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ロシア大統領選の記事 プーチンは?

中国では習近平賛成2958票、反対2票、棄権3票で再選した。

さてロシアのプーチンの動向はというと杉浦敏広氏の記事が詳しい。

 

大統領選まもなく投票、ロシアはこう変わる プーチン大統領が目指しているもの | JBpress(日本ビジネスプレス) より引用

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プロローグ
ロシア大統領選挙候補者8人確定

 ロシア連邦のV.プーチン大統領代行(兼首相)は2000年5月、同国2代目の大統領に就任しました(初代大統領は故B.エリツィン氏)。


 ロシア中央選管は2018年1月12日に立候補受付を締め切り、計67人が立候補を申請。67人のうち21人が政党から、46人が無所属から立候補を表明しました。
 ロシア憲法は連続3選を禁止しているので、プーチン大統領憲法に従い、2008年5月に大統領職を退任して首相に転出。2012年5月には再度大統領に復帰して、今年3月18日の大統領選挙を迎えることになりました。

 ロシア下院に議席を持つ政党からの候補者は党大会決議で立候補を中央選管に受け付けられますが、議席を持たない政党からの出馬は10万人の支持署名が、無所属出馬は30万人の支持署名が必要です。

 プーチン候補は今回、無所属出馬を選びました(前回は政権与党から出馬)。最終的に8人が立候補申請を正式に受理され、今回の大統領選挙に臨みます。

激動の2018年

 今年2018年はK.マルクス生誕200周年、共産党宣言」(Das Manifest)が発表されてから170周年、プラハの春から50周年。日本では明治維新戊辰から150周年、日本のシベリア出兵」100周年になります。

 ロシアでは3月18日の大統領選挙後、5月に新大統領が誕生して、内閣改造に入ります。

 本稿では、今後の日露関係、ロシアの大統領選挙とプーチン次期政権の方向性と後継者問題、およびCIS諸国の動きなどを予測してみたいと思います。

 2018年も2017年同様、北方領土問題では日露間の進展は見られないでしょう。

 米EIA(エネルギー局)は2018年2月6日、2050年までの長期油価予測を発表しました。油価は緩やかな上昇を続けると予測、油価上昇は旧ソ連邦の資源国経済に好影響を与えます。

2016年以降、中国にとり最大の原油供給国はロシアになりました。ロシアから中国向け原油輸出量は今後さらに拡大し、露中エネルギー協力関係はさらに深化すると予測します。


 ロシアの国策会社ガスプロムは2018年後半、ロシアからバルト海経由ドイツ向け
「ノルト・ストリーム-2」の2本の天然ガス海底パイプラインを、ロシア側とドイツ側から同時に建設着工予定です。 ロシアからトルコ向け黒海横断天然ガス海底パイプライン建設構想「トルコ・ストリーム」と、ロシアを迂回して、カスピ海天然ガスアゼルバイジャンジョージアグルジア)~トルコ経由南欧に輸出する「南ガス回廊」構築構想は順調に進行中です。

 2019年末に完工すると、既存2本のノルト・ストリームと併せ計4本のパイプラインの年間総輸送能力は1100億立米(m3)になり、既存のウクライナ経由トランジット輸送能力とほぼ同じ量になります。

 欧州ガス需要の約35%はロシア産天然ガスが占めていますが、今後は米国産LNGも参戦するので、欧州ガス市場を巡るシェア争奪戦はますます激化するでしょう。

 懸念材料もあります。ロシアとウクライナ間の天然ガス紛争が再燃しました。

 紛争の性格はあくまで経済問題ですが、これが政治問題化すると両国関係が緊迫化して、欧米を巻き込んだ対露経済制裁措置強化の方向にベクトルが暴走する恐れがあります。

 アゼルバイジャンアルメニア間の領土問題、ナゴルノ・カラバフ紛争も今年は先鋭化する兆しが見えてきました。

 中東情勢はますます複雑化し、全面戦争に向けて一触即発の様相を呈しています。

 日本の原油輸入量の約90%は石油輸出国機構OPEC原油、ホルムズ海峡経由の日本の原油輸入量は約85%です。原油輸入源・輸送路の多様化が日本のエネルギー安全保障にとり喫緊の課題になりました。

2018年ロシア国家予算案発効

 ロシアの2018~20年国家予算原案は下院が2017年11月24日の第3読会で採択、上院は11月29日に承認、プーチン大統領が12月6日に署名して発効しました。


 ご参考までに2018~20年の連邦予算案概要は以下の通りです。低い油価水準を想定したことにより、国庫歳入に占める石油・ガス税収の割合が低減傾向にある点にご注目ください。
 予算原案策定の基になる想定油価は2018年40.80ドル、2019年41.60ドル、2020年42.40ドルに設定されています。

 油価が1バレル100ドルを超えていた2011年から2014年までは、ロシア国庫歳入案の半分以上が石油・ガス税収となっていました。ちなみに石油・ガス税収とは、地下資源採取税と原油・石油製品・(液化天然ガスLNGを除く)天然ガス輸出税を指します(参考:LNG輸出税は零)。

 ロシア経済がいかに石油・ガス依存経済構造になっているか、この数字から明白と思います。筆者は天然資源に依存するこの種の経済構造を「油上の楼閣経済」と命名しました。

(出所:毎年の露国家予算案より筆者作成)

 現在、ロシアの代表油種ウラル原油は1バレル60ドル前後で推移しています。

 油価が予算想定油価から1バレル1ドル上がると、ロシアの石油・ガス税収は約20億ドル増えるとの試算もあります。

 もし現在の水準が継続すれば、赤字予算案が黒字予算になり、プーチン大統領は油価上昇を享受して、国民に対するばら撒き政策も可能になりましょう。

プーチン大統領年次教書発表

 今年の年次教書は従来の年次教書とは異なり、第1部は「ロシア社会経済発展への諸政策」(内政・経済など)、第2部は「軍事」関係の2部構成になっていました。


 ご存じの通り、4年前の3月18日はクリミア半島と軍港セバストーポリ併合の日です。筆者は、この選挙日設定も大統領選挙に向けた1つの演出と理解しております。
 これは外部に対する何らかのメッセージではなく、来る3月18日の大統領選挙を意識したロシア選挙民へのメッセージ、と筆者は理解しました。

 故B.エリツィン初代大統領は計6回の大統領年次教書を発表しました。演説時間は平均30分間であり、最後となる1999年3月29日の年次教書に至ってはわずか18分間でした。

 一方、プーチン新大統領は2000年7月8日に第1回大統領年次教書発表後、2018年3月1日までに計14回の大統領年次教書を発表しており、従来の年次教書は平均約1時間でした。

 モスクワのクレムリンで発表された最初の大統領年次教書はぎこちなく、内容は悲壮感に溢れていました。

 冒頭、「国家の目標は強い露の実現である」と述べ、続いて「国家は分裂の危機に瀕している。人口は減少、経済は脆弱、国家運営は非効率である」と歯に衣着せずロシアの現状を批判。これは同時にエリツィン前大統領への批判でもありました。

 プーチン大統領は強い国家を実現しなければ国が分裂して国民は不幸になるという主張の下、「大国ロシアの復活」を標榜し、中央集権国家の確立を目指しました。

 プーチン大統領は有言実行の士であり、その意味でも大統領年次教書は今後のロシアの方向性を考察するうえで、大変重要な鍵を提示していると言えましょう。

 プーチン大統領はロシア憲法の規定に従い2008年に大統領職を退任。退任するにあたり、後継者として腹心のD.メドベージェフ第1副首相を次期大統領候補に指名。

 ここに、メドベージェフ大統領・プーチン首相のタンデム(2頭立て馬車)政権が発足しました。

 今年3月1日に発表された年次教書は時間にして約2時間。従来は約1時間の年次教書でしたから、今回は特に熱が入っていたことになります。

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 要旨は以下の通りです。今年の年次教書第1部(前半)は主に内政と経済政策と汚職問題でした。地方の発展、各種インフラ整備・拡充の重要性を訴え、経済政策に関しては経済成長率を世界平均以上にすることが新内閣の課題として挙げました。

 「日本」に関しては、「日本とフランスは長寿国」「日本と韓国は米国のミサイル防衛システムに組み込まれた」と述べ、このような文脈で2回だけ日本の名前が登場しました。

 経済成長が次期内閣の課題と明言しましたので、経済官僚を首相候補に指名するのではないかと、筆者は予測します。

 第2部(後半)では新兵器をビデオで紹介、ロシアは核大国である点を強調しました。

 ビデオは計6回上映され、以下の6種の新兵器が上映されました。

ICBM(サルマート)
原子力推進核巡航ミサイル
無人潜水艦(大水深・高速)と核巡航魚雷

④空対地核ミサイル(キンジャル)
⑤レーダー網を避ける超高速巡航ミサイルアバンギャルド
⑥レーザー兵器(名前募集中)

 大統領年次教書でビデオが上映されたのは今回が初めてです。これは米国に対するブラフとも言えましょう。

 残念なことに、ハリウッドが制作すればオーソン・ウェルズの「火星人襲来」並みになったはずですが、上映されたアニメはあまり迫力がなく、どうも漫画チックになってしまいました。

 筆者にとり印象的であったのは、プーチン大統領が「ロシアとロシアの同盟国に対する核攻撃はロシアに対する核攻撃と見做す。代償は大」と明言した点です。


 プーチン大統領が演説している背後のスクリーンには大きなロシア全土の地図が映っており、北方4島がしっかりと明記されていました。
 さらに、「欧米は従来、ロシアの言うことに耳を傾けなかった。ロシアは核大国になったので、今後はロシアの言うことをよく聞くべし」とも述べています。

 色丹・歯舞は小さな島と岩ですが、大きく描かれており、色丹島も読めない日本の北方担当相に対するメッセージかもしれませんね。

 今回の大統領年次教書を聞いて、プーチン大統領はこれで自分の花道を準備したと筆者は理解しました。

ロシア大統領選挙候補者の横顔

 3月18日に実施されるロシア大統領選挙の注目点は投票率、選挙後の注目点は首相候補指名内閣改造、第4期大統領任期中の注目点は後継候補になります。

 ご参考までに、今回の大統領選挙に立候補した候補者は以下の8人です(年齢は2018年2月現在);

ウラジーミル・プーチン(65歳)   現職大統領
パーベル・グルジーニン(57)    「ロシア共産党」公認候補
ウラジーミル・ジリノフスキー(71) 「ロシア自由民主党」党首(極右政党)
クセニア・サプチャーク(36)     テレビ司会者、プーチン氏恩師の娘

グリゴリー・ヤブリンスキー(65)   リベラル系野党「ヤブロコ」創設者
マクシム・スライキン(39)     「ロシアの共産主義者」候補
ボリス・チトフ(57)        「ロシア成長党」党首
セルゲイ・バブーリン(59)     「ロシア全国民連盟」候補

 全ロシア世論調査センターが2月14日に発表した世論調査結果によれば、以下のようになっています。

プーチン現職支持71.5%
共産党後任候補グルジーニン氏7.3%
自由民主党ジリノフスキー党首5.5%

④サプチャーク候補1.3%
⑤ヤブリンスキー候補0.7%

 

 3月18日の大統領選挙でプーチン現職再選は確実ですが、問題は勝つかどうかではなく、いかに勝つのかという“勝ち方”の問題です。


 ご参考までに、過去3回のV.プーチン候補の得票率と絶対得票率は以下の通りです。
 プーチン候補が求めているもの。それは絶対得票率(投票率×得票率)が過半数を超えることです。過去3回の大統領選挙では、絶対得票率が過半数を超えたことは一度もありません。

ロシア大統領選挙後の注目点/内閣改造

 新生ロシア連邦のB.エリツィン初代大統領は1999年12月31日、TV実況中継で突如大統領辞任を発表し、後継者としてV.プーチン首相を大統領代行に任命。翌年3月26日の大統領選挙には計11人が立候補して、プーチン候補が当選。

 2000年5月7日に露連邦として2人目の大統領に就任、プーチン新大統領のもとM.カシアノフ新内閣が誕生しました。

 ご参考までに、プーチン新大統領が2000年5月に誕生してから2012年までの内閣改造の軌跡は以下の通りです(肩書きはすべて当時)。

 プーチン現職が2018年5月に第4期目のロシア大統領として就任すると同時に内閣は解散され、新大統領の初仕事は露下院に対する首相候補指名になります。

 首相候補は下院の過半数の賛成をもって首相に就任後、直ちに内閣改造を行い、新大統領の承認を受け新内閣が発足します。

 付言すれば、2012年の内閣改造には13日間も要しました。これは、D.メドベージェフ首相の指導力に問題があったことを示唆しています。


 筆者は
E.ナビウーリナ(54歳)中銀総裁が次期首相候補に指名される可能性大と予測します。 次に、ロシアの次期首相候補は誰になるのか、占ってみたいと思います。

 メドヴェ―ジェフ現首相が再度首相候補に指名されることはあり得ません。しかしプーチン大統領は義理人情に厚いので、彼にはしかるべきポストを用意するでしょう。

 筆者は次期プーチン政権では、メドヴェ―ジェフ氏は最高裁長官あたりに任命されると予測しています。

 第4期目のプーチン大統領にとり、今回が最後の大統領職になります。同氏は1952年10月7日生まれの満65歳、大統領任期が終了する2024年5月の時点では71歳になりますので、後継者が育てば任期途中での辞任もあり得ると予測しております。

 花道を飾る最後の第4期目最初の内閣改造では、プーチン大統領はサプライズ人事を断行するでしょう。ではサプライズ人事とは何かと申せば、それは女性活用若手重用になると筆者は考えます。

 ご参考までに、筆者が次期首相候補と期待している3人は以下の通りです。

  E.ナビウーリナ中銀総裁 54歳 (1963年10月29日生まれ)
  A.クードリン元副首相 57歳 (1960年10月12日生まれ)
  G.グレフ/ズベルバンク頭取 54歳 (1964年2月8日生まれ)

 なお、ダークホースとしてA.ヴァイノ大統領府長官(46歳)の名前も最近下馬評に上がるようになってきたことも、ここに付記しておきます。

 閣僚人事、特に経済閣僚人事も注目されます。プーチン大統領は女性と若手テクノクラートを登用し、自分より年上は閣僚に起用しないでしょう。


 一方、次期閣僚から外される候補者は、まずは
S.ラブロフ(67歳)外相になりましょうか。彼は3月21日に訪日予定です。 この基準で申せば、G.グレフ(54歳)ズベルバンク頭取は経済閣僚に登用される可能性大と予測します(元々経済閣僚だったが辞任)。

 奇しくもこの日は彼の68歳の誕生日にあたりますが、外相としてはこれが最後の訪日になるだろうと筆者は予測しております。

 付言すれば、露中央選管に出馬を拒否された反プーチン派の野党指導者ナワールヌィ氏は欧米マスコミの寵児になっており、「選挙は茶番」として投票ボイコットを呼びかけていますが、彼の影響力は限定的であり、大勢に影響ありません。

エピローグ
プーチン大統領は何を目指しているのか?

 最後に、プーチン大統領が目指しているものは何か、筆者の考えをご披露させて戴きます。

 それは「強いロシアの実現」です。「強いロシアの実現」は2000年5月に誕生したプーチン新大統領が同年7月に発表した、第1回大統領年次教書の中で繰り返し強調されているキーワードです。

 では、最後となる第4期目のプーチン大統領の花道とは何でしょうか?

 「強いロシア」を標榜して2000年5月に登場したプーチン大統領最後の花道。

 それは、2000年7月の第1回大統領年次教書で国民に約束した「強いロシア」が、第4期目のプーチ治世下で実現したことをロシア国民と世界に高らかに宣言することである、と筆者は考えます。

 プーチン大統領は後継者が育てば大統領任期終了を待たずして、早期辞任の可能性もあります。

 では、次期大統領後任候補は誰になるのでしょうか?

 露米緊張緩和が進展して太平の世ともなれば、文官が後継者に指名されるでしょう。

 露米関係が緊迫化して緊張関係が高まれば、武官が後継者に指名されることでしょう。

 筆者は、プーチン大統領の後任候補として文官が後継指名されることを願ってやみません。

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