徴兵制と聞くと国が無理やり国民を戦争に駆り出すというようなネガティブなイメージを抱く国民は多いのが日本の現状であろう。
そのような被害者意識に立った物の見方は、愛国心を戦後否定してきたことと共通する意識がある。
それらを声高に訴えてきたのは、左翼勢力であった。
だが、同じように社会主義的価値観が浸透しているフランスでは、愛国心は肯定的に受け取られている。
この度報道にあった、マクロンの公約である徴兵制の復活は多くのフランス国民には好意的に受け入れられている。
勿論1ヶ月という短期間であるということにも理由はあるだろうが。
自由とは何かというときに、
国家の三要素といわれる国民、国土、主権を考えるに、
これらを保持して成立するわけであるから、
民主政治において主権者たる国民が自発的に国土や主権を守らなければならないことになる。
主権あるいは権力とは、実質的には武力、すなわち軍事力によって担保されているのであるから、少なくとも主権とは国民と国土を自衛する意思と行動とみることができる。
一朝事が起きて、国家の危機に瀕するときに、他人事のようにお上がなんとかすればよいだとか、国民の税金が支払われている自衛隊にこそこんな時は活躍してもらえば良いというようなことでは、そのような考えを持つものに主権は存在しないということになろう。
わたしは世界的に徴兵制が採用し始められたことが、
内的な意味において、つまり神の復帰摂理において
世界的なスケールの人々の主権復帰現象ではないかと感じている。
為政者が善なる者であればよいが、悪なる考えを持つものが為政者となったときには、
彼は軍事力や警察力によって担保された権力を乱用し、国民のためではなく
国民を支配し奴隷にするために用いることだろう。
したがって、蘇生、長成、完成の三段階の二段階目を意味する
キリスト教を背景とした長成期型の社会であるアメリカでは
悪漢が町にやって来れば、保安官のみならず町民の中から
町を守るべく銃をもって保安官事務所に終結する西部劇の光景がよく見られた。
これぞ、主権在民である。
我が国ではそのように銃が法による正義のために用いられることがなく、
青年将校のごとき正義感から自分たちの正義に相反する考えを持つものは
殺した方が良いというような暗い歴史がすぐ思い起こされる。
国民一人一人が正義のために立ち上がるという歴史がない。
左翼の馬鹿騒ぎがあるばかりであった。
真の民主主義政治が根を張ることができない。
国民の代表者が権力を預かるが、
為政者と国家の機構だけに頼るのではなく
一人一人が祖国の国土を守る。
手に銃をもってという歴史が欠落してきた。
フランスにはパルチザンの抵抗運動があった。
その流した血によって自由を勝ち取ってきた。
徴兵制は人権思想・民主主義が生み出した(田上嘉一) - 個人 - Yahoo!ニュース
より引用
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(写真:ロイター/アフロ)
欧州で続々復活する徴兵制
フランスが徴兵制を復活させるという報道がありました。
徴兵制復活へ 仏大統領表明 18~21歳の男女対象
フランスは2002年に徴兵制を廃止していますが、移民の相次ぐテロの脅威に備えるためなどとして18歳から21歳の男女に対し、1か月間の兵役という形で導入を目指すということです。マクロン大統領は、大統領選の際にすでに公約として兵役義務の復活を掲げていたんですね。
一方でスウェーデンも、2010年に徴兵制を廃止していたのですが、バルト海で活動を活発化するロシアの脅威に対抗するため、昨年徴兵制を復活させています。
スウェーデン徴兵制復活 ロシアの脅威に対応、女性も対象
「リベラル=平和主義」なのに徴兵制?
国民戦線のルペンを破って大統領に就任したマクロンは、極右化が進むヨーロッパにおける極右化の流れを断ち切ったとして、日本ではリベラルの拠り所として賞賛されていました。同じように、スウェーデンは社会保障の手厚いことで知られる北欧の国として、リベラルの模範的な国家という印象を持っている人が多いでしょう。
なぜ人権意識やリベラル思想の先進国であるはずのこれらの国で、真っ向から対立する(ように思われる)徴兵制が復活するというようなことが起きているのか、戸惑っている人もいるかと思われます。
どうしても日本では、これまでの経緯として、進歩派、リベラル派、左翼といわれる人たちが、平和憲法を護ろうと主張していることから、「リベラル=ハト派」という印象がありますが、それはあくまで日本における話であって、国が違えば事情が異なるのは当然です。
政治思想における「右翼・左翼」や、「保守・リベラル」とは、あくまで人権や自由、平等といった理念を推し進めていくか、歴史の叡智によってそれらに歯止めをかけるかというものであって、本来的にはそれ以上の意味はありません。したがって、「左翼思想=平和主義」ということもありませんし、「右翼思想=軍国主義」ということでもありません。左翼的な軍国主義もあれば、右翼的な平和主義も十分にありえるわけです。したがってリベラルの旗手であるマクロンや、福祉国家であるスウェーデンが、徴兵制の復活を唱えることはまったくおかしなことではないのです。
他方で、我々はこれまで学校で、日本国憲法の三原則を強調して教えられているため、「民主主義」というとそれ自体が平和主義であるかのように勘違いしてしまいますが、これも大きな間違いです。民主主義(正しくは「民主制」)はあくまで政治体制のことを意味するのであって、民主主義=平和主義ということでもありませんし、むしろ近代の大戦争は民主主義の発展に伴って発生したといえるのです。
民主主義の元祖ともいえる思想家、ルソーは『社会契約論』のなかでこう述べています。
「すべての人は必要とあれば、祖国のために戦わなければならない。」
「そして統治者が市民に向って『お前の死ぬことが国家に役立つのだ』というとき、市民は死なねばならぬ。なぜなら、この条件によってのみ彼は今日まで安全に生きて来たのであり、また彼の生命はたんに自然の恵みだけはもはやなく、国家からの条件つきの贈物なのだから。」
(ルソー(桑原武夫・前川貞次郎訳)『社会契約論』(岩波文庫)より引用)
市民革命を経て国民主権による国民国家となる前の欧州各国の多くは絶対王政によって支配されていました。絶対王政下における軍隊とは、王族や貴族といった支配者階級、そして金で雇われた傭兵たちによって主に構成されていたわけです。これらは、あくまで国王のための軍隊であって、国民のための軍隊ではなく、一般の労働者や農民とは隔絶された存在でした。
ルソーが社会契約論の中で展開した、祖国防衛という神聖な義務を負う市民というものは、大革命を経て、現実のものとなります。
三部会開催、球戯場の誓い、バスティーユ牢獄襲撃を経て誕生したフランス革命政府は、オーストリア・プロイセンに宣戦布告をするものの、両軍は、1792年8月19日にフランス領内に侵攻し、9月3日にはヴェルダンを陥落させ、パリへと近づきます。これ対して、ジャコバン派の呼びかけによって集まった国民軍が危機を救うのです。9月20日ヴァルミーの戦いでオーストリア・プロイセン連合軍を撃破します。文豪ゲーテは、「この日から世界史の新しい時代が始まる」 と日記に綴っています。
ここに近代国民国家が形成され、祖国を防衛するための国民による軍隊が始まりました。支配者階級だけではなく、一般の市民が国民となって祖国の大地を守るために結成されたのが、国民国家における軍隊となるわけです。
17世紀の思想家ホッブズは、『リヴァイアサン』において、人々は、生命の安全確保のために、主権者に絶対的な権力を委ねるかたちで、至高かつ絶対的な権力である主権を生み出したとしています。ここでいう主権者の最大の義務とは、国民の生命・財産を守ることにあります。主権者が国王であるならば、国王が国民の生命・財産を守る義務を負うわけです。しかし、フランスにおいては、市民が王権を打倒し、自らが主権者の地位を奪い取りました。そうなれば、主権者である国民自身が、武装して自らの生命・財産を守らなければならないのは当然の摂理です。主権者は国王ではなく、自分たち自身だからです。絶対王政を打倒し、国民が主権者となり、その一般意志が議会を通じて法となって国を統治する国民国家においては、主権者たる国民こそが祖国を防衛する権利と義務を有するわけです。こうして、フランスに続いて次々とできあがった国民国家である共和国においては、国民皆兵による市民武装が当たり前のことでした。
行こう 祖国の子らよ
栄光の日が来た!
我らに向かって 暴君の
血まみれの旗が 掲げられた
血まみれの旗が 掲げられた
聞こえるか 戦場の
残忍な敵兵の咆哮が?
奴らは我らの元に来て
我らの子と妻の 喉を掻き切る!
武器を取れ 市民らよ
隊列を組め
進もう 進もう!
汚れた血が
我らの畑の畝を満たすまで!
「ラ・マルセイエーズ」は、フランス革命の際にマルセイユからパリに駆けつけた義勇軍が口ずさんだことから一気に広まり、フランスの国歌となりました。
日本において近代国民国家が形成されたのは、もちろん明治維新によってですが、それまでの軍隊は、各藩主に帰属している武士階級によってのみ構成されていました。それが近代的兵制改革を経て、農民や商人、職人であっても、みな一律平等に兵役につくことになります。そのために国家による教育が施され、大きな戦争を経るたびに、社会保障制度が整っていきます。日本においても、まさに兵役こそが近代国家の国民を作り上げたわけです。
このように、徴兵制とは、これまでの身分制を破壊して、均質な平等な国民が、自らを守るために自ら武装したことを発端として誕生したものです。ここには、自由・平等という人権思想と、国防が主権者である国民自身の権利義務であるという民主的要素が存在しています。このような思想的土壌があって初めて国民皆兵による徴兵制という制度が成り立つのです。
ヨーロッパ各国における徴兵制の現在
フランスやスウェーデンは21世紀に入って徴兵制を廃止していますが、それ以外の欧州の国々はどうでしょうか。ドイツやイタリアも現在徴兵制は廃止されています。しかし、この2カ国の憲法には、未だに徴兵の条項が残されています。
ドイツ憲法12(a)条
- 男子に対しては、満18歳から軍隊、連邦国境警備隊または民間防衛団における役務に従事する義務を課すことができる。
- 良心上の理由から武器をもってする軍務を拒否する者に対しては、代役に従事する義務を課すことができる。この代役の期間は兵役の期間を超えるものであってはならない。詳細は法律で規定するが、この法律は良心の決定の自由を侵害してはならず、かつ、軍隊および連邦国境警備隊に何ら関わりのない代役の可能性をも規定するものでなければならない。
(以下略)
イタリア憲法52条
- 祖国の防衛は、市民の神聖な義務である
- 兵役は、法律が定める制限と方法において、義務である。市民は、兵役義務の履行によって、その職務上の地位および政治的諸権利の行使を脅かされない。
- 軍隊の秩序は、共和国の民主的精神に従う。
(それぞれ、初宿正典・辻村みよ子『新解説世界憲法集 第4版』(三省堂)より抜粋)
イタリアは2004年、ドイツは2011年にそれぞれ徴兵制を廃止していますが、あくまで法律レベルで現在徴兵を行っていないということであって、いつでも法改正をして徴兵を復活できるよう、憲法上は条項が残っているというわけです。
この他、EU加盟27カ国のうち、オーストリア、スイス、キプロス、ポーランド、オランダ、チェコ、スペイン、ハンガリーなど、実に20カ国が憲法上に徴兵制の根拠条文をおいています。もっともこれらの国々のすべてにおいて現在も徴兵が実施されているというわけではなく、ドイツやイタリアのように憲法上に規定はあるものの、徴兵制が廃止されている国も含まれています。もっとも、フランス、イタリア、ドイツなどをみてもわかるとおり、ヨーロッパの国々で徴兵制を廃止したのは主に冷戦終結後のことで、つい最近のことなのです。
さらに、EU加盟国以外でも、北アフリカ諸国の他、ベトナム、イスラエル、ウクライナ、韓国、アルメニア、ベラルーシ、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ロシアなどでは徴兵制が続いています。
日本において徴兵制は認められるか ー憲法18条の解釈ー
日本国憲法18条は「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」と規定しており、政府見解は、この「意に反する苦役」に該当するため、徴兵制は認められないとしています。
しかし、国際人権B規約(自由権規約)第8条は、次のように規定して、軍事的性質の役務、および良心的兵役拒否者が法律によって要求される国民的役務については、強制労働に含まれないことを謳っています。
第8条
- 何人も、奴隷の状態に置かれない。あらゆる形態の奴隷制度及び奴隷取引は、禁止する。
- 何人も、隷属状態に置かれない。
(a) 何人も、強制労働に服することを要求されない。
(b) (a)の規定は、犯罪に対する刑罰として強制労働を伴う拘禁刑を科することができる国において、権限のある裁判所による刑罰の言渡しにより強制労働をさせることを禁止するものと解してはならない。
(c) この三の適用上、「強制労働」には、次のものを含まない。
(i) 作業又は役務であって、(b)の規定において言及されておらず、かつ、裁判所の合法的な命令によって抑留されている者又はその抑留を条件付きで免除されている者に通常要求されるもの
(ii) 軍事的性質の役務及び、良心的兵役拒否が認められている国においては、良心的兵役拒否者が法律によって要求される国民的役務
(iii) 社会の存立又は福祉を脅かす緊急事態又は災害の場合に要求される役務
(iv) 市民としての通常の義務とされる作業又は役務
また、スペイン憲法30条1項をはじめとして、ベトナム、インドネシア、トルコ、モザンビーク、ルーマニアなどの憲法においては、国防は国民の義務ではなく権利であると規定されています。さらに、連邦憲法裁判所は、1960年12月、ドイツ憲法12(a)条兵役規定との関係において、兵役の義務は人間の尊厳に反しないのみならず、相互の義務として認められると述べており、このような兵役を課すことは憲法違反ではないと判断しています。
このような各国の法律における意識や、民主共和国の歴史的成り立ちを考えた場合、政府による18条の解釈は再検討の余地があるものと言えるでしょう。日本が将来、徴兵制を復活させる可能性や合理性は決して高くはないと思いますが、徴兵制が「意に反する苦役」に該当し、徴兵制そのものが憲法に違反するかどうかというのは、また別の話です。
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こちらの記事もヨーロッパの事情をわかりやすく説明してくれている。
国民が国家の奴隷にならないためには国家の機構とともに国民一人ひとりが
国家を守る制度や気風が育っていかなければならないことだろう。
私が学生時代イスラエルでは女性兵士がいて驚いたものだが、
イスラエルという国家を他人に預けっぱなしにするのではなく
まさに自分の国なのだから自分も守るのだというところに
主権在民のエッセンスのひとつがあるように思えてならない。
欧州で徴兵制復活の動き 仏、テロ多発に危機感(1/4ページ) - 産経ニュース
より引用
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欧州で徴兵制復活の動きが出ている。スウェーデンは1月から、ロシアの脅威を念頭に8年ぶりに復活させた。フランスでもイスラム過激派テロの脅威増大を背景にマクロン大統領が「復活」を宣言。ナチスの“過去”を持つドイツでも、近年の治安情勢悪化を踏まえ、復活の是非をめぐる議論がくすぶっている。
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フランスのマクロン大統領は1月19日、南仏トゥーロンの海軍基地で軍幹部向け「徴兵制を復活させる」と宣言した。イスラム過激派テロの脅威増大で、国防を強化するためだ。
マクロン氏は演説で、シリアなど地中海岸の中東からアフリカ中部に広がる対テロ作戦の重要性に触れ、「グローバル化が進展し、国土や周辺地域の防衛だけでは国益を守れない。国防とは、数千キロ離れた地域から攻撃をあおるテロリストと戦うことでもある」と強調した。
徴兵制復活は昨年春の大統領選でのマクロン氏の公約だった。18~21歳の男女に約1カ月間、軍務を経験させ、毎年約60万人の参加を見込む。危機の際に国軍を補佐する予備役を確保し、軍や関連産業の人材を確保する狙いがある。
徴兵制が廃止されたのは2002年。シラク元大統領が1996年、段階的廃止を宣言していた。東西冷戦の終結で、国軍は東からの侵略戦争に備えた大量動員が不要となり、紛争地に緊急展開できる「プロ軍団」への脱皮をめざした。冷戦後の欧州では、ベルギーやオランダ、スペインなど北大西洋条約機構(NATO)加盟国が相次いで義務兵役を廃止し、フランスもその流れに乗った。
しかし、2015年にテロが相次ぎ、機運が変わった。同年1月、風刺週刊紙シャルリー・エブドなどの襲撃テロで17人が死亡後、オランド政権(当時)はテロ警戒にあたる軍・警察配備を1万人規模に増強。補助人員を確保するため、新たな志願兵制を導入した。11月に130人が死亡する同時多発テロが発生すると政府は非常事態を宣言。国民の危機意識は高まった。
徴兵制復活には宿舎や教育施設の新設が必要で、上院では経費が5年間で300億ユーロ(約4兆円)にのぼるとの試算が示された。国軍内には「国防予算が圧迫される」との懸念も強い。それでも、マクロン氏は「必要なら憲法を改正する。国家の結束のために重要」だとして、徴兵制復活に強い決意を示す。昨年7月の世論調査で、徴兵制復活への支持は59%にのぼった。(パリ 三井美奈)
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北欧の中立国、スウェーデンは、ロシアの軍事的脅威を念頭に8年前に廃止した徴兵制を1月から復活させた。また470万全世帯を対象に、戦争に巻き込まれる事態を想定したパンフレットを今年半ばに配布し、備えを呼び掛ける。
スウェーデン(人口約1千万人、出生数毎年11万人)の徴兵制は、1999年以降に生まれた18歳の男女約10万人からまず1万3千人を選び、適性検査を経て毎年4千人を約11カ月間、兵役に就かせるもの。女性の徴兵は初めてだが、「兵役訓練」の意味合いもある。徴兵を拒絶すると罰則が科される。4千人には志願兵も含まれる。
同国政府は国民皆兵の理念の下に、全国民に軍事訓練を施し戦争に備えていたが、冷戦終結を受け2010年に徴兵制を廃止。ウクライナ危機以降、バルト海域などで軍事演習を繰り返すロシアの脅威に対し、昨年8月、今後3年間で防衛費を計約10億ドル(約1100億円)増額すると発表した。また、冷戦終結で05年に廃止していたバルト海の戦略的要衝ゴトランド島に昨年から部隊を再配備した。
今年半ばに配布するパンフレットは、「戦争が起きた場合」と「戦時体制」を想定したもの。パンフはもともと、第2次大戦中の1943年に発行され、冷戦終結まで国民に配布された。27年ぶりに作成された最新版では、水や毛布などの備蓄を呼び掛けるとともに、イスラム過激派などによるテロやサイバー攻撃、偽ニュースによるプロパガンダ、パンデミック(伝染病などの爆発的流行)など複雑化する「脅威」への対応策も記している。
一方、ロシアと国境を接するエストニアでは、8カ月もしくは11カ月の徴兵制を維持している。08年に廃止したリトアニアでも15年に徴兵制を再開させた。対象は19歳から26歳の男子で、軍務は9カ月。(ロンドン 岡部伸)
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ドイツでも近年の安全保障・治安情勢の悪化などを踏まえ、徴兵制復活の是非をめぐる議論はくすぶっている。再開を求める声は少数派だが、制度上、早期の再導入は可能とされ、政府も危機時の選択肢として、その可能性を排除していないとされる。
ドイツではメルケル政権下で2011年、西ドイツ時代を通じ、第二次世界大戦後の再軍備以来続いた徴兵制を停止した。東西統一と冷戦終結による安保環境の安定化を受け、財政赤字を削減する目的もあった。
近年は対テロ戦など国外派遣の増加もあって連邦軍の役割が増大し、政府は統一時の50万人超から16万人余りに減った兵力を増員する方針に転換。十分な兵員確保には、徴兵制が有効との声も上がる。
昨年5月には難民に寛容な政界要人らに対する暗殺を連邦軍兵士が計画していた事件が発覚。軍内部での極右的思想の浸透に警戒が強まると、兵士の出身が一部社会層に偏りかねない公募制でなく、徴兵制を支持する意見も上がった。
だが、メルケル氏は「連邦軍の問題解決にならない」として徴兵制再開に反対。党として徴兵制を掲げるのは昨年の総選挙で台頭した右派政党「ドイツのための選択肢」(AfD)のみだ。再開を支持する声は今のところ広がっていない。
ただ、徴兵制の規定は基本法(憲法に相当)で維持されており、簡単な立法で再導入が可能とされる。独メディアによると、政府が一昨年、外部からの侵略の脅威など危機時の民間協力をまとめた計画では、徴兵制再開も想定した内容が入る一方、フォンデアライエン国防相は「現時点では徴兵制回帰は大きな価値をもたらさない」との見解を示した。(ベルリン 宮下日出男)
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日本はどこへ向かうのか?