分断していったことだろう。

現在はプーチン大統領ロシア正教の重要な集会に顔を出し、協力的である。

 

ロシアは神側に戻ってきた。問題はアメリカの左翼マスコミによるトランプ大統領プーチン大統領の分断工作であった。

これが二度のシリア空爆という代価に依って、トランプ大統領プーチン大統領に訪米を要請する機運をつくった。

二国間の関係が修復された後に六カ国協議が進むことが本当に望ましい。

 

 鈴置高史氏の韓半島情勢の解説は実にわかりやすい。

それというのも、トランプ大統領やその閣僚の発言や北朝鮮の発表する見解などの一次情報を豊富に引用して解説しているからである。

連載中なので時折見てはいかがだろうか?

 

 

4月24日の記事が今までの流れを振り返るのに参考になる。

朝鮮戦争年表は鈴置高史氏の別記事から引用して付け加えている。

 

しょせんは米中の掌で踊る南北朝鮮 (5ページ目):日経ビジネスオンライン

より引用

 

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20日平壌で開催された北朝鮮朝鮮労働党中央委員会第7期第3回総会に出席する金正恩委員長(写真:KCNA/UPI/アフロ)
 
朝鮮戦争年表
1950年
1月12日 米国、アチソン声明を通じ「韓国は防衛線の外側」と示唆
6月25日 北朝鮮軍が38度線を南進し勃発
6月27日 国連安保理北朝鮮への非難決議採択
6月28日 ソウル陥落
7月7日 国連軍結成
9月15日 仁川上陸作戦
9月27日 米海兵第1師団、ソウル奪回
10月2日 中国「米軍が38度線を越えれば参戦」とインドを通じ警告
10月9日 米第1騎兵師団、38度線を越北
10月19日 中国人民志願軍、鴨緑江を渡河
10月26日 韓国第6師団、鴨緑江に到達
12月5日 中朝軍、平壌を奪回
1951年
1月4日 中朝軍、ソウルを奪回
3月15日 韓国第1師団、ソウルを奪回
4月11日 マッカーサー、国連軍総司令官など全ての役職から解任
6月23日 ソ連、休戦協定の締結を提案
7月10日 開城で休戦会談を開始
1953年
1月20日 アイゼンハワー大統領就任
3月5日 スターリン死去
7月27日 休戦協定締結
 
 
北朝鮮の非核化を巡る動き(2018年)
1月1日 金正恩「平昌五輪に参加する」
1月4日 米韓、合同軍事演習の延期決定
2月8日 北朝鮮、建軍節の軍事パレード
2月9日 北朝鮮、平昌五輪に選手団派遣
3月5日 韓国、南北首脳会談開催を発表
3月8日 トランプ、米朝首脳会談を受諾
3月26日 金正恩訪中、習近平と会談
4月1日頃 ポンペオ訪朝、金正恩と会談
4月17―18日 日米首脳会談
4月21日 北朝鮮、核・ミサイル実験の中断と核実験場廃棄を表明
4月27日 南北首脳会談
5月末から6月 米朝首脳会談
米朝首脳会談の後 習近平、訪朝か

前回から読む)

 北朝鮮と韓国が激しく動く。だが、よく見ると米中の掌の上で踊っているに過ぎない。

世界を欺くペテン劇

北朝鮮が核・ミサイル実験の中断を表明しました。

鈴置: 4月20日朝鮮労働党が中央委員会総会を開き採択しました。もちろん、ペテン――世界を欺く偽装平和攻勢です。

 総会ではまず、金正恩キム・ジョンウン)委員長が「我が党の課題について」を報告。討議を経て「決定書」が採択されました。そのうち、核に関連する項目は4つです。

 北朝鮮のサイト「我が民族同士」の「金正恩委員長の指導の下に朝鮮労働党中央委員会第7期第3回総会が行われる」(4月21日、日本語版)から要約して引用します。

  1. 核兵器開発を完了したと宣言する。
  2. ②核実験とICBM(大陸間弾道弾)の発射実験を2018年4月21日以降は中止し、核実験場を廃棄する。
  3. ③世界的な核軍縮のために、核実験の全面中止の国際的な努力に合流する。
  4. ④威嚇されない限り核兵器を絶対に使用しないし、いかなる場合も核兵器・技術を移転しない。

 ②の「核・ミサイル実験の中止」はニュースではありません。米国が対話開始の条件として要求した案件です。北朝鮮は訪朝した韓国特使の口を通じ、すでにその受け入れを表明しています(「『文在寅の仲人口』を危ぶむ韓国の保守」参照)。

 3月6日、青瓦台(韓国大統領府)は「鄭義溶首席特使の訪朝結果 言論発表」で以下のように発表しています。

・対話が続く間は、北側は追加の核実験と弾道ミサイルの試射など戦略的な挑発の再開はしないことを明らかにした。同時に核兵器はもちろん、在来型の兵器も南側に使わないことを確約した。

保有国クラブに入りたい

 ②の「核実験場の廃棄」は完全なペテンです。新たな核実験場を別のところに作るのは容易です。北朝鮮が廃棄すると表明したのは豊渓里(プンゲリ)の実験場と思われますが、相次ぐ核実験で坑道が崩落し、使えなくなったと言われています。廃棄せざるを得ない実験場でしょう。

 前例があります。2008年6月27日、北朝鮮は老朽化した寧辺(ニョンビョン)の原子炉の冷却塔を自ら爆破しました。2006年10月の1回目の核実験で世界のまなざしが厳しくなった後のことです。

 米国務省北朝鮮担当者とともに現場に招待された米CNNや日本のTBS、韓国のMBCなどは、その光景を動画で報じ、北朝鮮が平和路線に転換したかの印象を世界に拡散しました。

 この原子炉はプルトニウムの抽出用でした。北朝鮮核兵器の素材をプルトニウムからウラニウムに替えており、この原子炉は不要になったと見る専門家もいます。今回の「核実験場の廃棄」宣言も同じ手口――不要品の廃棄を宣伝に使う――です。

 そもそも今回の「決定書」で北朝鮮は米国に核武装を認めろと迫ったのです。①で「核兵器保有した」と宣言したうえ、③④で核不拡散条約の加盟国と同様に核実験や核の拡散はしないと表明。要は、核保有国の仲間に入れてくれ、と言ったのです。

北朝鮮が譲歩したのかと勘違いしていました。

鈴置:そう思ってしまった人が多い。例えば「NHK NEWS WEB」に載った4月21日の昼のニュースの見出しは「北朝鮮 核実験とICBM発射実験中止 核実験場も廃棄と発表」(4月21日12時01分)。

 この記事も前文でちゃんと「ただ、核保有の立場に変わりはなく、核やICBMの実験を再開する余地も残しています」と指摘しています。が、見出しだけ見ると北朝鮮が改心してまっとうな国になったかと思ってしまいます。

朝鮮半島の春が大股で近づく

北朝鮮は核保有国の仲間に入れろと要求しながら「いい子になった」と宣伝する……。

鈴置:もう、それしか手がないのです。金正恩氏が生き残るには4月27日の南北首脳会談を利用して米国に体制の存続を認めさせるしかない。

 それには韓国の世論を軟化させる必要があります。文在寅(ムン・ジェイン)政権は北朝鮮に好意的――はっきり言えば言いなりです(「米朝首脳会談は本当に開かれるのか」参照)。

 しかし、保守派は北朝鮮のペテンを見抜いています。そこで韓国の世論を手なずけるために「核・ミサイル実験の中止」や「核実験場の廃棄」を言い出したのでしょう。

そんなペテンに引っ掛かるのでしょうか、韓国人は。

鈴置保守政党保守系メディアは「偽装平和攻勢だ」と批判しました。一方、青瓦台(韓国大統領府)は北朝鮮の表明を直ちに歓迎しました。

 これを受け、聯合ニュースは「北朝鮮の自発的な核実験場廃棄に韓・米が歓迎…『朝鮮半島の春』が大股で近づく」(4月21日、韓国語版)と極めて前向きの見出しで報じました。聯合ニュースは文在寅政権寄りの報道ぶりで有名です。

 左派系紙ハンギョレも社説「朝鮮半島の運命がかかる歴史的な首脳会談への期待」(4月22日、韓国語版)で、北朝鮮の表明を手放しで――何の疑いもなく、称賛しました。

 事実がどうであれ、半島の春――平和共存時代の到来を信じたい韓国人も多いのです。首脳会談で南北が「朝鮮戦争終結」を宣言すれば「北朝鮮が核を捨て経済重視に転換すると言いだしたのだから、経済制裁を緩和すべきだ」との声が高まるでしょう。

 ハンギョレの社説は先回りして「北朝鮮の体制を保証すれば、中国やベトナムのように経済開放への道を開いてやれる」「北朝鮮が核から経済へと路線を転換したことにより、経済建設への世界の支援と協力を受ける名分ができた」と書きました。北朝鮮は大笑いしていることでしょう。

「対話のワナ」にはまった金正恩

北朝鮮は米国を交渉相手と見なし、韓国は無視していました。

鈴置金正恩委員長はトランプ(Donald Trump)大統領の仕掛けた「対話のワナ」にはまった。これから脱するには、韓国を踏み台にするしかないのです。

 北朝鮮は「米朝首脳会談に応じる」と韓国を通じ、間接的な形ながら表明してしまった(「『時間稼ぎ』の金正恩に『助け舟』出した文在寅」参照)。

 

 米朝首脳会談の場でトランプ大統領が「直ちに核を廃棄するのかしないのか」と迫るのは間違いありません。

 金正恩委員長が「イエス」と答えれば、トランプ大統領は米国や国連の査察機関をすぐさま送りこんで、本当に核施設が廃棄されたのか確かめると言い出すでしょう。リビアを非核化したやり方です(「米朝首脳会談は本当に開かれるのか」参照)。

 「NO」と答えれば、トランプ大統領は世界に経済制裁を強化するよう呼びかけるでしょうし、空爆など実力行使に出る可能性もある。ある専門家の言葉を借りれば、米朝首脳会談は無条件降伏――「ポツダム宣言」を言い渡す場になるのです。

 だから北朝鮮の「核実験などの中止」宣言というペテンに対しても、トランプ大統領は「歓迎する」とツイートしたのです。

 北朝鮮はいまだ、正式には米朝首脳会談に応じるとは表明していません。ペテンだろうと偽装平和だろうと「ポツダム宣言」通告の場である首脳会談の開催に北朝鮮が前向きの姿勢を示せば、米国が大歓迎するのは当たり前なのです。

会談を拒否すれば……

「究極の2択」を避けるため、北朝鮮は米国との首脳会談に応じないのではありませんか。

鈴置:その際は米国からの圧迫が続きます。トランプ大統領安倍晋三首相との4月17日の会談後に、以下のように語りました。ホワイトハウスのサイトから引用します。

・ It’s possible things won’t go well and we won’t have the meetings, and we’ll just continue to go along this very strong path that we’ve taken. But we will see what happens.

 米朝会談はうまくいかないかもしれないし、開かれないかもしれない。そんな時はこれまで採ってきた強力な方向を続けるだけだ」と言ったのです。

 文在寅政権は、米国から圧迫を受ける金正恩政権を助けるつもりで、結果的にワナにはめてしまったのです。一方、米国からすれば、裏切り者の文在寅政権を使って金正恩氏を対話の場に引き出すことに成功したのです。

 韓国とは別に、米国も独自ルートで北朝鮮に首脳会談を呼びかけていた。ただ、韓国に米朝首脳会談を仲介する形をとらせれば、北朝鮮は応じる可能性が増します。韓国を味方に付けて米国との交渉に臨めると北が考えるからです。

タッグを組んだ米中

米国VS南北朝鮮の構図ですね。

鈴置:より正確に言えば、米中VS南北の構図です。米中はタッグを組んでいるのです。

 「米中が北朝鮮包囲網を作ったな」と関係者が実感したのが2017年12月12日のティラーソン(Rex Tillerson)国務長官(当時)のアトランティック・カウンシルでの演説でした。

 司会者から「『圧力をかけ過ぎると北朝鮮が崩壊し、難民が押しかけて来る』と中国は懸念していないか」と聞かれたティラーソン長官は「その問題に関しては、米中の外相と国防相ら高官協議の場で緊密に連絡を採っている」と答えました。

・And one of the real values of these new high-level dialogues and the diplomatic and strategic dialogue that Secretary Mattis and I chair with our counterparts, and we actually have included Joint Chief of Staff Chairman Dunford, General Dunford, and his counterparts from China as well.

 さらに「中国は難民問題への準備を進めており、上手に処理するだろう」と語った後、驚くべき発言が飛び出したのです。以下です。

・ We have had conversations that if something happened and we had to go across a line, we have given the Chinese assurances we would go back and retreat back to the south of the 38th parallel when whatever the conditions that caused that to happen. That is our commitment we made to them.

 「何かが起きた時、我々(米軍)は南北の軍事境界線を越えざるを得ない。これに関しては中国と話し合い済みであり、我々は状況により38度線の南に引き上げると中国に保証している」と語ったのです。

金正恩後」を堂々と話し合う

米中は金正恩体制崩壊後の軍事行動について密約を交わしているのですね。

鈴置:その通りです。当然、翌日の中国外交部の会見で北朝鮮崩壊後に関する米中密約」に関し質問が出ました。

 何と、中国の報道官はティラーソン発言を否定しませんでした。肯定もしませんでしたが、否定しなかったことで暗に肯定したと受け止められたのです。

 「Foreign Ministry Spokesperson Lu Kang's Regular Press Conference on December 13, 2017」(12月13日、英語)で報道官は以下のように答えました。

・ I have no idea about what was referred to by the US side, but I would like to reiterate that China’s position on the Korean Peninsula nuclear issue remains unequivocal.

 「米国側が言及したことに何の意見もない」と言い放ったのです。これを読んだ北朝鮮はすくみあがったことでしょう。

 米中が「金正恩後」を話し合うのは予想されたことです。米国のランド研究所(Rand Corporation)は米中による北朝鮮の分割占領を研究し、地図まで公表しています(「米中ロがうごめく『金正恩後の北朝鮮』分割案」参照)。

ランド研究所の「北朝鮮2分割占領案」

 しかし、米国の国務長官が堂々と「米中密約」を語り、中国の外交部がそれを事実上、肯定するようになったのです。北朝鮮が米国との首脳会談を受け入れたのも、米中包囲網の締め付けを意識したためと思います。

トランプこそが対話派

ティラーソン演説の「米中密約」は話題になりませんでした。

鈴置:この演説の全く異なる部分が注目されてしまったからです。米国メディアは、トランプ大統領とティラーソン国務長官の対立の証拠として報じました(「米国務長官演説は『ハル・ノート』だ」参照)。

 北朝鮮への強硬策を検討するトランプ大統領に抗し、ティラーソン国務長官が対話を主張している――と、ピンボケの分析をNYT(ニューヨーク・タイムズ)など米国メディアが一斉に開陳したのです。

 その結果、金正恩後に関する米中談合は見過ごされてしまいました。日本の外務省は勘違いして「米国が対話路線に転じたのか」と右往左往しました。

 「転じる」も何も、初めからトランプ政権は対話路線なのです。だからトランプ大統領は韓国から米朝首脳会談を持ちかけられた瞬間、それに乗ったのです。

 4月18日に大統領自らが、ポンペオ(Mike Pompeo)CIA長官の極秘訪朝と金正恩委員長との会談をツイッターで公表したのも対話を熱望する証拠です。

 米国が首脳会談に熱心であるとの姿勢を世界に示せば、北朝鮮は断りにくくなります。トランプ大統領こそが対話派なのです。

 ただし、その対話の目的は譲歩を念頭に置いた話し合いではなく、ハル・ノートあるいはポツダム宣言を突きつけることにあるのですが。

核実験場を確保する人民解放軍

2018年初めに中国が朝鮮半島有事を想定した大規模な軍事演習を実施しました。

鈴置:日経の中沢克二編集委員が「米朝戦争への備え、中国軍が異例の全軍訓練」(1月9日)で報じ、関係者の間で大きな話題になりました。

 1月3日、習近平主席の指揮のもと人民解放軍は全軍が臨戦態勢に入る極めて大規模な訓練を実施しました。中沢克二編集委員は異例の演習の目的を以下のように解説しました。

・米軍が中国の反対を押し切って北朝鮮領内に踏み込むなら、中国は権益確保へ軍を動かす覚悟が要る。
・万一、戦いが始まるなら中国軍は68年前の米軍と同様に、朝鮮半島の西海岸に上陸する手がある。平壌は目の前だ。米軍と直接、戦わないにしろ、平壌付近を押さえれば優位に立てる。
・一方、陸から北朝鮮に踏み込む中国軍には、別の任務がある。中朝国境から北朝鮮に百キロほど入れば、豊渓里の核実験場を含む核関連施設を押さえ込める。

また、「豊渓里」が出てきました。

鈴置トランプ大統領が軍事行動を決意した場合、米海空軍は北朝鮮の核施設を空爆します。ただ、核弾頭の確保と核技術者の拘束は空からはできません。

 陸上部隊を派遣するにせよ、大兵力は送れない。そこで中国人民解放軍との協同が不可欠となるのです。その際には、米中両軍の衝突を避けるため、作戦区域の調整が必要です。

 ティラーソン演説「もっとも重要なことは核兵器の確保だ」「我々は中国とそれをどう実現するか話し合ってきた」と明かしています。

・the most important thing to us would be securing those nuclear weapons they’ve already developed and ensuring that they - that nothing falls into the hands of people we would not want to have it. We’ve had conversations with the Chinese about how might that be done.

在韓米軍の撤収が射程に

米中両軍が朝鮮半島に同時に侵攻するのですね。

鈴置:まだ決まったわけではありません。なお、近未来小説『朝鮮半島201Z年』では中国軍だけが侵攻します。中国は単独で汗をかく代わりに、半島の支配権を米国から認められるのです。

 軍事行動には至らないにせよ、朝鮮半島で構造変化が起きる可能性が極めて高い。米国が北朝鮮への軍事攻撃を覚悟したからです。すると中国も対応措置をとらざるを得ない。

 もともと中国も北朝鮮を見限り始めていた。米国も中国や北朝鮮側になびく韓国との同盟が続くのか、疑問に思っていた。米中は核問題を解決するのを機に、安全保障の枠組みも変更する方向に動いているのです。

 4月17日に安倍首相と会談した後のトランプ大統領の発言が興味深い。「南北首脳会談で朝鮮戦争を(正式に)終結させることができるかもしれない。それを祝福する」と語ったのです。

・South Korea is meeting, and has plans to meet, with North Korea to see if they can end the war. And they have my blessing on that.

 韓国では、文在寅大統領と金正恩委員長が「朝鮮戦争終結した」と宣言すると予想する人が増えている。そして保守派はこれを警戒しています。

 「戦争終結」を南北が宣言すれば、在韓国連軍は存在理由を失う。在韓米軍が国連軍としての資格を失えば、有事の際の在日米軍基地によるバックアップを期待しにくくなります。

 すると米軍が韓国に駐留するのは難しくなって、米韓同盟自体が希薄化します。つまり、終戦宣言は米韓同盟を弱体化する。だから韓国の保守は警戒するのです。

 ところがトランプ大統領はそれに対し「いいね!」と言い出したのです。もう韓国との同盟にこだわってはいないとのサインです。もちろん、習近平主席に向けての意思表示です。

 北朝鮮の核問題が解決したら、中国が望んでいた在韓米軍の撤収や米韓同盟の破棄の方向に動くから、中国も北朝鮮に圧力をかけ続けてね」ということでしょう。

半島は中国の勢力圏に

トランプ大統領は「韓国は中国の一部だった」と語っていました。

鈴置:「習近平主席から中韓関係について聞いた」として「韓国は事実上、中国の一部だった」と、WSJ(ウォールストリート・ジャーナル)との会見で述べたのです(「『韓国は中国の一部だった』と言うトランプ」参照)。

・He then went into the history of China and Korea. Not North Korea, Korea. And you know, you're talking about thousands of years …and many wars. And Korea actually used to be a part of China.

 「WSJ Trump Interview Excerpts: China, North Korea, Ex-Im Bank, Obamacare, Bannon, More」(2017年4月12日)です。

 はっきり言えば「韓国は中国の属国であった」ということです。習近平主席は歴史的な経緯から韓国は中国の勢力圏であると主張し、トランプ大統領習近平主席の主張を公に語ることでそれを受け入れたのです。

 米中の「協同」に対してはもちろん、南北朝鮮も手を組んで動きます。1972年の「南北共同声明」もそうでした。現在、半島で起きている様々の出来事は「米中VS南北」として読み解くと、分かりやすいのです。

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すくし長くなるのでリンクだけでも良いかもしれないが、ついでに鈴置氏によるランド研究所の「北朝鮮2分割占領案」に関係した2017年10月30日の解説も引用して便宜を図ることにした。

米中ロがうごめく「金正恩後の北朝鮮」分割案:日経ビジネスオンライン より引用

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プーチン大統領習近平主席、それぞれの思惑は…(写真:ロイター/アフロ)

前回から読む)

 再び大国の角逐の場となった朝鮮半島を、真田幸光・愛知淑徳大学教授と「金融」から読み解く(司会は坂巻正伸・日経ビジネス副編集長)

「仕切り」始めたロシア

ロシアが朝鮮半島の「仕切り」に動いています。

鈴置:孤立した北朝鮮との関係を強化したうえ、韓国との間を取り持とうとしたり、米朝対話の場を設定したり……。

 ロシアは10月19日からモスクワで核不拡散会議を開き、北朝鮮外務省の崔善姫(チェ・ソンヒ)北米局長を招きました。米国からはシャーマン(Wendy Sherman)元国務次官らが参加しました。

 崔善姫局長は金正恩キム・ジョンウン)委員長の側近と見られるため、この会議が米朝対話の糸口になるかと注目されました。ただ、交渉に向けた動きは確認されていません。

 外交関係者は「ロシアは北朝鮮との仲介役を担うことで国際社会での影響力拡大を狙う」と見ています。日経・電子版「ロシア外交、北朝鮮テコ 南北対話探り影響力演出」(10月17日)などが報じています。

真田 幸光(さなだ・ゆきみつ)
愛知淑徳大学ビジネス学部・研究科教授(研究科長)/1957年東京生まれ。慶応義塾大学法学部卒。81年、東京銀行入行。韓国・延世大学留学を経てソウル、香港に勤務。97年にドレスナー銀行、98年に愛知淑徳大学に移った。97年のアジア通貨危機当時はソウルと東京で活躍。2008年の韓国の通貨危機の際には、97年危機の経験と欧米金融界に豊富な人脈を生かし「米国のスワップだけでウォン売りは止まらない」といち早く見切った。

真田ソ連、ロシアには北朝鮮は領土の一部との意識が根強い。日本の敗戦と同時にソ連軍の傘下にあった金日成(キム・イルソン)を送り込んで北朝鮮という国を作らせたのですから。

 というのにソ連崩壊後、後身のロシアは国力を落とし北朝鮮へのカネや食料を与える余裕を急速に失った。そこに中国が入り込んで、北朝鮮は中国が仕切る国と見なされるに至った。しかし、北朝鮮はロシアの前身たるソ連の勢力圏にあったのです。

6年間、訪中しない金正恩

なぜ、今になってロシアが朝鮮半島で蠢動し始めたのですか?

真田:中国が北朝鮮との関係を悪化させ、半島への影響力を減じたからです。平和的な方法で北朝鮮を説得し、核を放棄させる力が中国にあるとは少なくとも今は、誰も考えないでしょう。そこで満を持して「ロシアの出番」となったのです。

鈴置金正恩政権以降、中朝関係は最悪です。父親の金正日キム・ジョンイル)総書記も中国を信用していませんでしたが、訪中はしました。しかし金正恩委員長は2011年12月に権力を握って6年になりますが、中国へは一度も行っていません。

 金正恩委員長は、叔父の張成沢チャン・ソンテク)が中国をバックに権力を握ろうとしたと考え粛清しました(「北も南も二股外交」参照)。

 異母兄の金正男キム・ジョンナム)も、中国の力を使って自分にとって替わろうとしていると疑って暗殺したと見られます(「弾道弾と暗殺で一気に進む『北爆時計』の針」参照)。金正恩委員長にとって中国は敵なのです。

真田:中国にとっても北朝鮮を支配する「金ファミリー王朝」は困った存在になっています。朝鮮戦争の際は数十万とされる戦死者を出しながら北朝鮮を守った。

 今に至るまで経済的に支えてきましたが、北は中国の面子をつぶすことばかりします。9月3日の6回目の核実験も、中国が主催した新興5カ国(BRICS)首脳会議の初日の出来事でした。

 いざとなれば北朝鮮に兵を送り、自分の言うことを聞く政権を樹立するでしょう。近未来小説『朝鮮半島201Z年』でイメージされたシナリオにも似て。

国連軍の名分で進駐

あの小説には真田先生と似た人も登場しました。さて、中国に派兵の名分はあるのですか?

真田:いくらでもできます。中国には200万人の朝鮮族が住んでいます。彼らも国籍は中国人。「北朝鮮で圧政に苦しむ中国の同胞を救いに行く」と大義名分を押し立てることもできるでしょう。「人民を解放するのが人民解放軍の本来の役割」なのですから。

 中国にとってベストシナリオは、金王朝への反乱が北朝鮮の人民によって発生し混乱に陥るケースです。それをTake Chanceし治安維持の名目で、上手くすれば人民解放軍が国連軍の帽子をかぶって進駐できるのです。その後は粛々と、暗殺された金正男の息子を「新しい王様」に押し立ててもいい。

鈴置:反乱は起きるでしょうか。北朝鮮軍の専門家である宮本悟・聖学院大学教授は『北朝鮮ではなぜ軍事クーデターが起きないのか?』という本を書いています。

真田:中国から援軍が来ると分かったら、話は別でしょう。「金王朝」の下では生きていけない、と考えている軍や党の幹部は必ずいます。彼らが金正恩暗殺に出る可能性が少なからずあります。

北朝鮮を南北に分割

米国はどう出るのでしょうか。

真田:中国の動きを容認するでしょう。金王朝が倒れれば、北の核武装という状況をとりあえずは食い止められる可能性が高いからです。中国にすべてを任せず、米中両軍がタッグを組んで南北から北朝鮮を挟み撃ちにする手もあるのです。

鈴置:米・ランド研究所(Rand Corporation)が2013年に『Preparing for the Possibility of a North Korean Collapse』という報告書を発表しています。

 タイトル通り「北朝鮮の崩壊への備え」を論じたもので、第9章は中国の介入に関し検討しています。簡単に言えば「北進した米韓軍と、南下した中国軍が北朝鮮を分割占領すべきだ」との結論です。275ページには地図が付いています。それを参考に作ったのが「地図1」です。

●地図1

 一番上の線は中朝国境から50キロ離れたライン。真ん中の線は首都・平壌ピョンヤン)が米韓側に含まれるよう引いたものです。一番下は平壌日本海側の大都市、元山(ウォンサン)のそれぞれ中心部をつないだ線です。平壌は南北に2分割されて統治されるわけです。

 ランド研究所は「金正恩後の北朝鮮」に関し、米・中・韓の利害を突き合わせ、どこで線を引くか交渉することになると見通しているのです。

米中談合は許さない

要は、北朝鮮を「北・北朝鮮」と「南・北朝鮮」に分けるのですね。

鈴置:米中両軍の衝突という事態を避けるためです。双方、戦車など重武装の部隊を派遣するのですから。占領行政の領域を定めておく必要もありますが。

 もちろん、この「分割占領案」はランド研究所が検討しているだけで、米国政府の案ではありません。ただ、中国と「金正恩後」を話し合う時に、こうした分割案を定めておく可能性が高いのです。

この案を提示されたら、ロシアは賛成するでしょうか?

真田:激怒すると思います。冒頭に申し上げたように北朝鮮は領土の一部と考えているのです。こういう米中談合を許さないために、ロシアは今、動き始めたのです。国際金融筋はそう見ています。

鈴置:米中が談合に動く可能性が大いにあります。4月の米中首脳会談の後、習近平主席に教えられたとしてトランプ大統領は「韓国は中国の一部だった」と語りました(「『韓国は中国の一部だった』と言うトランプ」参照)。

 わざわざ「同盟国が中国の属国だった」と語るのは奇妙です。そこで「北朝鮮処分に協力してくれるのなら、代わりに韓国は与える」と中国に約束したとの推測が飛び交いました。「ランド案」とは逆に、米国が朝鮮半島から大きく後退するシナリオですが。

世界が買うロシア株

ロシアは米中談合に反対する力があるのですか?

真田:ロシアの交渉カードは「イラン」です。ペルシャ、すなわちイランの動きをユダヤ国家たるイスラエルは危惧しています。イスラエルとの関係を大事にするトランプ(Trump)政権は、その意向を汲み、イランとの核合意の破棄に動いていると私たちは見ています(「金正恩の耳元でつぶやくトランプ」参照)。

 しかし核合意に加わった欧州は「破棄などとんでもない」と言っていますし、米国の中にも批判する向きは多い。

 一方、ロシアはイランに一定の影響力を持ちます。プーチン大統領はイランの核問題でトランプに何らかの貸しを作ることにより、朝鮮半島への発言権確保を狙うと思います。

 「核合意」を破棄しないというなら、中東の泥沼に足をとられたくない米軍にとっても朗報です。米ロの軍が接近する理由がもう1つあります。「制宙権」です。現在、国際宇宙ステーションは米ロが中軸となって運営しています。

 これに中国がクサビを打ち込む形で、独自の宇宙ステーションを建設し、単独で運用しようとしています。米ロは宇宙で中国を叩いて置く必要があります。このように、米国には朝鮮半島でロシアを「立てる」十分な動機があるのです。

 今日お話ししたことは陰謀論のように聞こえるかもしれません。が、国際金融筋の1つの見解です。7月ごろからロシア株が上がっています。「米ロの関係改善が本格化する」との読みから両国を含む世界の投資家が買っているのです。

「北を尊敬せよ」とプーチン

鈴置:ロシアの北朝鮮に対する影響力はどれほどあるのでしょうか。

真田:今、北朝鮮にとって頼れるのはロシアだけです。米中の談合による「北朝鮮処分」が現実のものとなり始めたからです。トランプ大統領は11月8、9日には北京で習近平主席と会談する予定です。

 だから、北朝鮮はロシアの言うことをある程度は聞くと思われます。9月15日の「火星12」号の試射以来、弾道ミサイルも発射していません。これもロシアの圧力と国際金融筋は見ています。

 鈴置さんが指摘したように、強硬なトランプの国連演説や、爆撃機「B1B」の派遣など軍事的威嚇が北をおとなしくさせた部分もあるでしょう(「金正恩をコーナーに追い詰めたトランプ」参照)。

 それと同時に、プーチンの「これ以上やると、俺も見放すぞ」との姿勢が北朝鮮をおとなしくさせたのではないかと金融筋では見ています。

 ただし、金融筋の見方がすべて正しいとは言えないし、むしろ外れてほしいと願うこともあります。

鈴置:ぐれた子供は叱りつけるだけではダメ。「お前の気持ちは分かる」と頭をなでる人が必要、というわけですね。

 ロシアの通信社、スプートニクが、プーチン大統領の「問題解決は北朝鮮との合意と尊敬だ」と語ったと報じました。一生懸命に頭をなでているのです。「プーチン大統領、北朝鮮を尊敬するよう呼びかけ」(10月20日、日本語版)で読めます。

4カ国分割占領案

ロシアの考える解決策は?

真田:とりあえず北朝鮮の挑発をやめさせ、米国との軍事的な衝突を防ぐ。そうしておいて米朝に話を聞き、落とし所を探っている状況と思います。

 米国もある程度は納得できる妥協案を作り、それをロシアが北朝鮮に守らせるとの構想でしょう。その妥協案がどうなるかまでは現段階では分かりませんが。

ロシアが首を突っ込んできた今、中国はどう出るでしょう?

鈴置:ガセネタかもしれませんが、もう1枚、面白い地図があります。韓国・毎日経済新聞社系の放送局、MBNがニュースで流したものです。

 中国による金正恩後の北朝鮮分割統治案なる代物でして、韓国の市民団体が韓国政府の資料の中から発見した、と報じました。

 「朝鮮半島の統一シナリオ、4カ国が分割統制か?」(2015年8月4日、韓国語による動画)で見ることができます。それを基に作成したのが「地図2」です。

●地図2

 もう一度繰り返しますが、これが本物という証拠はどこにもありません。ただ、実にそれらしい代物なのです。

日本海に港を持つ中国

 ロシアは自国から北朝鮮日本海側の港、羅津までの鉄道を改修して使うなど利権を有しています。この「中国案」では、羅津港を含む咸鏡北道はロシアが統治します。これによりロシアは極東に不凍港を確保できます。

 米国と韓国は北朝鮮の南半分を得ます。それにより、韓国は首都・ソウルが軍事境界線と40キロほどしか離れていないという脆弱性をある程度、改善できます。

 南半分のうち日本海側が米国、黄海側が韓国の管轄となります。ただ韓国は平壌を取り囲む平安南道は確保できますが、平壌そのものは4カ国が共同で管轄します。

 中国は自国に接する広大な地域を、東北部を除き管轄します。ポイントは咸鏡南道も得ることでして、初めて日本海側への出口を獲得します。

 中国にとって実に都合のいい線引きで、それだけに本物の中国案らしく見えるのです。この案だと、一応はロシアにも配慮しています。

真田:うーん。ロシアが受け入れるアイデアとはとても思えません。他の取引とバーターでこれを飲むということでない限り、ロシアにさほどのメリットはありません。

 もしも私の見方が外れ、米中に加えてロシアまでも金ファミリー王朝を除去する動きに出れば、北朝鮮はいよいよ「窮鼠猫を咬む」状態に追い込まれます。あるいは、IS(イスラム国)など非国家テロ組織とタイアップを始める可能性が高まると思います。

 

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