トランプ政権、就任後半年間の意外な高評価 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト より引用
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<メディアと国際世論は敵に回したが、それでも再選確率は高まっている>
ドナルド・トランプがホワイトハウスの主になってから半年。混乱と無秩序の大統領候補は混乱と無秩序の大統領になった。
トランプ政権は史上まれに見る苦難のスタートを切ったと、政治評論家は批判する。次から次へと厄介なスキャンダルに見舞われ、政策遂行能力を大きくそがれた。ロシアゲートは連日新たな広がりを見せ、さらに醜悪な様相を強めている。
米政府倫理局の局長は辞任。トランプ絡みの利益相反問題の複雑さを嘆き、現政権下のアメリカの倫理観は「お笑い草」レベルだと語った。
重大な利益相反の問題にはトランプの息子と娘婿も関係している疑いがあり、憲法上の疑念は大統領執務室のすぐそばまで迫っている。品位に欠けるトランプのツイートや公的な場での発言も大統領の権威を傷つけ、オバマケア(医療保険制度改革)の見直しやメキシコ国境の壁の建設、税制改革といった公約の多くは遅々として進まない。
就任後半年の新大統領の支持率としては、選挙なしで副大統領から昇格したジェラルド・フォードと並んで史上最低だと、反トランプ派は指摘する。フォードは当時、ウォーターゲート事件で辞任した前任者のリチャード・ニクソンに恩赦を与え、全米中の怒りを買っていた。
従ってまっとうな政治アナリストなら、トランプ政権のスタートは完全な失敗だったと結論付けるのが当然にみえる。だが、本当にそうだろうか。
私たちはトランプの急激な台頭を何度も目の当たりにしてきた。大統領選中も何度となく当選は絶望的と言われながら、そのたびにトランプは盛り返し、むしろ勢力を伸ばしてきた。
だからトランプ政権初期の成績を公平に分析するためには、1期目の大統領にとって最も重要な2つの指標に基づいて評価すべきだろう。まず、大統領選勝利の決め手となった支持層を満足させているかどうか。そして、4年後に再選される確率が高まっているかどうかだ。
【参考記事】セッションズ司法長官をクビ!にトランプ支持層が激しく動揺する理由
大統領選を今やれば勝つ
憲法上の疑念が渦巻くなかで、トランプ政権が自壊するリスクが高まっているのは事実だ。ロシアゲートをめぐる特別検察官の捜査、大統領職とビジネスとの利益相反、トランプの強烈な自己承認欲求と大統領批判を続けるメディアとの軋轢――火種はいくつもある。
だが2つの指標に照らせば、トランプは大統領として成功している。支持者は喜んでいるし、再選の確率は高まっている。
オバマケアの見直しをはじめ、移民規制でも税制改革でもトランプは後退を余儀なくされているが、一方で着実に実行した公約もある。オバマ前政権と国際主義・グローバリズム的傾向とは明確に決別すると、トランプは主張していた。この公約は間違いなく実現した。
まず、保守派のニール・ゴーサッチの最高裁判事就任だ。この人事は今後少なくとも20~30年間、政治的遺産として残る(最高裁判事の任期は終身)。トランプの保守的・ポピュリスト的思想は、トランプ政権の後も司法の最高レベルで影響を持ち続けることになる。
第2に、バラク・オバマ前大統領の主要な国際主義的政策をあっさり切り捨てた。トランプは大統領就任直後にTPP(環太平洋経済連携協定)から離脱。地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」についても一方的に離脱を表明した。
最後に、カナダからアメリカに原油を運ぶキーストーンXLパイプラインの建設を認可し、大統領選の勝利に大きく貢献したウェストバージニア州の石炭産業復活を目指す大統領令に署名した。トランプ支持者は大喜びだ。現在、共和党支持層の大統領支持率は82%という驚異の高率に達している。
【参考記事】「トランプ大統領が命令すれば、米軍は中国を核攻撃する」米太平洋艦隊司令官
この結果、トランプは、2020年の大統領選で再選されるという最大の目的を達する可能性が高まっている。
最近の世論調査によると、いま大統領選があると仮定し、再びトランプとヒラリー・クリントンが候補者だとすると、43%対40%でトランプが勝つ。トランプの支持率は、昨年の大統領選投票日には37.5%だったが、今は平均して40%前後に達している。特に、大統領選で勝った郡では今も50%を上回る。米大統領選の選挙制度を考えると、この点は大きな強みだ。
要するに、自壊さえしなければ、トランプが2024年まで大統領にとどまる可能性はあると思っておいたほうがいい。
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最近広報部長が替わった。
スカラムッチという人はどんな人か?記事があった。
大統領報道官のことも出ている。
トランプ政権「閣僚・重要ポスト人名録」(16)スカラムッチ、サンダース--足立正彦 | 新潮社フォーサイト より引用
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26.アンソニー・スカラムッチ広報部長(53)
ロシア政府による2016年米国大統領選挙への介入にトランプ陣営が共謀していたのではないか、との「ロシアゲート」疑惑に対するメディアの追及が益々強まる中、ホワイトハウスの広報活動強化の一環として、トランプ大統領が7月21日に「広報部長」に指名した。
広報活動の経験が全くないにもかかわらず広報部長に指名することに対し、ショーン・スパイサー大統領報道官がトランプ大統領に猛烈に抗議したものの受け入れられず、同ポストを即座に辞任。
広報部長起用を積極的に支持したのは、トランプ大統領の長女イヴァンカ・トランプ大統領補佐官と娘婿のジャレッド・クシュナー大統領上級顧問の夫妻である。
とりわけ、自身がロシアゲート疑惑に関与していたとの『CNN』の報道を誤報と認めさせ、CNNの記者3名を辞職に追い込んだことが、トランプ大統領やクシュナー夫妻から高く評価されたと見られている。
対照的に、共和党全国委員会(RNC)委員長時代から、メディア担当のスパイサー氏とともに二人三脚で取り組んできたラインス・プリーバス大統領首席補佐官や、スティーブ・バノン首席ストラテジスト兼大統領上級顧問の2人は、スパイサー氏とともにスカラムッチ氏の広報部長起用に反対していたが、2人の意見もトランプ大統領には受け入れられなかった。
本来はウォール街の投資家である。投資銀行ゴールドマン・サックスに勤務していた経験があり、2005年には投資会社スカイブリッジ・キャピタルを創業した元共同創業者兼取締役。金融関連のテレビ番組にもコメンテーターとして頻繁に出演するなど、メディアでも活発に活動していた。
トランプ大統領とはもともと友人関係にあり、2016年大統領選挙でトランプ氏が勝利した後、政権移行チームの執行委員会の委員に就任。選挙資金の調達などにも手腕を発揮していた。
ちなみに、バラク・オバマ前大統領とはハーバード大学ロースクール時代の同窓生という関係であったため、かつては同前大統領に対して政治資金を提供していた。
ただし、オバマ氏が現職大統領として再選を目指した2012年大統領選挙キャンペーンでは、オバマ氏ではなく、共和党大統領候補であったミット・ロムニー元マサチューセッツ州知事を支持していた。
1964年1月6日生。ニューヨーク州ロングアイランド出身。タフツ大学、ハーバード大学ロースクール卒業。
27.サラ・ハッカビー・サンダース大統領報道官(34)
2017年1月20日のトランプ政権発足時から大統領副報道官を務めていたが、政権発足から半年しか経過していない7月21日、前項(26)で記述した通り、アンソニー・スカラムッチ氏の広報部長就任にショーン・スパイサー大統領報道官が抗議して即刻辞任したため、副報道官から報道官に昇格した。
女性の大統領報道官としては、第1期クリントン政権のディー・ディー・マイヤーズ氏、第2期ジョージ・W.ブッシュ政権のダナ・ペリノ氏に次いで3人目となる。
5月以降、スパイサー大統領報道官に代わってホワイトハウス担当記者に対する定例記者会見に臨む機会が増えていたが、その頃から、スパイサー氏が何らかの理由で辞任した場合の後任として昇格するのではないかとの見方が流れ始めていた。
トランプ政権はメディアに対して対決姿勢を鮮明にしており、メディアと激しく対立している状況下で大統領報道官としていかにトランプ大統領をメディアの批判から守るのか、その手腕が注目される。
父親は、南部アーカンソー州のマイク・ハッカビー元州知事。少女時代から父親の州知事選挙出馬キャンペーンを支援するなど政治に深く関与しており、父親が2008年と2016年の2度の共和党大統領候補指名獲得争いに出馬した際も、選挙キャンペーンを積極的に支援していた。最終的に父親が指名獲得争いから撤退を余儀なくされた後、トランプ陣営にコミュニケーション担当上級顧問として参画していた。
夫のブライアン・サンダース氏は共和党系政治コンサルタントであり、2008年共和党大統領候補指名獲得争いでは、義父であるハッカビー元州知事を支援していた。
3人の子供の母親。アーカンソー州ホープ出身。1982年8月13日生。ワシタ・バプテスト大学卒業。
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さて、クシュナーとともに本来のトランプ大統領の価値観を破壊させそうな人が、トランプ大統領の自慢の娘イヴァンカだが、どうやら押さえ込んでいるようだ。トランプいいぞ!
トランプの長女イバンカはLGBTを裏切った | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト より引用
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今年6月、ドナルド・トランプ米大統領の長女でトランプが最も信頼する大統領補佐官の1人であるイバンカ・トランプ(35)は、LGBT(同性愛者などの性的少数者)を支持するメッセージをツイッターに投稿した。LGBTの権利向上を訴えるプライド月間に寄せたものだ。
3月に実業家からホワイトハウス職員に転身したイバンカは、「私たちの社会や経済に多大な貢献をしてきた」LGBTの友人やアメリカ人同胞を「誇りに思う」とツイッターに書き込んだ。さらに「joyful #Pride 2017」というハッシュタグを付け、プライド月間の6月は「LGBTQ*コミュニティーを祝福し敬う」ための時間だと宣言した。
【参考記事】イバンカのアパレル工場は時給1ドルのブラック企業だった
だが今週の水曜、イバンカはLGBTに対する誇りを自ら傷つけた。心と体の性が一致しないトランスジェンダーの人々の米軍入隊を禁止するとトランプが発表しても、だんまりを決め込んだのだ。
【参考記事】トランプのシリア攻撃は長女イバンカの「泣き落とし」のため?
トランプは一連のツイッターで、「米政府は米軍のいかなる役務でもトランスジェンダーを入隊させない」と表明。米政府が「トランスジェンダーの入隊に伴う莫大な医療費(性転換手術のことなどを言っているとみられる)や混乱の負担を賄えない」ことを理由に挙げた。発表直後、米議会やLGBTの支援者をはじめ、全米から一斉に非難の声があがった。
イバンカに逆風
トランプが禁止を発表して間もなく、イバンカに逆風が吹き始めた。ホワイトハウスの決定に何ら影響を及ぼせないイバンカの無能ぶりを、多くの人が疑問視したのだ。
イバンカはLGBTの権利の擁護者を自任するだけでなく、昨年の米大統領選挙中は男女平等や温暖化対策への取り組みを強く支持し、過激な父トランプの説得役になることを期待されていた。だがいざ政権入りしてみると、温暖化対策の新たな枠組み「パリ協定」からの脱退を止められなかった。女性の権利を擁護し人工妊娠中絶や避妊薬の処方などを行う非営利団体「プランド・ペアレントフッド(家族計画連盟)」への連邦補助金の1年停止案も止められなかった。
*LGBTQ=レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クエスチョニング(性的志向が定まっていない人)
イバンカは、男女同一賃金や働く子育て世代に有利な家族休暇の実現も推進していたが、そうした計画も何一つ実現していない。
イバンカはトランプがトランスジェンダーの米軍入隊禁止を発表して以降、公の場で発言していないが、裏では挫折を味わっているのだろうか。
【参考記事】イバンカのアパレル工場は時給1ドルのブラック企業だった
イバンカは、4月に米CBSの情報番組「ディス・モーニング」に出演し、アメリカ人は「間違っていることを公然と非難しないまま沈黙すべきでない」と言い、父トランプとの関係を次のように語っている。
「自分の声を相手に届けるには、様々な方法がある。抗議したり、毎晩ニュースを見たり、人と話したり、自分と意見が異なるあらゆる問題を批判したりするのも1つの方法だ。時には穏やかに、相手に面と向かって率直に意見を伝えることもできる。父と意見が対立すると、父もそれが分かっていて、私はすべてを正直に打ち明ける。同意できる部分では父にしっかりと寄り添い、政策を支持することで、父の助けとなり良い影響を与えたいと思う。私はいつも相手の話を聞く父の姿勢を尊敬する」
(翻訳:河原里香)
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