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20180131 トランプ記事

トランプ大統領はどこへ? 今後1年の施政方針示す演説を読み解く | 国際報道2018 [特集] | NHK BS1 より引用

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増井
「アメリカのトランプ大統領が、今後1年の内政・外交の施政方針を示す一般教書演説を行いました。」

花澤
「融和的な姿勢を示す一方、今年(2018年)11月に行われる中間選挙に向け、支持者へのアピールが際立ちました。」



米 トランプ大統領 政権2年目の戦略は

アメリカ トランプ大統領
「我々は再びアメリカを偉大な国にするため、明確なビジョンと正しい使命感をもって前進してきた。」

トランプ大統領は、これまでの成果を訴え、公約の実現に強い意欲を示しました。


トランプ大統領
「選挙以降、240万人の雇用を創出した。
トヨタマツダは、アラバマ州に工場を建設する。
近いうちに自動車工場などの建設が全米各地で始まるだろう。」

そして、中国などを念頭に公正な貿易を目指す姿勢を強調しました。

トランプ大統領
「アメリカは何十年もの間、雇用を奪ってきた不公正な通商政策をついに転換した。
不公正な貿易協定を是正し、新たな協定を交渉していく。」

さらに、強調したのがインフラ投資です。
10年間で官民あわせて160兆円余りに増額することを目指すとして、議会に協力を呼びかけました。

トランプ大統領
「安全で信頼できる、近代的なインフラを整備するよう与野党に求める。」


経済の次にトランプ大統領が訴えたのが、不法移民対策です。
トランプ大統領は、2年前に殺害された2人の女性の両親を紹介しました。

トランプ大統領
「2016年の9月、(娘の)ニーサさんの16歳の誕生日の前夜、2人は帰宅しなかった。
2人の少女は自宅近くを一緒に歩いていて、残虐にも殺害されたのだ。
中米のギャング集団のメンバー6人が、2人を殺害したとして起訴された。

アメリカの誰もがあなたたちとともに悲しんでいる。
立ち上がってください。」

そして、子どもの時に入国した不法移民を救済する一方、メキシコとの国境沿いに壁を建設する予算を認めるよう、与野党に求めました。

トランプ大統領
「国境警備を強化し、南の国境に壁を作る。」

トランプ大統領はほかにも、不法移民の摘発にあたる捜査官や、退役軍人の墓地に国旗を掲げる運動を始めた少年を紹介し、愛国心をくすぐる演出が目立ちました。


トランプ大統領
「我々は、ならず者国家、テロリスト集団、そして中国やロシアといった、我々の国益や経済、価値に挑むライバルに直面している。」

中国とロシアを名指しした上で、核戦力を含む軍事力の強化に取り組む姿勢を強調しました。

トランプ大統領
「防衛の一環として、私たちの核戦力を近代化し再建しなければならない。
使う必要がなければいいが、強化すればいかなる侵略行為も抑止できる。」

また、異例ともいえるほど多くの時間を割いたのが、北朝鮮への対応です。

トランプ大統領
「これほど自国民を抑圧してきた残虐な独裁体制はほかにない。」

北朝鮮で1年以上拘束され、帰国後に死亡した大学生の両親や、脱北者の男性を招いて、北朝鮮の体制を強く非難。
脱北者の男性は涙ぐみ、大きな歓声に包まれました。

その上で…。

トランプ大統領
北朝鮮の核ミサイルは、近いうちにアメリカ本土に脅威を与える可能性がある。
それを食い止めるため、最大限の圧力をかける取り組みを遂行している。
私は、過去の政権の過ちは繰り返さない。

そして、演説の最後。

トランプ大統領
「アメリカ国民がこの国を作り上げた。
そして、その国民がアメリカを再び偉大にする。
ありがとう、アメリカに神のご加護あれ。」



アメリカ国内の受け止めは

増井
「ここからはワシントン支局の広内記者に聞ききます。
今回の演説、アメリカでの受け止めはどうでしょうか?」

広内仁記者(ワシントン支局)
「こちら、アメリカの有力紙『ワシントン・ポスト』の一面です。
トランプ大統領の演説は融和的なトーンだった』などと伝えています。
トランプ大統領は演説の前、アメリカメディアのキャスターらと昼食をとった際も、『この1年で、ビジネスマンの才能だけでなく、ハートで国を統治しなければならないことを学んだ』と述べ、『分断されてきた国を結束させたい』と、融和的な姿勢を強調していました。
しかし、結束を呼びかけ、野党・民主党に協力を求めたのも、あくまで自身の公約を実現させたいという思惑からです。
演説では、融和的な姿勢とは裏腹に、支持者向けのアピールが際立ちました。
今年(2018年)11月に行われる議会の中間選挙を意識しているのは間違いありません。
トランプ大統領としては、公約を実現し、支持基盤である白人労働者などの支持をつなぎ止めることで、中間選挙で勝利したい考えです。
トランプ大統領が訴えた国境の壁を待ち望む、支持者の今を取材しました。」

“壁の建設”待ち望む トランプ支持者

リポート:広内仁記者(ワシントン支局)

メキシコに隣接する西部アリゾナ州で建設業を営む、スコット・ニーリーさんです。
トランプ大統領の支持者で、壁の建設を心待ちにしています。
ニーリーさんの会社では、不法移民を雇わない方針を貫いているため、賃金の安い不法移民を雇う同業他社に仕事を奪われてきたといいます。
前のオバマ政権下では、売り上げが3分の1にまで激減しました。

建設会社経営 スコット・ニーリーさん
不法移民はアメリカ人より70%も賃金が安く、競うのは難しい。
オバマ前政権の間は本当に悲惨だった。
生活するのも厳しかった。」

しかし、トランプ大統領の就任後、仕事の受注が徐々に増えてきました。
ニーリーさんは、トランプ大統領が不法移民対策を強化したおかげだといいます。
トランプ政権は、不法移民の摘発を強化。
全米で逮捕された不法移民の数は40%余りも増加しました。

ニーリーさんは、公約通りメキシコとの壁が建設されれば不法移民がさらに減り、売り上げが倍増すると期待しています。

建設会社経営 スコット・ニーリーさん
トランプ大統領が壁をつくってくれると信じている。
国を守るためにも、我々の仕事を守るためにも、壁を建設するべきだ。」

根強い反対の声 “壁の建設”見通しは

一方、アメリカ国内には、壁の建設に反対する声も根強くあります。

「『壁』はカネの無駄だ。
費用をメキシコに払わせようとしても払わない。」

「アメリカは移民で成り立っている。
多様性こそがこの国の強みよ。」

野党・民主党に加え、与党・共和党の一部も反対する中、ばく大な建設費が議会で認められる見通しは立っていません。

アメリカン大学 スコット・タラン准教授
「『アメリカを再び偉大にする』とか『壁をつくる』と言い続ければ支持者にはアピールできる。
しかし、大統領は議会と妥協する気がないので実現は難しいと思う。」

中間選挙控え 今後の焦点は

花澤
「公約の実現に意欲を示したトランプ大統領ですが、2年目の焦点は何だと見ていますか?」


広内記者
「避けて通れないのが、中間選挙での審判です。
中間選挙民主党が勝利すれば、政権運営は行き詰まり、大統領の弾劾論が勢いづく可能性もあるだけに、トランプ大統領としては『絶対に負けられない戦い』です。
そのためにも、一般教書演説で打ち出した成果や政策を、今後、各地で訴える計画で、近く、カリフォルニア州に設置されている壁の試作品を視察に行くことも検討しています。
そして、中間選挙の情勢を左右するのが、ロシア疑惑の捜査の行方です。
すでに関係者への事情聴取が進んでいて、トランプ大統領本人の事情聴取も数週間以内に行われる可能性が取りざたされています。
トランプ大統領が窮地に立たされるのか、それとも潔白を主張するトランプ大統領の思惑通り幕引きが図られるのか、捜査は大詰めを迎えることになります。」

トランプ大統領 政権2年目の戦略は

増井
「アメリカでは融和的なトーンだったと受け止められているということですが、花澤さんはどう見ましたか?」

花澤
「正直、なかなか巧みな演説だなという印象を受けました。
内容は確かに国内向け・選挙向けという感じで、外交についてはほんのわずか。
唯一、北朝鮮への厳しい姿勢は示したものの、具体策はほとんどなく、あまり見る所がなかったですね。
注目したのは、この3つです。」

増井
「『新しいアメリカ』『看板を“融和”に』『愛国心喚起』ですね。」

花澤
「『新しいアメリカ』については、オバマ政権までのやり方を全否定して、自分はアメリカのために戦っていろいろ勝ち取っているぞと、これまでとは違うアメリカになったというのをアピールしていました。
そして『看板を“融和”に』。
これまでと政策そのものはたいして変わらないんです。
同じことを言っているんですが、今までのように誰かを攻撃するような演説ではなくて、皆で結束しようと融和を訴えた。
中身は同じで看板を変えただけなんですが、印象は結構違ったんですよね。
唯一、経済政策で歩み寄りを見せましたが、あとはほぼ変わらない演説でした。
その結果が、これです。」

増井
「左側の議員が、立って拍手しているという様子ですね。」

花澤
「これは演説の途中なんですが、立っているのは共和党の議員たち。
右側の、座って白けた感じで聞いているのは民主党の議院という状況です。」

増井
「納得がいっていないという表情ですね。」

花澤
「しかも演説が終わると、トランプ大統領がまだ議場にいるのに、民主党議員たちは立ち上がって早々に帰ってしまうという異例の状況でした。
つまり民主党からすると、融和を訴えてはいても、具体的な政策では何もこちらには歩み寄っていないと受け止めた演説だったんです。」

増井
「そして3つ目の『愛国心喚起』。
愛国心をくすぐる演説が目立っていたということでしたね。」

花澤
「確かにそうした演説が目立ち、聞いていて感動的な物語もいくつかありましたし、聞いているアメリカの人たちにはうけるだろうなと感じました。
市民の受け止めもおおむね良好のようです。」

増井
CBSテレビの世論調査によりますと、一般教書演説が『よかった』と答えた人が75%、『融和させようとした』が81%と、高評価なんですよね。
そして移民政策についても、演説の内容について『賛成』と答えた人が72%。
こちらも支持されたようですね。」

 

花澤
「演説を聞いている人は、そもそも5:3ぐらいで共和党の人が多いんですが、それにしてもこの差を見ると評価は高いということですよね。
そして、特に移民政策が評価されたのは大きいと思います。
トランプ大統領としては国民からまずまずの評価を受けて、今日はアピールにほぼ成功したのかなという形です。
しかし一方で、民主党との溝も改めて浮き彫りになりました。
今後は、まず移民政策で民主党との合意ができるのかどうかが最初の焦点となります。」

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選挙以降240万の雇用創出
不法移民の賃金はアメリカ人より70%安い
トランプ政権後不法移民の逮捕は40%余り増加
CBSによる一般教書演説に関する世論調査を良しとする人は75%